「無双」といっても宗看じゃない

2008-08-30 00:00:42 | しょうぎ
5c5af0b2.jpg将棋関連のDMが大量に送られてくる。将棋連盟関連のもの、LPSA関連のもの、出版社関連のもの、知人棋士、知人アマ関連のもの、出所不明のもの。今回来たのは、毎日コミュニケーションズ社から。新しく強力な将棋ソフトが発売されるにあたっての先行予約割引の件。こういうのは、よく別のルートからもくることがある、おそらく、以前、将棋ソフトを購入した際にユーザー登録したのが祟っているのだろう。

その名も、「無双」。

しかし、一般に将棋の世界で「無双」と言えば、享保19年、伊藤宗看が幕府に献上した図式100題のことを指し、俗に「詰むや詰まざるや」と言われる不滅の巨書である。著作権は既に失効したとは言え、野球で言えば「永久欠番」みたいなネーミングである。まあ、「指将棋」のソフトであって「詰将棋」のソフトではないから良し、としたのだろうか。まあ、野球とソフトボールの差よりは大きいような気がする。

このソフトが定価13,440円のところ何割引かで買えるらしいが、割引率が大きいのかどうか、なんとも言いがたいところだ。なにしろ、発売前に予約は終了してしまう。

この「無双」は。実は2008年の第18回コンピューター将棋選手権で準優勝(6勝1敗)した「棚瀬将棋」のことだそうだ。5月5日の大会では、唯一、優勝した「激指」に1敗しているが、その1敗は、激指玉を即詰にしたと同時に棚瀬側が時間切れ負けになるという、コンピューター的でない結末だったそうだ。(つまり、「無双」も「激指」もほぼ同じぐらい強いということかな)

コンピューター将棋選手権は、その後のエキジビションで激指と棚瀬がそれぞれアマチュアタイトルホルダーを打ち負かす、という人間側に惨めな結果を思い知らせることになる。

今回、市販されるソフトにも。棋力は「五段+++から20級」まで20段階と書かれている。五段+++ということは八段ということだが、アマチュアには実力のみでの八段はいないので、プロ八段級ということを、暗に言いたいのだろう。

そして、私は既に何種類も将棋ソフトを使っているのだが、残念ながら、しばらく買っていない。「柿木将棋8」「東大将棋定跡道場」「東大将棋詰将棋道場」など、それぞれ別用途に使っている。この中では、東大将棋(たぶんIS将棋系)が指将棋では強そうで、よほど気合を入れて対戦しないと、すぐにボロボロになる。本当に気合を入れて勝ったことはあるが、基本的には、「おカネが賭からなければ」本気になれるはずないじゃないの。

しかし、なんだか知能ゲームにコンピューターを持ち込んで、どんどん強くしてプロを打ち負かそうと、開発者は必死なのだが、強くなればなるほど、将棋のゲームの価値が低下し、いずれゲーム自体が滅亡してしまうのではないか、と少し思うわけである。

何か、人類が自分たちの滅亡に向かって核兵器の開発に邁進しているのと同様の現象のように思えるのだが、核兵器と異なるのは、将棋ソフトは、すでに実戦で配備・使用されていることだ。

ところで、この「無双」は、1本だけ買うと30%引きなのだが、「無双」と「激指7」の2本セットで買うと、さらに5%の値引きが追加され35%引きになる。「無双」は準優勝で、「激指」は優勝ソフトなのにだ。

さて、8月16日出題詰将棋の解答。少し長い。

5c5af0b2.jpg▲4五角 △3四角(途中図1) ▲同角 △1一玉 ▲2一歩成 △同玉 ▲4三角成 △1一玉 ▲1二歩 △同玉 ▲4五角(途中図2)

△1一玉 ▲2一馬 △同玉 ▲5四角 △1一玉 ▲1二歩 △同玉 ▲4五角 △2一玉 ▲2三香 △3一玉 ▲2二香成 △4一玉 ▲6三角成 △5二歩 ▲3二成香 △5一玉 ▲4二成香まで29手詰

動く将棋盤は、こちら。

5c5af0b2.jpgこの問題のテーマは、なんとか王手香取りをかけて、香車を入手して収束に向かいたい、という攻め方の意図を、玉側が中合いで防ぐという筋。

2手目の角合いが派手な割りに、あとはレンガ崩しのように地道な作業が必要である。

この問題の双玉は、「金だと攻め駒が強くなりすぎる」というネガティブな意味を持つのだが、全体に地味っぽい感じは拭えないかもしれない。



今週の問題は、攻め駒だらけの入玉図。寄木細工のような駒の入れ替え手順は好き好きかな。

5c5af0b2.jpg香車の使用法に「カギ」。

わかった、と思われた方は、コメント欄に、最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。