岡本太郎の生命体

2015-05-24 00:00:29 | 美術館・博物館・工芸品
表参道の岡本太郎記念美術館で開催中の『岡本太郎の生命体』展へ。

都会の中の美術館。ようするに彼の自宅兼アトリエ。没後、残された作品や使われていたアトリエを保存し、小規模の庭園とともにミステリアスなスペースとして市民に公開している。もっとも一般的に岡本太郎の作品は巨大なわけで、小品をこのような形で集めるというのは、いい考え方なのだろう。

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何回か訪れているのだが、こういう場所にあると、文化人仲間が集まってきて、毎晩宴会を続けて体を壊すというのが洋の東西を通じて一般的なような気がするが、そういう欲望はあまりなかったのだろう。普段はとっつきにくいオッサンタイプだったのかもしれないし、突然、「爆発だ!」なんて言われると酔いも醒めてしまうかも。

で、彼の生命体は、もっとも輝いていたのは大阪万博の時だ。万博のメーンシンボルである太陽の塔には、四つの顔があった。顔の部分にある「黄金の顔」。胴体に輝く「太陽の顔」。背中には「黒い太陽の顔」。そして四つ目が胴体内部の下部にあった「地底の顔」。

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この顔には曰くがあり、万博終了後、姿を消し、その後、杳として所在がつかめないわけだ。そんなに小さなものじゃないのにどこに行ったのだろう。持ち主情報はまったくないし、廃棄業者からの公表もないところを見ると、誰かが秘蔵している可能性がある。美術品とは、そういうものだ。

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現在、太陽の塔は耐震補強のため工事中なのだが、2016年に再オープンの際は、「地底の顔」を復元するそうだ。姫路城よりも楽しみにしているのだが、たぶん、1年位は長蛇の列だろう。万博の時と同じだ。

その太陽の塔の内部にいたのが、数多くの岡本式生命体。たぶんモデルは人間とか犬とか身近な生物なのだろうが、その異形の生命は人間の心のミラーなのだろう。朝起きて、鏡を見るとそこにいるのは、心のゆがんだ私の分身、ということだ。

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ところで、岡本太郎氏は、後年、縄文美術を絶賛する。原始の匂いだ。その後の弥生時代人は半島から米作を持ち込んだといわれるのが数年前までの考古学の主流だったのだが、この数年で、まったく異なる学説が主流になっているようだ。つまり、米が渡来したのは、縄文時代であり、弥生時代人とは縄文時代人と同じ民族で、長い年月を経て遺伝的に変化したものというそうだ。ちょっとにわかには信じられない。