広告に関する二つの「展」に見る不吉

2014-02-17 00:00:50 | 美術館・博物館・工芸品
3月2日までアド・ミュージアム東京で開催中の二つの作品展(無料)へ。

一つ目は、第53回消費者のためになった広告コンクール展。もう一つは第56回日本雑誌広告賞入賞作品展。

広告が時代を作るのか、時代が広告を作るのかよくわからないが、芸術としての美術は異なり、広告というのはどうしても時代の大衆意識を反映するものだし、しかし大衆に迎合しすぎると地に堕ちるものだ。

ある意味、狙った結果と違うことになるのは、ある話で、大震災のあとACジャパンが流し続けた「こだまでしょうか」が、国民の連帯感を高めていったことなど、そういう現象だったのだろうと思う。

しかし、・・・


さて、今回の消費者のためになった広告コンクール。新聞部門の一位は味の素の「最初の晩餐(電通)」こどもたちが、色々な料理を最初に食べるシーンである。が、よく見ると背景の色調など、ダークブラウン系。なんとなく「お子様ランチ」の図ではないような気がする。コピーを読むと「世の中の甘さや苦さを、人生で初めて知るのは、食事でした」となっている。

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つまり、人生の後半の人が回想しているわけだ。実際、広告が狙っていたのは、食事の方の味の多様性だったのだろうが、とんでもない方向に行ってしまったわけだ。

雑誌部門の一位は、パナソニックの「30年目のヒア・リング」。これは補聴器の広告。テレビ部門一位は東京ガスの「家族の絆ばあちゃんの料理」。電力会社のIH攻勢へのささやかな抵抗がテーマ。ラジオ部門はパナソニックの「人生案内編」。これだけは、就職で悩む若者がテーマで公務員にならずにミュージシャンを目指す若者がテーマ。WEB部門は三井のリハウス「みんなの声鉛筆」。これは、三世代住宅がテーマ。

この国は、これから老いが始まるというのに、すでに老化の極みじゃないの。


日本雑誌広告賞の方でも、味の素の一菜合菜が受賞。その他はルイ・ヴィトンはじめ高級ブランドや高齢者向け広告群が並ぶ。

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まあ、高齢化はしょうがないとして、作品の中からこれからの方向性を探るとすれば、「日本流」というのが多かったように思う。歌舞伎とか庭園とか和食、古来から伝わる古き良きジャポン。

結構、オリンピックとワールドカップの重なる年はナショナリズムに走るのだよね。

1936年のベルリンオリンピックのように2020年がならないことを祈念しておきたい。