あふれだした難民の責任は

2015-05-27 00:00:23 | 市民A
地中海で難民船が沈没するたび多数の犠牲者が発生している。今年はすでに4000人という説もあるが、もともと密航なのだから統計なんかないわけで本当のところは誰も知らない。

これについて大手の海運会社の人がレポートしている。

まず、難民の背景には「アラブの春とその後の混迷」がある。民主化運動の先にあるはずの理想についてバラバラであったがために、宗教間の戦いとか政府対反体制勢力とか、今まで独裁制の元でコントロールされていたものが噴出したし、複雑すぎる関係のため欧米や中露も深入りしないため、延々と出口なき混迷が続いている。

そして泥沼化した祖国を離れるしかなくなった人がたくさんいて、主に二つのルートになる。一つは、シリアやイラク方面。こちらは陸路を経てトルコに向かう。160万人ほど。

もう一つが、北アフリカや地中海沿いのシリアから欧州へ向かうルート。これが難民船である。

そして、そもそもお金を持っていないので、小さな船に溢れんばかりの数の人達が乗りこみ、通りがかる外航船舶に救助を求めるという方法である。そして欧州の安全な港に連れて行ってもらうというのが唯一の安い方法だ。中には、自走できない小舟やゴムボートに乗って、潮任せで漂流し、近くを通る船舶に拾ってもらうことを神に祈るだけの場合もある。インシャラー。

一方、この地域を通る船舶は多いし、漂流民がいれば救助しなければならない。国際法により義務付られているし、船乗りの掟みたいなものだ。

しかし、遭難船の船員の救助というのとは、まったく状況が違うわけだ。数が多い。500人の時もある。子どもや病人も多い。テロリストが混じっているときもあるし、暴れられてもコントロールできない。貨物船の場合、人間を収容する場所も少ない。結局、最寄の国であるイタリアの港に連れて行くことになる。費用はかかるし、本来の貨物の運送のスケジュールはめちゃめちゃになる。誰からも何ともしてもらえない。助けても喜んでもらえない。

結局、問題の押し付け合いとなっていて、言い出した人が責任を取らなければいけないということになりそうで、前に進まない。

日本海でもそういうことが起きるのだろうか。地中海ほど船舶はいないが、中国から米国に向かう大型船は青森と函館の間の津軽海峡を通っているらしい。

陸続きという意味では中国がトルコ的になるのだろう。一方、海路ではとりあえずイカダに乗って漂流し、見つけた船舶は、ピックアップしたのち、近場の青森とか函館に置いていくのだろうか。