十二の意外な結末(J・アーチャー作)

2013-01-03 00:00:52 | 書評
正月休みに、気軽に一冊ということで手にした一冊だが、あまり気軽には読めない感じであった。まず、表紙カバーのデザインが手が込んでいる。とても文庫本とは思えない。さらに、これは12編の短編集だが、気付かずに読んでいて、最初の「完全殺人」を読んでいて、かなり本格的な構成になっていて、どうみても長編風なのである。

12igai


要するに、愛人宅に行った男が、別の男が帰るところを見てしまい、怒り狂って、愛人の女性を殴ってしまうのだが、それが元で女性が死んでしまう。ニュースでそれを知った真犯人は、自分より先に女性のところへ行った男の方を犯人に仕立て上げようと、色々と努力をして、なんとかその男の方を絞首刑にできそうになる。

つまり東電OL殺人事件そっくりな筋立てで、血液検査やDNAの話まででてくる(アーチャーがこの小説を書いた方が先だが)。東電OL殺人事件の方の真犯人を探し直す前に、警察関係者はこの短編を読んだ方がいいかもしれない。

小説によれば、真犯人は、裁判を傍聴していた人間の中にいるかもしれないわけだ。

そして、まだ本の全体量の10%くらい進んだところで、今後の展開をあれこれ頭の中で描いていると、突然、オチが付いて終わる。そこで、短編だったことに気付くわけだ。

なんとなく、12編のうち、2つくらいオチがわからないままになるのだが、それとは別に作者が日本びいきであることがよくわかる。