新聞の行方あれこれ

2005-05-17 10:03:52 | 市民A
きょうは新聞についてなのだが、話の都合上、別のドロドロした件の粗筋から始める。その件は徐々に煮詰まってきているのだが、コメントすべき段階になっていないので詳細は後日、五月の終わり頃となる。しかし、その頃は日本海海戦100周年記念(5月27日)のことを書きまくっているかもしれないが、気分次第の風任せブログだから正確な予想はできない。いや、基本ルートに戻ろう。

日本将棋連盟という社団法人がある。将棋の棋士が所属している組織だ。現役棋士は150人くらいと思うが、主に名人戦とか竜王戦といったタイトル戦のスポンサーを新聞社に頼み、事業運営している。社団法人というのがミソで、営利事業をしない個人(社員)の集合体という理由で、文部科学省の管轄である。そして、その社員(棋士)は、選挙により8人の理事を選び、理事の互選で会長、専務、常務を選ぶ。

普通の株式会社では役員を選ぶのは、株主ということになっているが、実態がほど遠いのはご存知のとおり。それからすれば、まことに民主的のように見えるのだが、人数が少なく、閉鎖的社会であることから、2年に一度の理事選挙は荒れやすい。そして5月26日の選挙に向け、定員8名に対し14名が立候補し、密談や電話などで多数派工作が進められているはずだ。さらに、ある棋士は、ある立候補者をソフト盗作で訴えたり、混乱が深まっている。

なぜ、混乱しているかという話は長くなるので、次回へ回すとして、要するに中原誠会長を中心とする人たちと米長邦雄専務を中心にする人たちの意見が対立しているからで、両者が複数の候補者を擁立して争っている。もちろん少数派は風見鶏を決めているのも政治の世界と同じだが、その混乱の中で、40才前後の二人の立候補者が、主に若手棋士を集めて「将来を考える会」を開いたのである。そして、実際のタイトルホルダーは若手ばかりなので、その会合には若手実力者を中心とし、数十人が集まると同時に数人の新聞記者が出席したそうだ(やっと新聞記者にたどり着いた)。

また聞きの話なので、ニュアンスまでは伝えられないのだが、新聞社が囲碁・将棋のスポンサーから降りようとしているとの噂がある。実際、タイトル戦はインターネットで中継され、新聞の解説は結果を知ってから、ぼちぼちと10日間位に分けて連載されるわけだから、価値は低い。囲碁・将棋欄は新聞紙面の下のほうに載っているが、そこを広告用のスペースにすれば、経営的には、マイナス(棋戦スポンサーというコスト)からプラス(広告収入)になるのだから部分的には、うまい話だ。

そして、そのおそろしい質問を記者に対して行ったのは、さすがにリーダーである羽生善治氏なのだが、羽生氏は「再販制度が崩れた場合、どうなるのか」という本質的な質問をしたそうだ。まあ、新聞社側から、再販とか価格カルテルとかの話が出るわけはないのだが、実際には、カルテルを突破したのは夕刊を廃止した産経くらいだ(産経販売店は折込広告が激減して、不平たらたららしいが)。そして、記者からは、「価格下落により、採算が悪化した場合は、将棋欄はなくなる」という結論とのことだ。そうなると将棋界は大混乱となるのだろうが、それも次回ということにする。

問題は、新聞社側の話として、「価格維持できない」→「収益悪化」→「コストダウン」というような原始的サイクルで、低位均衡点が見つかるかどうかだが、均衡しないだろう。結局、全新聞が値下がりを始めれば、新聞界に入る収入の額が減り、部数が減れば広告収入も下がり、例えば、紙面を減らせば読者は去り、さらに値下げ競争に陥ると考えられる。そして問題は、二大新聞はコストの中の固定費部分が多いと思われる(決算不明なので単なる想像だが、ダウンストリームにかなり投資しているはずだ)ので、安値競争は苦手なはずなのだ。

とすれば、M新聞あたりは逆に、「フリーペーパー」というような戦略に向っていく可能性があると思える。韓国ではスポーツ新聞のほとんどがフリーペーパーになったのだが、日本の新聞の場合、一見「新聞は生鮮食品」と言っても、半分くらいは、きょう読んでも明日読んでも、1ヵ月後に読んでもかまわない記事も含まれている。逆に、必要回転数の違う記事が同一紙面に載ることから、ゆっくり読むべき記事も、読まれずに廃品回収行きになっていることも多いだろう。

そうなると、ニュース性という分野は、ネット+フリーペーパーのように展開するのではないだろうか(宅配の場合は有料だろうが、利用者がいるかどうか不明だ。コンビニでもらってくるというようなことになるのではないだろうか)ニュースそのものはネットで速攻し、それの解釈とか意味付けという部分が紙面ということになるのだろうか。

そして、毎週まとめて読むような記事は、クロネコさんに有料で届けてもらえばいいのだろう。読まれるか読まれないかわからない記事を書く記者にとっては、有料で記事を買ってくれる読者は、逆に、大きな励みになるはずだ。もちろん、いい加減な不勉強記者が追い出されるメリットもある。

ところが、歴史が示すように、道は曲がり易いものなのである。それは、二大新聞は過去の寡占メリットをたっぷり余剰金として社内に蓄積しているからなのだ。新聞社の自己資本比率はよくわからないのだが、出資しているテレビ会社はどこもキャッシュリッチになっている。親会社が経営危機になれば、直ぐに子会社から献血(吸血)可能になっているわけだ。そういうことで、採算度外で安値販売に乗り出して、M新聞やS新聞を排除しようという作戦をとって、成功する可能性もあるわけだ(潜水競争)。そうすれば、またいずれ、競争状態を緩和させ、完全寡占状態を作ることができるのだろう。何しろ、ほとんどNHK的押し売りというのが、新聞販売の現実だからなのである。そして、正しい販売部数を明らかにすると折込広告収入が減るために、わざわざ足し算が不得意になる販売店側の事情も大きいし、その販売店に融資したり、社有の建物を貸したりしている新聞社の方は、引き算が苦手なのである。