トヨタ博物館(外国車編)

2006-10-30 00:00:32 | 美術館・博物館・工芸品
名古屋というのは、いわゆる観光地ではないし、名古屋市、愛知県にも自覚がないのだろうが、食べ物や見どころとか、かなり多い。少なくても横浜より、多様性がある(というか、名古屋独特のものがある)。

といっても、東京からは日帰り圏なので、行けるところも限られている。できても、寄り道1ヵ所位だ。ところが、好みの関係があり、今まで寄り道したところは、水族館2回、貨幣博物館2回、徳川美術館1回、南極観測船1回と、かなり偏っている。旧東海銀行本店にある貨幣博物館には、世界最大のコインである天正大判があり、拝金主義者の足はついついそこに向かうのだが、3回も行くこともないので今回はやめる。例えば、ボストン美術館、ノリタケの森、そして最近はロボット博物館もオープン。

359e74f6.jpgさらに、名古屋近郊には、企業博物館(あるいは工場見学)が充実している。カゴメやミツカン酢などだ。もう、こうなると何泊かしてツアーをしなければならない。しかし、名古屋はクルマ社会なので、遠方からの観光客は移動に大変不自由することになる。博物館などへの交通アクセスを調べても、まず道路地図から書かれている。

そして、当日は、朝から名古屋にいたのだが、午後二で所要終了。いくつかの隙間時間対策の候補の一つであるトヨタ博物館へ行くことにする。実は、「トヨタ」というブランドから、あまり「文化」を期待していたわけでもなく、歴史的自動車の展示会場というように思っていた。万博会場用に設置されたリニアモーターカーに乗り、芸大通りという駅で降りる。芸大は1キロも先で、駅前にはトヨタ博物館があるのだから、妙な駅名の決め方だと思うが。駅の名前を「トヨタ博物館前」にすると、将来、廃館できなくなるから固辞したのだろうと深読みする。

359e74f6.jpg駅から広い道路を、少し戻り、博物館の敷地に入っていくのだが、歩道を最後まで歩いていくと、博物館ではなく、隣接する社宅に吸い込まれるので注意が必要だ。余計な話だが、社宅を見る限り、この会社が世界最高級のエクセレントカンパニーだと思う人は、誰一人いないだろう。そして、博物館の館内には、驚くほど従業員が多い。一階フロアのところにある豊田1号車の前で、カンバン方式ならぬ看板娘様から丁寧な説明を受ける。数多く並んだ古今東西の名車の一台ずつ、丁寧に説明があるのかと思ったら、そうではなかった(事前に頼むと、男性解説員が同行してくれるようだ)。基本的には、クラシックカー博物館というところか。

359e74f6.jpgまず、二階に上がると、世界の自動車史のコーナーになっている。世界最初の自動車は、ベンツらしい。三輪車のオートバイ型ということ。これなら私でもベンツが買えそうだ。自動車誕生後、しばらくは欧州各国で、そういう三輪車モデルが作られている。ハンドルは自転車式である。つまり、自転車にエンジンを取り付け、後輪を二つにしたわけなのだが、後輪が二つになるとカーブで曲がるときに内輪と外輪の回転数を変えなければならないので、「デファレンスギア」という装置が必要になったわけだ。それが発明されたのが、自動車がオートバイと分化した決定的な瞬間だったのだが、そんなことはどこにも展示されていない。トヨタが発明したわけじゃないからだろう。

359e74f6.jpgクルマは欧州では王族の乗用していた馬車からの乗り換え需要に対応したので、豪華なロールスロイスのような路線に向かう。ビンテージカーの時代だ。一方、新興国の米国では王様がいなかったことからクルマは大衆化する。T型フォードがどんどん売れる(といってもカローラのように長寿だったわけでもない。米国人は飽きやすい。)。その後、国民総金満体質になり、米国車はT型精神を忘れ、華美に向かっていく。(今、白洲次郎の伝記を読んでいるのだが、その頃、ケンブリッジに留学した彼は、父親からの高額送金をこのビンテージカーに注ぎ込み、欧州社交界にコネを作ったそうだ。)

ところが今度は欧州が二度の世界大戦で疲弊し、揃って貧乏国に落ちぶれる。そして、小型車の時代がくる。歴史的名車としては、ヒットラーの要請で国民車となったフォルクスワーゲンや、映画「ローマの休日」で活躍するイタリア車フィアット・トッポリーノなどが展示されている。

359e74f6.jpgこの頃から、自動車は世界の産業の牽引車になっていくのだが、自動車の発展は、一方では自動車産業のM&Aの歴史ということになる。米国はビッグ3の時代になり、欧州は国営企業の時代になる。