幻の「月光仮面 第一話」元日に放送だが・・

2010-12-27 00:00:40 | 市民A
以前、何回かここに書いたように「月光仮面」のリマスター版が、ケーブルテレビの「ファミリー劇場」という放送局で配信中である。

そこで、問題になっているのが、月光仮面の第一話である。



もっとも重要と思われる第一話のマスターテープが欠落しているわけだ。さらに、そのビデオ版もない。いかなるコピーも発見されていないし、シナリオもない。さらに、昭和33年(1958年)から53年近くが過ぎ去り、出演者の記憶にも、その時の筋書きは残っていないということだそうだ。

ただし、第二話では、すでに主要人物である赤星博士は「どくろ仮面一味」に誘拐されていて、一方、月光仮面は既に第一話の劇中に登場していたらしいものの、警察からは、まだどちらの味方なのかも判定されていないという状況だったことが窺われる。また、後に祝探偵=月光仮面らしいという展開になっていくのだが、祝探偵はインドに別件捜査にいくことになっている(が、行っていないはずだ)。

それと、個人的には、この最高視聴率が67%で、放送中は町から子供がいなくなったと言われる国民的ドラマに対して、一つの大きな疑問を持っているのだが、最後に書くことにする。


そして、ファミリー劇場側は、「失われた第一話」を求めて、大捜査を開始したわけだ。

まず、制作会社の宣弘社。当時の社長は代替わりし、現在の社長(息子)の記憶によれば、第一話のフィルムが存在しないことは、親から言い伝えられていた、という。

そして、当時の社員の記憶を辿っていくと、実は重大な事実を隠していた人物が現れる。T氏である。かなりの高齢と見受けられるが、彼は別の会社から宣弘社に移ってきて、しばらく撮影の仕事をしているうちに、会社が番組制作をやめることになる。



その際、過去の制作作品のフィルムが散逸しないように整理をしているうちに、この第一話のフィルムがかなり傷んでいて、別のフィルムに貼りついてしまい、当時の技術では再現不可能と判断される。そして、Tさんは、そのフィルムを破棄してしまった、ということである。「私が破棄しました」との証言である。ここで、捜索の目的が変わることになる。

オリジナルフィルムが存在しないことになり、次に向ったのがTBS。前身のKRテレビの時に、月光仮面が放送される。新聞のテレビ欄によれば、昭和33年2月24日午後6時から30分間の放送である。フィルムのコピーやビデオがあればということ。

(ここでも一つの謎がある。第二話以降、一回の放送時間は5分以上10分以内。30分番組だったのはなぜか。)

ともかくTBS本社での資料調査では、データベースには月光仮面関連はないとのこと。

そして、最後の希望として捜査隊が向かったのがTBS緑山スタジオ。ここに、未整理の雑多なフィルムが保管されているという。



しかし、幸運か不運かわからないが、こちらの担当の方は、つい最近、未整理フィルムの整理を行ったばかりということだった。新しく発見したのは、「ザ・ガードマン」「兼高かおるの世界紀行」「エイトマン」などだそうだ。そして残念ながら、「月光仮面」は見当たらなかった、ということだ。こうして、とりあえずの捜査は終わるしかなくなる。



が、この調査の中で、1967年に「調査情報」という業界紙の中に、月光仮面のストーリーについての記載があることが発見されていた。

さらに、原作者の川内康範氏が書いた小説が残っていた。

この二つのネタを基に、「ファミリー劇場」は、第一話の推定版を再現することになる。素材は、第二話以降の画像である。ストーリーに合ったシーンを切り取り、それにアフレコを付けることになる。

そして、ただ一人、この企画に参加した、当時の出演者がいた。アフレコにも自分の役で登場する。



大瀬康一。またの名を祝探偵。あるいは、別の名は月光仮面である。53年経った現在でも全く元気である。やはり月光仮面は不死身だったのだろうか。

そして、私が元旦の特別番組に期待するのは、実はかなりシリアスなことである。

なぜ、科学者が襲われたのかと言うと、原爆をしのぐ超強力な爆弾であるジョー発爆弾の開発者だった。当時の世界は、超大国が原爆を独占していた。日本が原爆を超える強烈な爆弾を入手した時には、それで世界平和が実現する、というものでもないだろう。そこのあたりの国民的幻想について、少し知りたい。