アマテラスの誕生(筑紫申真著)

2014-02-06 00:00:25 | 歴史
umiアマテラスについての論考である。本著では、アマテラスの持つ三つの要素について論じている。『太陽そのもの』『太陽神をまつる女』『天皇家の祖先』に三つの性格は、どのように考えるべきかという点。

本書では、本格的な天皇政権が確立された天武・持統天皇時代にもともとの太陽神だったアマテラスが天皇家の祖先という地位を与えられたという説を明らかにし、それについて、大和朝廷と伊勢との関係が、対立的から融和的に変化したことを主張している。つまり、どちらも太陽神を基本としていたのに大和が伊勢を飲みこむようにして統一国家が完成する過程で、日本書紀にそういうことを書くことにしたのではないかと推定する。

そういう意味で、伊勢国出身の稗田阿礼や猿女君たちが紡いだ古代神話は大和朝廷の権力の前に、伊勢の歴史を「作られた歴史書」の中に密かに埋め込む無念の作業だったという見解もできるわけだ。

実際には、明らかにならない6世紀以前の世界についての推測なので、本書についてのバッシングは強烈な気がするわけだ。

ただ、岡山に仮寓を構えていると、後背地にある中国山地の向こう側にあった出雲の国と大和朝廷の争いの気配もあちこちに感じられるような気がしている。これらの史実もどこかに埋め込まれているのだろうか。