関ヶ原(2017年 映画)

2019-11-07 00:00:03 | 映画・演劇・Video
司馬遼太郎の原作を元にした映画である。

そもそもこの映画を観る人は「関ヶ原」というのが、1600年に起きた徳川家康を中心とした東軍と、石田三成を中心とした西軍による大戦争で、戦闘の途中で小早川秀秋が西軍から東軍に寝返った結果、東軍が勝ち、その後、家康が江戸幕府を樹立することぐらいは知っているはず。どちらが勝つのだろうというワクワク感は存在しない。



もっとも最近の若い人たちの中には、太平洋戦争はどの国とどの国が戦って、どちらが勝ったのかも知らない人が多いらしい。

実は1年半前に関ヶ原に行って、実地検分をしている。実際には、毛利軍はかなり離れた山の上に陣を張り、いかにも敵前逃亡しそうな場所にいた。小早川秀秋の方はそれほど高い山の上ではない。石田三成の布陣も絶対的に高い場所ではない。戦いは平らな部分で始まり、ずっと膠着戦が続いたため、やや高い位置にいた西軍が地の利を生かすことができなかった。ラグビーのスクラムのように力が拮抗している時に、少しだけ軍を引いて山裾におびき寄せるというのは難しい。やはり、小早川の裏切りやら毛利軍の躊躇によって西軍が披露していたところに、後陣にかまえていた家康の本軍が前進を始めたところで勝負がついた。



毛利輝元は総大将という看板を背負っていたのだから、西軍が勝てば新政権は石田=毛利連合になったはず。躊躇したがため、毛利家は結局は長州一国に押し込められ、260年間を無駄にすることになる。

石田三成を演じるのは、岡田准一。西軍の島左近は平岳大。一方、東軍の家康は役所広司。三成の愛妾で忍者でもある初芽を有村架純が演じるが今一つ忍者としての技に冴えがない。くの一を演じるなら体育大学に所属する土屋太鳳に限るような気がする。

役所広司は陽気な家康を演じている。要するに天下取りには手段を選ばない。岡田准一の方は悩める冷将という感じで、日本の未来や、豊臣家への忠義や、家康への憎悪といったさまざまな邪念に追い詰められていく。


ところで、同じ司馬遼太郎の原作から1981年にテレビドラマとして同名の作が制作されている。この時は、三成を加藤剛が演じ、島左近を三船敏郎、家康は森繁久彌、本多正信を三国連太郎が演じている。そして、忍者かつ愛妾の初芽は松坂慶子である。彼女だけが存命だが、どういう忍者ぶりだったのだろう。

この本作では重要な初芽という女性だが、原作者による創造ということらしい。もっとも彼女が登場しなければ、完全に実話ものになってしまい、それこそ有名な史実を勝手に書き換えることもできないわけだ。

この16年後に家康は明確にされない理由で食中毒により急死する。初芽による復讐の第一弾だったと大胆に書き加えてみたらどうだろう。

さらにその10年後、二代将軍秀忠の正妻である「江」も秀忠不在中に急死している。毒殺という疑いが濃厚だそうだ。淀君の妹だ。