珠洲製塩、揚げ浜式

2020-04-05 00:00:52 | たび
今まで、瀬戸内海の製塩会社には何回か見学に行ったが、能登半島で製塩が行われていたことは知らなかった。もっとも塩は人間にとって必須の食物で、先日読んだ大岡昇平の『野火』という戦争サバイバル小説の中でもレイテ島の山奥に逃げ込んだ日本兵が塩のために現地人を銃殺したり、夜間に海岸に下りてきて海の水を飲んで、また山中に戻るといった場面があった。日本各地で製塩業はあったはずだ。確か、江戸の塩は高級で、全国各地の塩(未完成品)を浦安の海岸で精製し直して食用にしていた。

能登半島は対馬海流とリマン海流が交錯する場所でさまざまな海藻類がミネラルやにがりの味を豊富にしているそうだ。

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実際、揚げ浜式というのは塩水を何回も海岸の砂の上にまき散らし、濃度を上げていく方法で、最後は煮詰めていくということらしい。煮詰める釜は、どうみても昔ながらの五右エ門風呂と同じだ。みかけはフロに入浴剤を加えたような色である。

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塩水の砂浜へのまき散らしの実演もやってくれる。(Agehama-style Salt Farm)



口のうまい珠洲製塩(すずせいえん)の工場長の話を聞いた後、塩のお土産を買う(買わされる)ことになる。実際、海塩の中では相当旨いと思う。帰宅後、色々な料理に塩をかけて食べている。

2015年のNHKの連続テレビ小説「まれ」(ヒロイン:土屋太鳳、役:津村希)は、この工場で働くシーンを撮影したそうだ。高校在学中に塩田の手伝いをして、地元(輪島)の市役所に勤めることになったが、能登を捨て横浜元町のケーキ店に修業に行く。塩味のケーキを創作して、怒られる。