禅と庭のミュージアム 神勝寺の門を叩く

2018-02-02 00:00:06 | たび
広島県の福山市に神勝寺なる禅寺が大改装の上、ミュージアム化したという情報を得ていた。頃を見計らい訪問することにする。天気は良いが、いささか寒い。当然ながら山中である。

結果として、その空間は、想像をはるかに上回る規模の空間であった。見どころのきわめて多い場所であり、いくつかの修行プランをぜんぶこなそうとすると、丸一日必要になる。

zen1


まず、総門から。これにも由緒がある。江戸時代には京都御所内にあったものが、明治以降、宮家をはじめ、何度も移転を続け、ようやくこの場所に落ち着いたようだ。

実はここから先、古い建造物はそう多くない。

山の斜面のかなり上に立派な建物がある。本堂と荘厳堂。そこに向かう道中に池があり、庭があり、いくつかの建物があり、利休由来の茶室がある。そして、振り返れば総門の近くには金色に輝く奇妙な構築物がある。

zen2


池は手前の方は手が入っている風情ではあるが奥の方は自然感が漂う。鯉が人を見ると集まってくるが、トレビの泉じゃないのでコインを池に投げ込む必要はない。

zen3


そして五観堂という「うどん定食」のみを食べることができる場所(これも修行)をすぎて、鐘楼門に着く。

zen4


自由に鐘を撞きなさいということになる。「ゴーン」ときわめて低く澄み切った荘厳な音が響く。音は大きくないが、かなり遠距離まで届きそうである。

そして、長い階段。

zen5


そして、大きな石庭。

zen6


そして、ついに荘厳堂に到着するが、ここは江戸時代の画家である白隠の作品を多く保有していて、コレクションの中から順に展示している。撮影自由で、落ち着いた展示室の雰囲気が楽しめる。

zen7


本堂はあくまでも広い。本堂に掲げられた古木の板書きは「院明無」と読める。この古木は木造船の底板が転用されたそうだ。というのも神勝寺のバックには「常石造船」という造船会社があるからだそうだ。

zen8


さらに本堂の近くにはまたしても鐘楼があり、こちらは大きな鐘である。さっそく、鐘を撞くが、こちらの音は、強烈に大きく、破滅的な破壊音(ガチャ-ン)である。山の下に拡がる鞆の浦海岸まで届きそうだ。煩悩を叩き潰すという意味なのか。

zen9


帰路には国際禅道場もあるが外国人修行僧はみない。ここを訪れる人たちは、みな日本人のように見える。要するに本来は修行の場を公開しているわけで、この不思議な空間が山奥にひっそりと存在することになるのか、千客万来になるのか、予想することは難しい。

zen10


そして、足早に山を下り、最初にみた金色の物体に向かい、中にはいるわけだ。瞑想空間なのだ。暗い室内にいくつかの明暗する光と海面をイメージする水の波が幻想感を高める(はず)。実は、瞼が視野の妨げとなっていて瞑想は、やや危険。シャトルバスにて福山駅に向かう。