歴史を騒がせた「悪女」たち(山崎洋子著)

2012-03-14 00:00:35 | 書評
akujoいわゆる悪女列伝であるが、よく考えると山崎洋子だって悪女ではないかと思うが、1991年に書かれた本著には、作者自身が「自分も悪女ではないか?」と思ったことがあるような感じは、まったくない。自分のことはすべて棚上げである。

本書に取り上げられた女性は19人。マリー・アントワネット、クリスティン・キーラー、ジャクリーン・オナシス、淀君、ボニー・パーカー、ゼルダ、川島芳子、ジョルジュ・サンド、和泉式部、エカテリーナ二世、楊貴妃、桂昌院、パトリシア・ハースト、ラナ・ターナー、ルクレツィア・ボルジア、イサベル・ペロン、ルー・サロメ、ブリジッド・バルドー、クレオパトラ七世。

悪女といえば、悪い女という意味で、現代的な悪女といえば、結婚詐欺で男を騙して、カネを吸い上げたあげく、レンタカーに練炭を持ちこんだりするイメージになってしまうが、もともと悪というコトバには若干の肯定的な意味が潜んでいて、荒々しさを意味したり、アンチヒーローを意味したりする。

そういう意味で、歴史に名を残した女性たちの人生の格闘を描いた本なのかもしれないが、問題は著者が小説家であることで、史実にあったかどうか不明な話も、作者の意のままの解釈にねじ曲げられて、どんどん悪女に仕立て上げられることになる。供述調書改ざんみたいだ。

たとえば、世界三大美女といわれる、クレオパトラと楊貴妃と小野小町。クレオパトラは毒蛇に胸を咬ませて自殺。楊貴妃は反乱軍に捕まって絞め殺される。小野小町は野垂れ死んだといわれる。なぜ彼女たちはみじめな死に方をしなければならなかったか。それは、彼女たちが悪女だったからだ。というような書き方になってしまう。

そういう意味で読者側に客観的読解力が必要な本なのだが、和泉式部という女性にやや興味を持つことになった。紫式部、清少納言と同時代人でありながら、奥ゆかしいこの二人とは異なり、激しい男性遍歴をダイレクトに日記に表現しているそうである。さらに、この三人に絡むのが藤原道長ということで、彼もまた記録魔だったのであり、もうちょっと調べてみようかと思わなくもない。