113番目の元素の名前

2016-02-04 00:00:50 | 市民A
新元素の命名権を、理研が獲得したというニュースは昨年の9月末だったのだが、まだ具体的な名称が決まっているわけではない。

「ジャポニウム」というのが一番手で、「ニッポニウム」「ワコニウム」「リケニウム」などが候補らしい。ワコニウムというのは、発見した場所が和光市ということで、その地名ということ。最近の命名からすると、「有名な科学者」「地名」というのがほとんどだ。

となると、ジャポニウムというのも当然なのだが、日本人の蔑称(ジャップ)をイメージさせるという意見が一部からあるようだ。蔑称は100年前から使われているのだから、今さらのような気もする。しかし、この元素、人工的に作るのだが2ミリ秒後に崩壊するらしい。2/1000秒。国家の名前をこういう超短命元素につけてもいいのだろうか。

「ワコニウム」。あまりにも局所的な感じがする。といって埼玉を使った「タマニウム」ではコミカルになるし、和光市の人は都民だと思っているだろう。近くを流れる「アラカワニウム」は語呂が悪すぎる(荒川の英語名ですら、「ARA RIVER」ではなく「ARAKAWA RIVER」と重複語だ)。

人名といっても理研出身の最も有名人は言うまでもなく「おぼさま」だし、歴史上の日本人有名核物理学者は大勢いて絞り込めない。

で、「おぼさま」と書いてしまったが、この「新元素の発見」という世界には、過去に多くの「おぼさま」がいて、しかも認定までされていることがある。一説では元素の数(100超)より多いともいわれ、なかには誤りというよりも捏造そのものというものもあるようだ。

そして、命名候補のうちの一つである「ニッポニウム」というのも、実は因縁があるわけで、元素番号表の第43番目にNpと記されたことがある。1908年に小川正孝教授がロンドン大学で発見したことになっていた。しかし、1936年に本物の43番目の元素「テクネチウム」が発見されることになって、「Np」は亡霊のように宙に浮くことになった。

どうも新元素であることはわかったものの1908年の時には、質量の測量に誤差があったようだ。

そして、その幻の元素が何であったのかがわかったのは1947年だそうだ。第75番の元素。しかし、その元素には既に別の名前が付いていた。「レニウム」が発見されたのは1925年。択捉島という日本固有の島の火山のガスにも含まれているそうだ。

つまり、1908年に小川教授が、元素番号を43ではなく75と言っていれば、そこに「Np」と命名されていたはずだ。幸か不幸か小川教授はこのシェークスピア的悲劇を知ることなく1930年に他界されている。

サッカーの世界では、「ドーハの悲劇」が「ドーハの歓喜」と書き直しになったことだし、「ニッポニウム」の悲劇が歓喜に代わるといいなあ、と思いながらも、そういうことにはならないらしい。


追記:現在の太陽系が存在する銀河星雲を含む宇宙の構造だが、ビッグバン以降の第二世代らしい。第一世代の宇宙には元素番号26の鉄までの元素しかなく、その第一世代の宇宙が何らかの現象で大崩壊、大爆発して第二世代の宇宙が誕生し、そこに新しい元素として92番目のウランまでの元素が登場。それ以降の元素は人工的にしか作れないのだが、たぶん第二世代の宇宙が誕生した時のエネルギーが不足していてウランまでしか実在元素にできなかったのだろう。で、第三世代宇宙は生成されるのだろうか。現在のところ、宇宙は外縁部が拡大の上に拡大を続けているので、エネルギーは拡散しているように見えるのだが、しょせん宇宙論は人間の知力の中にしかないものなので、大きな勘違いをしているのかもしれない。