骨髄バンクのこと、あれこれ

2005-03-16 13:52:31 | 市民A
3de4d53e.jpg骨髄バンクの登録者が増えているそうだ。映画「半落ち」「セカチュー」、そしてTVのCMで、今は星野仙一氏、その前は、白血病で亡くなった夏目雅子さんが登場。今まで、消極的善意の人たちが積極的善意に変わったのだろう。この骨髄バンク、決して自分で一歩踏み出さないと、近づくことがない組織なのである。(財)骨髄移植推進団体。骨髄バンクへの入口は、ごく普通の日赤の献血センターである。実は、ドナー登録することと、実際に移植を実施することは別で、まだ、何段階も先のことになる。

あまり軽い気持ちで書くわけにはいかないし、読まれ方によっては、制度を否定しているようにとられるかもしれないが、そういうつもりはまったくない。それなりに、様々な理由もあるだろうし、深く知っているわけでもない。普通の感想や疑問を書いてみるだけである。

その前に、先日、本田美奈子さんが入院した。あるブログ(どのブログかは覚えているが、そんなにシリアスに考えて書かれたのではないだろうからリンクしない)で、「最近、芸能人が白血病で入院する率が上がっているのではないか?」との指摘があって、気になっていた。そういうデータはないが、日本人全体の問題として、データをさがしていた。厚生労働省に結構読みにくいデータがあった。

見つけたデータは、残念ながら死亡された方の原因分類であって、治療の結果、回復された方の数字はわからなかった。平成12年から15年までの数字だ。「白血病」単体では、年間約7,000人の方が亡くなられている。そして増加基調にある。平成12年を100.0とすると、102.5(13年)、103.0(14年)、103.7(15年)。さらに、骨髄移植が効果的といわれる悪性リンパ腫・造血組織腫まで合計すると年間19,000人の方が亡くなられている。同じく12年を100とすると、102.5(13年)、103.9(14年)、106.0(15年)。と急増していることが感じられる。悪性新生物全体の増加率は、同じく、100(12年)、101.8(13年)、103.1(14年)、104.8(15年)である。どこかで劣化ウラン弾でも運んでいるのではないかと思ってしまう。そして、他の悪性腫瘍に比べ、治癒率が低いというようにも読める。

本ブログを書く前に、白血病の患者さんや、こどもを無くされた方々のホームページを読むと、本当にこの病気の困難さがわかる。数年前に日記が突然に終わってしまい、そのままになっているサイト。こどもの闘病記を公開しているサイト。そして、激励の声・・・


さて、骨髄移植の方法だが、ドナー側は腰骨の間から骨髄液を摂取する。約1,000ml。腰骨は背骨の下の骨だ。首の骨は7つ、背骨は9つ、腰骨は5つだ。そして、採取後すぐに患者さんに移植。ドナー側はその数日前から、指定の病院へ入院して、あらかじめ自分用の緊急輸血用の血液を採取したりして待機して、当日は全身麻酔が必要になる。術後には若干の痛みが残るが、数日から1ヶ月で元に戻る。というのが、簡単なあらすじ。

そして、星野仙一氏(57歳)がCMをしているのだが、実際に星野仙一氏がドナー登録することは、できないのだ。年齢制限があり、現在は20歳から51歳までだ。そして、下限を18歳にしようということになりそうだ。実は、登録後、実際に提供の話がでるには、なぜか2年間が必要になっている。だから18で登録しても20歳までは声がかからない。

しかし、ここからがリスクの世界なのだが、非常にまれに事故があったことが報告されている。資料によれば、今まで世界60,000件以上の骨髄採取で4件の死亡例があるということだ。少ないとみるべきか、それでも問題と考えるか。それはもう、個人の問題としかいえない。ということで、適合型が見つかった場合、弁護士や家族を入れての説明会が行われることになっている。そして、最終的には登録しているドナー本人と家族の同意が必要になる(臓器移植とは全く違う)。

さらに、特徴としては、誰に移植したかは、明かされないことになっている(例外もある)。この人ならいいけど、この人にはダメとかいうことはできない。そして、献血と大きな違いがあるのは、ドナーは、登録時に5CCの血液で白血球の型を登録するのだが、そのHLA(白血球の型)は本人には教えられない。逆に自分の方から、患者に売り歩くような人間があらわれるのを警戒しているのだろうか。このあたりのルールや、2年間のウェイティング期間の問題などは、原因はよくわからない。

そして、ドナーが知っておかなければならないのは、骨髄移植は、「高率の治療法」であるが、それでも「完全」なものではないことだ。病気の進行度合いや年齢にもよるが治癒率は「70~30%」である。およそ、半分の方はそれでも帰ってこられないのであるわけで、化学療法か骨髄移植かを決めるのは困難でかつ辛い。それでも移植を選択した人は成功することだけを期待しているということを理解すべきである。

最後に付け加えておくのだが、白血球の血液型であるHLAは数万種類あるといわれる。実際には、バンク登録者の中に同一型の見つからない患者さんが2,000人ほどいるということだそうだ。また、完全には一致しないまでも大部分(5/6とか4/6とか)が一致ということで移植に踏み切ることもあるそうだ。そして、この骨髄バンクを通じての提供に頼ることが多いことの背景として、まさに「少子化」が原因であるということが言われている。HLAは親子間で一致するのではなく、兄弟姉妹間で一致する率が高いそうだ。こどもの数が減ったことによりパブリックな組織に頼る率が増加したわけだ。しかし、兄弟姉妹といっても他人であるわけだし、それはそれで議論もあるのだろうが。

さらに、多国間の融通というテーマもあるのだが、登録率がそれぞれ異なる国同士では、なかなか難しい問題があるということは想像するに難くない。