地下ホールは音量無制限だが、

2005-03-19 21:51:59 | 映画・演劇・Video
86ec7da0.jpg友人に誘われ、酒場の喧騒に沈む前に港区芝公園にある「みなと図書館」に行った。映画会があるというのだが、ただの映画ではなく、歌劇をDVD化したものを上映するということ。今ひとつ、理解できないところもあるのだが、所詮は無料なのだから、と音楽好きにつきあう。会場に10分ほど前についたが、不安になるのは、会場内には、まだ誰もいない。地下一階のホール入口のポスターを確認すると、確かにまちがいない。出し物は「ボロディン」作、歌劇「イーゴリ公」映画版。1969年作とのこと。旧ソ連時代だ。だいじょうぶかな?。要するに、原作は歌劇だが、それをソ連の会社が映画化し、最近DVD化されたということだ。しぶい。

そして、椅子の数を数えるとちょうど100席だ。缶コーヒーを飲んでからホールに戻ると、ホールのちょうど真中の席には、既に一人座っている。特等席をとられてしまった。そして、スクリーンに近いところにも一人座っている。よくみると、靴を脱いで、持参のスリッパを履いている。常連なのだろう。そして、遅れて入ってきた一人を合わせて、結局この日は100席に対して、5人だけだった。

そして、まさに地下ホールのメリットを生かして、大音量でロシア語の歌劇を聴くことになったのだ。自宅に地下室を作ってオーディオルームを設置したような贅沢さだ。もちろん満員だったらそんな気にはならないだろう。

ちょっと「歌劇イーゴリ公」のことも触れておくと、モンゴル民族の襲来の前に、一度は息子と一緒に捕虜になるのだが、逃走してルーシ(ロシア)のために戦い、モンゴル軍を追い払うといった話だ。息子は脱走の途中で再度、捕まってしまうのだが、映画の中ではその後の話はなく、やや未完の感じがあるのだが、実際、この歌劇を書いている間に、作曲家(で化学者だった)ボロディンは心臓麻痺で54歳で亡くなってしまい、友人が手を入れて完成させたわけだから、未完の感じが残っても当然なのだ。

そして、映画化された1969年といえばブレジネフ政権下なのだが、結構、東洋人蔑視で、ロシア人中心的な思考が見えてしまう。一方、歴史上は無謀な戦いで破れて一旦は捕虜になったイーゴリ公のことをプラス評価する人は少ないようだ(まあ、歴史解釈にはさまざまが論があるだろうが)。

しかし、なぜ、こんな不人気な出し物が企画されたのかは、さっぱりわからない。誰かの100周年とかと思ったがそんなこともなさそうだ。さらにわからないのは、上映について、誰かに著作権的なものを支払うのだろうか。私にはどうでもいいことなのだが、ちょっとだけ気になる。