ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ(金井美恵子著)

2012-03-13 00:00:04 | 書評
kanaim文学者であり、翻訳家であり、大学教授であり、詰将棋作家の若島正氏が書評誌『潮』の冒頭の書評の中で、金井美恵子氏の『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』を「チェーン・リーディング作家」として紹介しているのは、少し驚きがあった。

まず、その書評誌のTOPに置かれるというのが、意外である。そんなに誰しもが知っている作家ということじゃない。寡作である。仕事嫌いなのかもしれない。そして、ジェームズ・ジョイスを意識したであろうロングセンテンス派である。だいたい1ページで1文である。文章の構造を理解するのが厄介で、ごくごく限られたファンのための作家と言ってもいい。

しかし、困ったもので彼女の作品は高校生だったころから読み始め、すべて読んでいるのだ。初期三部作『愛の生活』『夢の時間』『兎』。実際、その20代初期に発表された作品群と現代の作品を比べて、進歩があるのか、あるいはないのかということさえ、結論は出せない。

初期の村上春樹がそうだったように、いくつかの小説は、つながっているのだが、全部読む必要もない。若島氏は、谷崎潤一郎との共通性を上げているが、個人的には谷崎の小説は1冊も読んでいない。川端の小説はオールクリアしているのに谷垣や志賀直哉は読んだことがない。

次は谷崎文学にでも手を染めようかと思っている。