おいしいウナギを食べ続けるためには、

2008-09-26 00:00:48 | あじ
9月23日のYahoo!ポータルに、麻生総裁誕生と堂々と並んで、ある食用動物の記事が登場した。



「親ウナギを海洋で世界初捕獲」

実は、前にウナギのことを調べたことがあって、この記事が間違っていることはすぐわかった。そのうちすぐに、麻生の文字もウナギの文字もポータルから消えてしまったので、掘り返してみる。

そうすると、毎日新聞による見出しは、正しい表現である。あくまでも日本のウナギの話であって、欧州のウナギについては産卵場所が数年前に特定されている。


ニホンウナギ 世界初の親魚捕獲 マリアナ諸島西方で
9月22日21時20分配信 毎日新聞

生態に謎の多いニホンウナギの親魚が、マリアナ諸島西方の太平洋で、世界で初めて捕獲された。水産庁と水産総合研究センターが22日、発表した。現場の水温や塩分濃度も分かり、養殖技術の向上にもつながるという。

ニホンウナギの産卵については、東京大のチームが05年、同じ海域で大量の赤ちゃんウナギ(仔魚=しぎょ)を捕獲。産卵場所はほぼ特定されたが、親ウナギや卵は見つかっていなかった。

同センターは、漁業調査船「開洋丸」(2630トン)で、今年6月と8月、大型の網を使って調査した。この結果、約150キロ離れた2地点から、ニホンウナギの雄2匹と雌1匹、性別不明な1匹の計4匹、オオウナギの雄1匹を捕獲した。この雌を調べたところ、卵巣が収縮し、残った卵もあったため、産卵後の雌と考えられた。また、9月には近くでふ化後2、3日程度の仔魚(約5ミリ)も26匹見つかった。

親ウナギが捕獲されたのは水深200~350メートル付近(水温13~25度)、仔魚は同100~150メートル(同26.5~28度)と推定している。

現在の人工ふ化技術では、卵から仔魚に育つ数が少なく、安定供給にはほど遠い。養殖は天然のシラスウナギに頼っているが、シラスウナギは減少している。同センターの張成年・浅海生態系研究室長は「親の生理状態や生育環境を調べることで、人工ふ化技術の向上につながるかもしれない」と話す。

調査の詳細は、10月に横浜市で開かれる世界水産学会で発表される。


簡単に輪廻転生の構図を言うと、日本の河川とマリアナ諸島の間を、オスもメスも往復しているわけだ。そして、運悪く、成体になってから人間に捕まると、「高級天然ウナギ」として蒲焼になり、シラスのまま捕まると、そのまま養殖場に連れて行かれてから蒲焼になる。また各段階で主に中国など外国からの輸入が加えられる。

その間、資源保護という概念が欠如しているため、昨今はウナギの入手からして困難になってきている。

このため、「天然ウナギ捕獲禁止」が必要ではないか、と言われ始めている。

実際、産卵場所がわかったからといっても、その先が問題で、「なぜ、シラスは日本の川に戻ることができるのか」というメカニズムがわかっていないので、単にウナギの成体を生きたままマリアナ諸島に放流しても、果たして日本に帰ってくるかどうかもわからない。いずれにしても現在のウナギの繁殖システムというのは、単に網から逃れた個体が細々と子孫をつないでいるに過ぎないのだから、もっときちんとやるべきだろう。

が、実際に漁業従事者というのは、頭ではわかっていても、どうしても「根こそぎ」と思うのが習性なのかもしれない。学者先生方の意見に聞く耳を持つのだろうか。