歴史を推理する(邦光史郎著 歴史エッセイ)

2018-02-08 00:00:06 | 書評
邦光史郎氏は戦後を代表する小説家で直木賞候補にもなっている。多種多様な作品を残されているが、社会派小説と歴史小説が他のジャンルより圧倒的に多い。

かなりの多作で歴史小説も日本史の時代を問わず展開するのだから相当の歴史通ともいえる。本作も古くは古事記、日本書紀の時代から聖徳太子、平家物語、そして織田信長、秀吉、そして江戸時代は島原の乱、慶安騒動、お家騒動やら書いて、幕末と明治維新をカバーしている。

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よく考えると、不人気の奈良時代、平安初期、鎌倉時代と室町幕府時代はカット。江戸時代も後半は含まれていない。

読んでみて感じたのは、「歴史」に関するあいまいさの存在を解説されている。いわゆる歴史は「事実」と「因果関係」の組み合わせなのだろうが、「事実(史実)」というのは、平たく言うと物的証拠ということで、歴史家は想像により歴史書を書いたらいけないことになっている。また因果関係というのも、さまざまな歴史上の事実の中から、つじつまの合うもので組み合わせているようなものである。どこかの「蔵」の掃除をしたところ古文書が出てきて、今まで正しいと思われたことが、一夜にして虚構とされることが極めて多い。

言い換えると、「古典主義」とか「時代に学ぼう」とかいう復古主義の考え方も、本当のところ真に受けない方がいいのだと思う。