トンネル内女性殺人の現場(2)

2006-11-07 00:00:47 | 市民A
そして、事件現場は、近づくとすぐにその場所がわかる。

89020195.jpgまったく理不尽な形で短い一生を終えなければならなかった女性の無念を祈るべく、多くの人たちが現場に生花やぬいぐるみ、飲みものなどを捧げている。トンネルの中なので、雨に濡れることもなく、事件の解決を待っているかのようだ。かなり胸が痛くなる光景だ。(私が同じ目にあったらどうなるのだろうかと、頭をよぎったが、考えないことにする)

常識的に考えれば、深夜のある時間、彼女がそこをとおることは予測しにくいため、無差別殺人ではなかっただろうかとは思うが、刺されたのは片刃の包丁とのことで、下腹部の刺し傷は背中まで届くほどの力で刺されていて、「強い殺意」を感じるそうである。強い殺意は、「怨念」の時が多いそうだ。

ここからが警察の調査なのだが、彼女はアルバイトとして、東京駅近くの会社に、週一回勤めていたそうだ。アルバイトである。以前から、こういう状況だったのではなく、6月までは川崎市内のIT大手に日勤していた。そして、何らかの理由で退社し、8月22日から新しい職場に勤めていた。週1出勤なので、まだ4回しか会社には通勤していなかった。そして、金曜日である9月22日は、勤め先の送別会に出席し、東京駅周辺で飲んだ後、11時頃解散になり、ちょうど11時40分に東急梶ヶ谷駅のビデオに姿が写っていた。

そして、その後、帰宅するのに梶が谷駅から自宅まで一本の道を携帯を見ながら徒歩で帰っていたか、あるいは11時45分発の深夜バスに乗ったかはわかっていないようだ。実際に駅まで歩いてみると、20分といったところだった。11時40分に駅を出て、歩くと、ちょうど時間は計算どおりになる。バスだと11時53分頃に現場に到達することになり、少し早いし、バス代も深夜バスだと400円となる。さらに、仮にバス停で降りると、問題のトンネル内では、道路左側を選択するのが自然である。梶ヶ谷駅から現場まではゆるやかな下り坂で、歩くのに苦労することはない。単に想像だが、勤め先の宴会といっても、週1出勤でまだ4回しか行っていない職場で、宴会の華になって飲みすぎることも考えられないだろう。

そして、この梶ヶ谷は住宅が密集しているのだが、いくつかの場所には暗い空間が存在している。私が気になったのは、梶ヶ谷駅からの道沿いにある西福寺である(バス停もある)。ここには夜の闇がある。長い時間潜むことは可能だろう。仮に怨念説とすれば、彼女がトンネルの中を通ることは判っているのだから、ここから尾行すればいいわけだ。そうして、トンネル内右側歩道を歩く彼女とは逆の左側を小走りに進み、出口で向きを変え、彼女の正面に回りこむ。後ろから追いかければ当然気付くだろうが、反対側なら可能だ。

89020195.jpgあるいは、無差別殺人であるなら、トンネルの出口側で待つのだろうが、そううまくいくのだろうか。出口は道路に直角にぶつかるT字路型交差点。ほとんど夜間の通行量はないとは言え、10分に1台、あるいは一人とかは通るだろう。このトンネルの後ろ側一帯に住む住人にとって、このトンネルを通らないと、5分は遠くなる道路構造だ。また住宅も多い。ここも長時間潜むことは難しい。

ということは、殺意を持ってここへ来て、たまたま通りかかった女性をいきなり刺した、ということが考えられる。いつも凶器の包丁を隠し持って、危険地帯を徘徊し、チャンスがあれば人を殺そうと思っていた、というように解釈ができる。実は1年前にも近くで女性が刺され重傷を負う事件があり未解決だそうだ。

しかし、トンネルの中で殺人を犯しても、逃走ルートはかなり難しい。どこに行っても人やクルマの通りの多い場所に出てしまう。うまく逃げ出したということは、現場の裏手の複雑な道を知っている地元の人間ではないかと考えられる。


ところで、事件後1ヵ月半が経つが、もうすぐ犯人は逮捕されるだろうと思っている。現場で見つけたのだが、このトンネルの出口であるT字路の交差点に神奈川県警の捜査員二人がいたのだが、かなり余裕の表情で談笑していた。おそらく、既に犯人を特定し、確かな証拠を固めて逮捕直前ということなのだろう。そこに立っているのは地元へのポーズなのだろう。くれぐれも、真犯人を捕まえないと後で複雑なことが起こるので、慎重にお願いしたいものだ。


そして、事件解決後は、このトンネルについて、もっと安全対策を議論してもらいたいものだ。例えば、車道をかさ上げして、歩道と同じ高さにし、低いガードレールにして密閉感をなくすとか、左右にある歩道のどちらかは、プライベート道路として、予め地区の住民に発行した個人認識カードがないと通れないようにするとかだ。「落書きは文明成熟度の証」とは言うものの、この場所だけは不適切と思える。人の目が届かない証拠だからである。

このトンネルから200メートルほど西側に、同じ構造で、やはり落書きだらけのもう1本のトンネルがあるのだが、まったく無警戒な10才くらいの少年が一人でコミック雑誌を読みながら歩いていた。
(完)