ギョッとする江戸の絵画(2)

2006-10-27 00:01:33 | 美術館・博物館・工芸品
10月15日「ギョッとする江戸の絵画(1)」に引き続き、毎週月曜の放送は続く。全8人紹介の3回目と4回目は白隠(はくいん)と曾我蕭白(しょうはく)。

cafb9969.jpgいわゆる奇想画は、前回の岩佐又兵衛と狩野山雪という、戦国時代の荒々しい空気をそのまま絵筆で表現した二人の後、表面的には歴史の表から姿を消す。歴史は、江戸時代初頭の国土開発期に入り、価値観が戦争から所得へと変っていく。大名は、与えられた領地の収益力をあげるため、山を崩し、木を倒し、海を埋め立て、一方で道路を整備したりする。しかし、日本は狭い。すぐに行き詰まり、次に商業や金融の時代となり、身分制度が変わり始める。そういった社会の転換点に最初に登場した画家が、白隠である。正確には画家ではなく高名な禅僧である。

白隠は、プロの画家ではなく、信者に自分の書いた絵を配っていたそうだ。無料ということ。案外、それが練習になっていたのかもしれない。既存の派に属さず、荒々しいタッチで墨絵を描く。絵をよく見ると、下書きの木炭の線を全く無視して勢いで描いているそうだ。釈迦を描き、達磨を描き、高僧を描き、自分を描く。

そして、白隠は、プロの世界である上方画壇の池大雅にも影響を与える。なんと、普段、沼津の松蔭寺に住む白隠に禅宗の通信教育を受けていたそうだ。本当は、通信教育の生徒にご褒美で配る、自筆の自己流絵画がほしかったからかもしれない。大雅の絵画にも影響が見られるそうだ。


cafb9969.jpgそして、江戸史上、最大の奇想画家が曾我蕭白。人間の心のグロテスクな部分を描く。同時代の丸山応挙のことを、職人とみなし、自分の方こそ芸術家、と嘯く。ごく近年まで二流画家と評価されていたのだが、ボストン美術館にある大量のコレクションが明るみに出るに従い、本来の類まれな奇想画家たる実力があきらかになったわけだ。美しいものをより美しく描くという従来の常識と正反対に、心の中の醜さを誇張した表情の中に描きこんでいく。これだけこわい絵画は、世界に例をみない。

忽然と登場し、忽然と消えるのだが、幕末の国芳に繋がる部分を感じる。


cafb9969.jpgそして、このシリーズは8人中4人が終了。このあと、若冲、蘆雪、北斎、国芳と大物が連発。手に負えないかもしれない。NHK教育テレビ。毎週月曜22:25から25分間が放送時間でもあり、翌月曜の朝5:20からが再放送でもある。