奨励会、女流育成会が終わったが、

2008-09-13 00:00:06 | しょうぎ
先週、9月7日の奨励会、女流育成会の前期最終日のことに予測的に触れたが、おおよそ波乱なくおわる。

奨励会では、13勝3敗で最終日を迎えた佐藤慎一三段と西川和宏三段のうち、佐藤三段が2勝0敗、西川三段が1勝1敗となり、二人ともプロ四段に昇段。11勝5敗だった吉田正和三段は2勝0敗で13勝5敗となり、前期に続いての次点となる。次点を2回取ると、順位戦に出場権のない(そして、月給のない)フリークラス棋士としての四段になる権利が得られるのだが、この権利を行使するかどうか、すぐには意思を明示しなかった。意思表明までの猶予は1週間だったらしいが、4日後にフリークラス編入の意思表示を行なった。

そして、女流育成会の方は、11勝2敗だった香川愛生さんが2勝1敗で13勝3敗。追っていた渡辺弥生さんが3連勝で13勝3敗で並んだが順位上位の香川さんが15歳の女流プロ2級となった。女流は2団体に分かれているが新団体の方ではなく旧団体の方に所属するようだ。おそらく、最初に新団体に所属すると、後で旧団体に鞍替えできそうもないが、旧団体に所属すれば、いつでも新団体に転籍できそうだからだろうか。

さて、まず奨励会の方だが、一つの話題が、西川新四段のこと。親も現役の七段である。と報道はそこまでなのだが、勝負の世界で親子が活躍する例は多い。政治家ほどではないが、五輪でも二世選手は結構いた。ハンマー投げとかレスリングとか(モントリオール五輪のクレー射撃選手は、大久保利通の5世らしいが)。また、話題の大相撲の世界にも二世は多い。

しかし、政治にしてもスポーツにしても親子というのは親が引退したころに子供が登場するというのが通常である。同じ選挙区で親子が1議席を争ったり、亀田親子がリング上で殴りあったりはしない。ゴルフなどでは例があるかもしれないが、直接対決ではない。そういう例があるのかどうか、よく考えてみても思いつかない。西川対決というのは、新しいタイプの構造なのかもしれない。

映画「とらばいゆ」は、女流棋界を映画化したもので、姉妹対決でB級リーグ戦陥落の一局を描いたのだが、西川親子の対戦は、今後、どういうところで実現するのだろうか。世の常として、いずれ親が弱くなり、子供に追い抜かれる日が来るのだろうが、「こどもに負けたことが、引退を決意した理由です」とか、ありそうな、なさそうな。アマチュアの世界では、こどもを将棋教室に入れたりすると、あっと言う間に父親はこどもに勝てなくなり、「最近、相手がいなくなったんだよー」と、こどもが教室でボヤいたりするわけだ。


ところで、態度不鮮明だった吉田正和三段(22)だが、次点2回の権利でとりあえずフリークラス棋士になり、「10年のうちに成績を上げて、順位戦参加資格を取る」という裏口コースか、「権利を放棄し」、あくまでも裏口ではなく玄関から入ることを狙うのか二者択一ではないか、と思われていたが、本当は三者択一だったようだ。三択目は「退会」。というか、二択目はなかったようだ。

思えば、彼はいきなり特例で奨励会初段から参加。アマチュアとしても異例のコースで、人口の少ない北陸の県に移住し、ほとんどネット将棋で将棋の腕を強化し、県代表からアマトップクラスに上っている。奨励会に入るということは、年齢的にも速攻でトッププロを目指しているはずだ。将棋のメジャータイトルは7つあって、順位戦はそのうち一つの名人位への挑戦の道であるだけだ。もう一度三段リーグでがんばる意味など、ほとんど考えられなかったわけだ。

しかも、半年前のリーグでは、リーグ終盤に3連敗して圧倒的なリードをフイにして次点に泣くとか、三段リーグが向いてないのではないかとは本人も感じていたはず。

では、第三の道である「退会」を考える背景があったかと言えば、それは自分の能力への不安ということなのではなかっただろうか(まさか、師匠の神吉六段とフリークラス対決するのが嫌ということではないだろう)。フリークラスのまま、勝てないのではないだろうかとか・・

まあ、色々考えた末、フリークラス四段で妥協すると思うのは、「なってから辞めるのは簡単なこと」だからだ。一回プロになればやめても「元棋士」であるが、棋士にならずに退会すれば、漂泊の真剣士、小池重明スタイルになるからだ。


そして、女流育成会。同点で順位の差で届かなかった渡辺さんだが、この順位の差は、前期のリーグで1勝の差があったことによる。それまでは香川さんより上位だったのに、この1勝差で順位が抜かれた。まあ、制度が続く限り、そのうち上がれそうである。

が、実は、この対局の行われた9月7日、彼女のよく知るアマチュア強豪が、地方都市で凶悪事件に関係したようだ。将棋一筋のアマ強豪、奨励会員、若手プロといったメンバーで「研究会」という集まりを持つ例が多いのだが、そういうメンバーの一人のようだ。もちろん大麻みたいなセコいレベルではない事件なので、知人、交友関係者が関連を疑われたりするわけじゃないので、単なる迷惑以上の何物でもないだろう。

相撲ではないが、将棋だって、強ければいいということじゃないと思う。

よろしくない話を重ねると、故真部九段の元妻の草柳文恵さんが佃島の高層マンションからハンギングダイブをしてしまった。「世界自殺防止デー」の前日、9月9日のこと。女性特有の病気で悩んでいたと言われるが、その元々の原因が、元亭の一日200本になることがあったタバコの「受動的被害」ではないことを祈りたい。

111c02b0.jpgさて、8月30日出題の詰将棋の解答。

▲4九飛 △3八玉 ▲3九香 △2九玉 ▲1八銀 △1九玉 ▲3八香 △2八玉 ▲1七銀打 △3八玉 ▲2七角 △3七玉 ▲3九飛 △4八玉 ▲4九飛 △3七玉 ▲4七飛まで17手詰。

3手目の▲3九香と7手目の▲3八香と一つ上がる手のセットと、後半の駒の組み換えがテーマだが、あまり好かれそうな問題ではないみたいだ。全体に地味だったか。

動く将棋盤は、こちら






111c02b0.jpg今週の詰将棋は、見る人が見れば、「どこかでみた名作の盗作ではないか?」と感じるかもしれないような図式。

正確に言えば、ある名作を見て、思いついて組み立てたので、盗作ではないが類似性は感じる、ということだろうか。結構、微調整を続けている図で、最終完成まではもう少しかかるかもしれない。

さっき、似たようなことを書いたが、詰将棋だって、難しければいい、というものでもないだろうと思っているので。

わかった!と思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。