学歴不要論とタイガーマザー

2015-05-26 00:00:05 | 市民A
何を今頃、という感が強いが、世界屈指の学歴偏重国家(屈指というより韓国と並ぶ双璧と言った方がいいかも)であるシンガポールが、「学歴」よりも「職業訓練重視策」へ舵を切ったようだ。政策名は「アーン&ラーン」。大学ではなく専門学校卒業生で職業に就いている人に国がお金を出して、高等技術を学ぶためにOJTの場を提供しようということ。

背景としては、高等教育(大学卒)を受けた人の就職先がなく、一方、工場やホテルの従業者が少なくなって、移民が流入したり、経済成長が鈍化している事情がある。

そのために、リー・シェンロン首相は、学歴がないのに成功した人を称えたりしているらしい。

まあ、日本ではずいぶん以前からこんな話はあって、高学歴と高収入は、直結しているというよりも単に確率の問題と思われている。だいたい高収入になる方法がよくわかっていないということもあるだろう。数十年前に学生に人気の企業といったことを考えれば、電気のS社とか航空のJ社とか・・東大出身の企業家が太り過ぎて刑務所でダイエットしたりとか・・

ところが、シンガポールの問題は、「急ブレーキで方向転換」ということ。車の運転で言えば、スピンターンである。そういう社会に徐々に変わっていくなら痛みも小さいのだろうが、年収の3倍も教育費をつぎこんで、こどもを学校に入れた教育ママ(タイガーマザーというらしい)にとっては、目の前が真っ暗になる話だ。

さらに、結局、大卒者とそれ以外の人の較差は残るか、さらに拡大するかだろうから、こんな政策がうまくいくはずはない。大学の定員を減らしたって、韓国や米国の大学に行くのだろうから、もっと混迷するのかもしれない。

一方、日本の状況を考えると、高校の進学率はほぼ100%に近い(97~98%)状況では、人生で本気で勉強するタイミングは、レベルはともかく大学を受けるための準備の1~2年間しかないわけだ。つまり、多くの一流、二流、三流大学が混在する状況は、一流、二流、三流のそれぞれの若者の、人生最初で最後(唯一)の勉強の機会を与えているとも考えられるような気がする。