くず餅とくず餅

2017-02-10 00:00:00 | あじ
川崎大師の節分会他に行った帰りに名物の一つの『くずもち』を購入。漢字で書くと『久寿餅』と書く。元々は『葛餅』が転じて『久寿餅』になったのだろうと思っていたのだが、何気なく調べてみると、違っていた。この年になって人生の間違いを指摘されたようで悔しいかと思うかと言えば、こういう問題の間違いは数多いので、まったく悔しくない。

ただ、なんとなく複雑なのは、『葛餅』というのは、現在でも存在するれっきとした食品であり、葛粉を湯で解いて何らかの方法で固めるとできあがる。一方、『久寿餅』は小麦粉製なのだが製法は複雑だ。どうも発酵食品なのだ。小麦粉のグルテンを固めたものということ、乳酸菌を用いるそうだ。

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なぜ、紛らわしい名前かというと、これを江戸時代末期(天保)に作ったのが大師河原に住んでいた久兵衛さんという方。納屋に密かに蓄えていた小麦粉が嵐の日に水に濡れてしまう。しかたなく雨と涙で濡れた小麦粉をこねて樽に入れたまますっかりわすれてしまう。翌年になって樽を覗くと底の方に発行したでんぷんを発見。さらに茹でてみたところ餅状の物体が完成。

この久兵衛さんの久という字にめでたい寿を付けたと言われる。

久兵衛というのは食品ではよくでてくる名前で、ミシュランの星を集めるのが趣味の銀座の寿司店(寿司料理というべきか)にあるが、昭和生まれだ。また最近は久兵衛屋という紛らわしい名前のうどん店が増殖中だが、牛丼すき家グループで、できたばかりだ。

話を戻すと、実は葛餅と久寿餅は併存しているのだが、関東地方では、この川崎大師由来の久寿餅が有名で、葛餅はないといっていいようだ。一方で、『わらび餅』という食品について、本来の「わらびの根からとれるでんぷん」というのが、きわめて貴重なもので、『わらび餅』として売られている物は大部分が『葛餅』であるらしい。

ところで、川崎大師の参道というのは、非常にめずらしく、真っすぐではなく、直進して寺院の横を通り抜けた後、横に曲がり、さらに戻ってくるという「U字型」になっていて、大変に財布に負担がかかるのだが、久寿餅専門店がいくつもあるわけだ。行くときに価格調査の上、帰りに購入するのだが、50円高い最高級品を購入したところ、乳酸菌の味がわずかに感じられ、『わらび餅=葛餅』とはまったく異なるものであるということがよくわかった。