ロシア皇帝の密約(J・アーチャー)

2013-01-07 00:00:22 | 書評
russiaジェフリー・アーチャーを続けて読む。「ロシア皇帝の密約」。

ミステリーの仲間なのだろうが、謎の部分はだいたい直ぐに察知できる。アラスカをロシアが米国に売った時の契約書に付属文書があって、購入価格の99倍で100年後にロシアが買い戻すことができる、ということになっている。不動産の売買について「重要事項説明書」があるはずなのが、ある美術品に隠されていて、それをめぐって英国市民が、KGB他のスパイ組織から狙われるという筋立てである。

だから、スパイ小説といった方がいいかもしれない。

前半部が少し長くてごちゃごちゃしているのが面倒くさいが、この手の本はだいたいそうだから、がまんのしどころである。後半はスピーディだが、何度もKGBの襲撃シーンが続いて、少しくどい。

あえていえば、アラスカが米国からソ連に買い戻された実績はないため、KGBの企てが必ず失敗することがわかっているので、読者を不安にする効果は薄い。そして、例のように山のように第三者の死体がゴロゴロと転がり、小型飛行機や乗用車が何台も大破壊されるのだが、後始末についての記述はテキトーだ。


なんとなく、尖閣諸島の所有権についての日清両国間の裏取引文書があって、その文書が隠されている掛け軸があり、戦争終結直前に日本の富豪がスイスの銀行の地下金庫に保管したままになっている・・というような構造にすると別の作品が書けそうである。日本の中でスパイを活躍させようとすると、警察力がイマイチなところも、ストーリーにとっては好都合だろうか。

これ以上続けてアーチャーの作品を読むと、はまりそうなので、ちょっとお休み。