墜ちたカモメ

2012-09-03 00:00:18 | 書評
作曲家ヨハン・セバスチャン・バッハの子孫である作家リチャード・バック氏の操縦する小型機が落下した。送電線に接触したようだ。

「かもめのジョナサン」作者の操縦機が墜落し重傷

(CNN) 米西部ワシントン州のサンファン郡保安官事務所は1日、小説「かもめのジョナサン」などで知られる米作家リチャード・バックさんが操縦する小型飛行機が先月31日午後、同州サンファン島で墜落したと発表した。事故機には他の乗客はいなかった。バックさんは同州シアトルの病院に運ばれ、重傷と診断された。

保安官事務所によると、バックさんの航空機は個人所有の小規模な飛行場への着陸を試みた際、機体下部が送電線に接触するトラブルを起こしていた。墜落が原因で同島の茂みなどで小規模の火災が起きたという。

1970年に出版された「かもめのジョナサン」は飛ぶという行為に夢中となるカモメを描いたもので、実際のカモメの写真も挿入され、ベストセラーとなった。73年には映画化されていた。バックさんの他の作品には「イリュージョン」「翼の贈物」などがある。



確か読んだことがあったと思いだし、探し出す。英語版だった。まったく記憶にないが、読んだ痕跡がある。

seagull


実は、原作の最後に、カモメ(ジョナサン)の最期が書かれていたのではと、まったく勝手な想像をして読んでみた。原作のジョナサンと同じように「最期は森の中に墜ちて行った」と予言されていたのではないかと思ったのだが、まったくはずれ。

本書は、ある意味ジョナサン・リビングストンというカモメの飛行教官が若いカモメに様々な飛び方とその哲学的な意味を語るストーリーなのだが、最後のページでも、

 A seagull is an unlimited idea of freedom.

とか難しいことを言っている。最近ギリシャ哲学を独学していたから気付いたのだが、「idea」というのはギリシャ哲学で登場する「イデア」だろう。また、構文も哲学的で、カモメと、無限なる自由の概念を等価であると言っているわけだ。


おそらく、作家リチャード・バックは、自分とカモメのジョナサンとを、ついに等価な存在と悟ってしまい、滑走路ではなく電線の上に降り立とうと思ったのかもしれない。なにしろ御年76歳である。


今後、彼に不幸があった場合、もう一回読んでみようかと、机の端に横積みにしてみた。