おとといの原稿ではセレクトしなかったものをここでご紹介しよう。しつこいと言うなかれ。単に暑くて外出することがなかったのでネタがないというだけの話。
ミーリ・バラキレフ(1837-1910)といえば、言うまでもなくロシア五人組のなかで中心的な役割を果たした人物として知られている。とはいえ、このオッチャン、まともな音楽教育を受けたわけではない。まさにもって生まれた才能だけを頼りに作曲を行なったといっても過言ではないのだ。そう、言うなれば「感覚だけの人」である。
この人にとって作曲理論なんて「屁」みたいなものと思っていたから、後年同じ五人組の仲間であるリムスキー=コルサコフ(1844-1908)が懸命に作曲理論を学び、リムスキーから「これこれこういう作曲法があり、それに照らし合わせると…」と教えられても、「ほー、だから何だよ」みたいな態度を取って両者の関係が険悪になったのは有名な話だ。
傲慢といえば聞こえは良くないが、バラキレフにはそれほどまでに自分の才能に絶対的な自信があったということなのだろう。それは武満徹(1930-96)が終生「自分はアカデミックな勉強をして来なかった」というコンプレックスに苛まれ続けたのとはまさに対照的である。もっとも、バラキレフの時代のロシアでは現代のように作曲法の書物がほとんど普及していなかったという事情もあるのだが(なかったわけではない!)。
それはさておき、バラキレフのピアノ作品で思いつくのはまず《イスラメイ》(1869初版/1902改訂)であろう。というより、ほとんどの人は《イスラメイ》以外の作品は知らないのではないか。音大の学生でも試験で《イスラメイ》を弾いたことはあっても、「じゃあ、バラキレフの他の作品を弾いてみて」と言われたら、たぶん99パーセントの学生はピアノの前でフリーズすること間違いなし! 100パーセントにしなかったのは、なかにはバラキレフ・マニアもいるかもしれない、いや、いて欲しいという希望的観測からである(笑)
エラソーなことをほざいてはいるが、ワシとて他には変ロ短調の《ピアノ・ソナタ》ぐらいしか思いつかなかったのだからドングリの背比べである。お恥ずかしい。
ともかく、このアルバムはバラキレフの作ったピアノ作品が6枚のCDにすべて収められた貴重なものである。しかも値段がまたリーズナブルなのだ。税抜きで2,800円ぐらいだし。ただ、発売元は「ブリリアント・クラシックス.com」という微妙にアヤシイ外国の会社。アヤシイといってもイカサマをしているのではない。簡単にいえば版権の切れた録音テープを元の会社から許可を得て自分のレーベルとして再発売しているということ。
でもなあ、「www.brilliantclassics.com」というURLが商品に書いてあるのに実際にアクセスしてみるとそこから「Joan Records」というオランダの会社に飛ぶのもアヤシイ要素のひとつではある。ちなみに、今回ご紹介した録音のオリジナルの版権は「ESS.a.y.Records, USA」という会社が持っているようだ。あれっ、でもそのサイトでも自社レーベル商品として販売してるじゃないか! しかも50ドルで…。もっとも、こちらが正規の値段だとは思うが。うーむ、やっぱり「ブリリアント・クラシックス.com」はクサい。海賊盤のレーベルかもしれん。ま、そんな情報はどうでもいいか。
演奏しているのはアレクサンダー・パレー(b.1956)というモルダヴィア(現モルドバ共和国)生まれのピアニスト。そのプレイはムチャクチャすごいというわけではないが、むしろひと通り聴いて思うのは、バラキレフという作曲家はかなりピアノが達者だったんだなと気づいたこと。まあ《イスラメイ》みたいな曲を書くぐらいだから当然といえば当然なのだが。
グダグダと書いてきたが、これはバラキレフ・フリークにはオススメのボックス・セットである。
ミーリ・バラキレフ(1837-1910)といえば、言うまでもなくロシア五人組のなかで中心的な役割を果たした人物として知られている。とはいえ、このオッチャン、まともな音楽教育を受けたわけではない。まさにもって生まれた才能だけを頼りに作曲を行なったといっても過言ではないのだ。そう、言うなれば「感覚だけの人」である。
この人にとって作曲理論なんて「屁」みたいなものと思っていたから、後年同じ五人組の仲間であるリムスキー=コルサコフ(1844-1908)が懸命に作曲理論を学び、リムスキーから「これこれこういう作曲法があり、それに照らし合わせると…」と教えられても、「ほー、だから何だよ」みたいな態度を取って両者の関係が険悪になったのは有名な話だ。
傲慢といえば聞こえは良くないが、バラキレフにはそれほどまでに自分の才能に絶対的な自信があったということなのだろう。それは武満徹(1930-96)が終生「自分はアカデミックな勉強をして来なかった」というコンプレックスに苛まれ続けたのとはまさに対照的である。もっとも、バラキレフの時代のロシアでは現代のように作曲法の書物がほとんど普及していなかったという事情もあるのだが(なかったわけではない!)。
それはさておき、バラキレフのピアノ作品で思いつくのはまず《イスラメイ》(1869初版/1902改訂)であろう。というより、ほとんどの人は《イスラメイ》以外の作品は知らないのではないか。音大の学生でも試験で《イスラメイ》を弾いたことはあっても、「じゃあ、バラキレフの他の作品を弾いてみて」と言われたら、たぶん99パーセントの学生はピアノの前でフリーズすること間違いなし! 100パーセントにしなかったのは、なかにはバラキレフ・マニアもいるかもしれない、いや、いて欲しいという希望的観測からである(笑)
エラソーなことをほざいてはいるが、ワシとて他には変ロ短調の《ピアノ・ソナタ》ぐらいしか思いつかなかったのだからドングリの背比べである。お恥ずかしい。
ともかく、このアルバムはバラキレフの作ったピアノ作品が6枚のCDにすべて収められた貴重なものである。しかも値段がまたリーズナブルなのだ。税抜きで2,800円ぐらいだし。ただ、発売元は「ブリリアント・クラシックス.com」という微妙にアヤシイ外国の会社。アヤシイといってもイカサマをしているのではない。簡単にいえば版権の切れた録音テープを元の会社から許可を得て自分のレーベルとして再発売しているということ。
でもなあ、「www.brilliantclassics.com」というURLが商品に書いてあるのに実際にアクセスしてみるとそこから「Joan Records」というオランダの会社に飛ぶのもアヤシイ要素のひとつではある。ちなみに、今回ご紹介した録音のオリジナルの版権は「ESS.a.y.Records, USA」という会社が持っているようだ。あれっ、でもそのサイトでも自社レーベル商品として販売してるじゃないか! しかも50ドルで…。もっとも、こちらが正規の値段だとは思うが。うーむ、やっぱり「ブリリアント・クラシックス.com」はクサい。海賊盤のレーベルかもしれん。ま、そんな情報はどうでもいいか。
演奏しているのはアレクサンダー・パレー(b.1956)というモルダヴィア(現モルドバ共和国)生まれのピアニスト。そのプレイはムチャクチャすごいというわけではないが、むしろひと通り聴いて思うのは、バラキレフという作曲家はかなりピアノが達者だったんだなと気づいたこと。まあ《イスラメイ》みたいな曲を書くぐらいだから当然といえば当然なのだが。
グダグダと書いてきたが、これはバラキレフ・フリークにはオススメのボックス・セットである。