印南野は、江戸時代になり本格的に開拓がはじまりました。
水が乏しかったため長い間、人の入植を拒んでいました。古代から印南野は街道筋の一部を除いて随分寂しいところでした。
そのため、印南野(台地)には、こんな民話が伝わっています。
◇(民話)印南野の野猪◇
西の国から一人の旅人が都へ急いでいた。
日が暮れてしまった。辺りを見渡したら、一軒の小さな、今にも壊れそうな小屋がありました。
夜がふけたが、その夜は、なかなか寝つけませんでした。暗闇を通して遠くから念仏を唱える声が伝わって不気味に聞こえてきます。松明をかざし、葬式のようでした。
家の前まで来るとピタリと止まり、土を掘り、棺を埋めはじめたのです。
作業は終わったようです。時間が過ぎました。
じっと墓を見ていると、なにかが動きだしました。
「はて?」とよく見ると、裸の人が土の中から出てきました。そしてこちらへ向かってきたのです。
「危ない!・・」と思い、旅人は家を出て、その怪物に切りつけました。
「ギャー」
確かに手ごたえがありました。
旅人はあまりの恐ろしさに、後を見ず、いちもくさんに走りました。
人家のあるところにたどりついたころ、夜が明けました。
この話を聞いた村人は、旅人と一緒にその場所へ引き返しました。
そこには、大きな野猪が切り殺されていた・・・