酔蟹三種

2018-02-09 00:00:58 | あじ
蟹に酔うのではなく、酔った蟹を食べる話。上海ガニを横浜中華街の某店で特別に食べる会があった。もう一つ、ワインを食べる会とジョイント企画なのだが、ワインの話をしてもあまり面白くないはずなので(リストも捨ててしまったし)、蟹の話を。

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1テーブルに6人座っていたので、蟹はつねに6個皿に乗って出てくる。一瞬、7個のことがあって、テーブル内に緊張が走ったが、誰かが口を出したり手を出したりする前に、別のテーブルで一個少ないということが判明したので、記憶回路から消去した。

それで、こういう知らない人たちが集まると、常に「知ったかぶり」があらわれて、上海ガニの講義をしてくれる。話している内容は蟹の種類とか調理法とか私の知らないことが多いが、知っている範囲では誤った内容をしゃべっているようにも思えるので、全体の信憑性はどうだろう。仮にこういう人を容疑者として取り調べる際には、かなり慎重に行わないと、供述に基づいて捜査していくと事件が闇の中に入っていき、最後にはすべての筋書きが崩壊してしまい、迷宮入りを防ぐには、冤罪を仕立てるしかなくなる。

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話を戻すと、最初に登場したのは、単に甕から引き上げただけの蟹なのだろうか。かなり焼酎の匂いが漂う。当然、蟹用のはさみと箸と手でバラバラにするので、手はアルコール漬けになる。アルコール過敏症の方には無理な食べ方だが、そもそもワインの会でもあるので飲めない人はいない(というか大酒呑みばかりだ)。

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甲羅を開けると、すぐに食べられるようになっている。本来はエラがあるはずだが、あらかじめ除去されているようだ。エラと知らず食べて「スポンジのような蟹ですね」とか言い出す人を見たいのだが。

想像の通り、相当のアルコール濃度なので、顔を真っ赤にして解体作業に取り組んでいる人が多い。カニは食卓を無口にするというが、しゃべり続ける人も何人かいる。聞こえてないが。

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二皿目は蒸し蟹。酔蟹を蒸篭で蒸しているので、日本の浜茹でカニとはいささか異なる。つまりあっさりしてないわけで、これはこれで美味い。以前、解禁日(国慶節)に上海で食べたのはこの味だ。客人に供するならこの料理だろうが、そもそも自宅で調理することは諸般の事情で難しいだろう。上海で食べたときは竹製の蒸篭に泥が塗られていてカニの風味が外気に逃げ出さないようになっていた。

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そもそも生きたカニを焼酎の中で生かしておこうということなのだが、生きたカニを輸入することは禁止されているらしい。深く考えると味が不味くなるので手と口だけを動かすことにする。台湾に数年住んでいたという人がテーブルにいて、「台湾ならカニはザル一杯500円で売ってますよ」と耳を覆いたくなるような戯言が出る。半月分の食費を投入しているのに余計なことをいうものだ。

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そして、最後のカニ料理は甲羅のままのブツ切りを軽く炒め、旧正月らしく餅と一緒に煮込んだ料理。これこそ手がべとべとに汚れるというか、それをボウルで洗うので指先がきれいになるとか・・餅は日本の餅より粘り気が少ない。餅粉の比率が少ないのかもしれない。

この後、数種類の料理を頂き、すっかり寂しくなった財布とともに寒空を駅に向かった。