6台だけで走ったF1アメリカGPの事情

2005-06-22 21:48:08 | スポーツ
今年のF1は、ローコスト化の一環として、「レース中のタイヤ交換禁止」を決めていた。そして全19戦中第8戦まではなんとか進んできた。ただし、結果はルノーが5勝、マクラーレン(BMW)が3勝と、去年の王者シューマッハ(フェラーリ)もホンダ・トヨタの日本勢も振るわず、このまま1年が終わりそうな感じなので、もうアメリカGPには注意を払っていなかった。それに開催場所は、あのインディアナポリスである。3週間前にここで開かれたインディ500では女性ドライバーのデニカ・パトリックが4位に入賞し、テレビの視聴率は異常上昇したらしい。

どうしてもインディ=米国、F1=欧州という感じがしてしまうが、実際にはF1は、19戦中10戦が欧州内開催で、9戦がそれ以外だ(トルコが欧州だと言い張ると、欧州は11になる)。だからF1=世界ということなのだろう。そして、細かなカーブワーク、ブレーキワークなどテクニックが必要なF1サーキットに比べ、アメリカのレースは基本的にオーバル(楕円)コースで、高速で走りつづけるといった豪快さがある。インディで行われるF1はオーバルコースに一部の変更を加え、両者中間型のコースを使っている。それにアメリカにも変わり者はいて、インディコースでのF1を見るために、6月19日には25万人収容可能なサーキットに12万人が詰めかけていたのだ。

ここで、F1の参加チームを思い出すと、10チーム各2台が出走する。有名チームはルノー、フェラーリ、マクラーレン、トヨタ、ホンダなどだが、スモールネームのチームもある。ともあれ、各チームがボディとエンジンとタイヤとドライバーを組合わせて、コースに20台を並べるはずだった。

しかし、コース上であやしい動きをする車が右往左往した結果、コース上に並んだのは、たった6台だけ。14台は最初から棄権してしまったのだ。例えば、ローリング・ストーンズのツアーライブに行ったら、「ミック・ジャガーは用意した靴のサイズが合わないので、きょうは出演しません」と言われるようなものだ。

そして、なぜ、こういう異常事態になったかというと、冒頭のタイヤ問題なのだ。実は、今年のF1のタイヤは僅か2社しか供給していないのだ。ミシュランが7チーム14台。ブリジストンが3チーム6台。そして、決勝直前の練習走行中にミシュランタイヤ1台が走行中に原因不明でパンクする事態が発生。高速でタイヤ負荷の高いレースでは耐久性能に問題があるとして、別のタイヤの使用を打診したところF1本部が拒否。さらにレース直前のチーム会議で、コースの改修(低速化)が検討されたのだが、10チーム中、9チームが同意したのにフェラーリだけが反対。結果として、ミシュラン勢が全車棄権。結果として3チーム6台だけのレースとなった。

その結果、フェラーリ勢が1位と2位に入り3位にはジョーダン・トヨタのポルトガル人T・モンテイロがポルトガル人最高の3位入賞。すべての関係者の中でモンテイロだけが喜んだわけだ。

では、本家インディでのタイヤはと言えば、実は1社だけが作っているのだ。ファイアストーン。別の名をブリジストンという。オーバルコース用の特殊タイヤで、外側(右)のタイヤの方が内側(左)より大きく、左へ回りやすいようになっている。そして、コーナーカーブが角度9度のバンクになっていて磨耗が激しいこととか・・つまり、ブリジストンはインディのことはよく知っているのだ。

そして、予定では、このまま次のレースはフランスで行われ、アメリカに来るのは1年後ということになる。何らかの動きはまたあるのだろう。お騒がせな話だ。

そして、考えれば考えるだけ、F1の運命が不透明になってしまう。現在の1チームの費用は貧乏チームで年間30億円から、贅沢チームで100億円くらいだろう。そして30億円では上位に入らないだろうから広告効果はナッシングだろうし、100億円のチームもまたその大部分は回収困難だろう。さらに開催地も赤字、ヘルメットに1センチ500万円の広告を出す企業も赤字だろうし、かき集めたスポンサーも赤字。タイヤメーカーだって今回のように失敗すれば逆効果。

どうも今年のF1は、課題が片付かないうちに次々と問題が発生してしまう。シーズンの興味が競技そのものでなくなったのは、某国の某球技と同じなのであろうか。案外、来年はいつも6台で走らなければならなくなるのだろうか?残存チームの負担額はさらに増加してしまうのだろうか???