樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

十三

2007年09月03日 | 木と美容
前回から記念日がらみになっていますが、明日9月4日の「櫛の日」にちなんで櫛のお話を。
京都には「十三屋」という屋号の櫛屋さんが2軒あります。「とみや」ではなく「じゅうさんや」と読みます。1軒は四条通り、もう1軒は清水寺の近くにあります。東京にも同じ名前の櫛屋さんがあるそうです。3軒とも全く別の経営ですが、昔から櫛のことを「十三」と読んだので、同じ屋号になったのでしょう。
櫛がなぜ「十三」かと言うと、「くし=九・四」ですが「苦・死」を連想するので、わざわざ九と四を足して「十三」に読み変えるからです。九と四を避けておきながら、9月4日を「櫛の日」にするのは矛盾すると思いますが、いずれにしても「語呂合わせは日本の文化」です。

      
        (四条通りの櫛屋「十三や」。創業は明治8年)

万葉集に次の歌があります。
   君なくば  なぞ身装はむ  櫛笥(くしげ=櫛箱)なる 
     つげの小櫛を  取らむとも思わず
「あなたがいなければお洒落をしてもしょうがないので、櫛箱にあるツゲの櫛を持とうとも思わない」。播磨の乙女という女性が、都に帰る男性に贈った別れの歌です。
この歌にもあるように、櫛と言えばツゲ。しかも、三宅島の南にある御蔵島(みくらじま)で産出するツゲが最高とされています。御蔵島のツゲは将棋の駒の最高級材としても知られています。
材質が緻密で固く歯が折れにくい、静電気が発生しないので髪を傷めない、使うほどに艶が出るなどの理由でツゲが重用されるようです。

      
        (ツゲの葉は小さく、対生。別種のイヌツゲは互生)

しかし、もっと昔の櫛はツゲではなかったようで、縄文前期の遺跡から出土した日本最古の櫛はツバキ製で、漆が塗ってあるそうです。
実は、京都の同じ四条通りには「二十三や」という櫛屋さんもあります。店の説明によると、梳櫛(すきぐし)のことを昔は唐櫛(とうぐし)と呼んだので、10+9+4=23 で「二十三や」。昔の日本人は言葉遊びが大好きだったようです。
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4 コメント

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13もまた・・・ (guitarbird)
2007-09-03 17:30:04
こんにちわ、guitarbirdです
読み始めてすぐに「きっと、くし=9+4だろうな」と思った私は、
洋楽しか聴かなくても、れっきとした日本人ですね(笑)。
でもこれをクリスチャンの人が見ると、なんでわざわざ13に・・・
と思うかもしれないですね(思わないか・・・)。
いいツゲ材の山地が御蔵島に限定されているのが、興味深いところです。
余談ですが9月4日は弟の誕生日です。
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日本では (fagus06)
2007-09-04 07:47:34
言葉の音で「忌み数字」(9と4)が決まりますが、欧米では言葉の意味で(13)決まります。
こういうことに興味があって、昔いろいろ勉強しましたが、日本語は母音数が少ない(5つ)ので同音異義語が発生しやすい点に原因があるようです。
英語は母音数が20くらいあるので、同音異義語は少ないそうです。
欧米では、日本のように駐車場の番号やホテルの部屋番号から忌み数字を省くということはないそうです。
日本には語呂合わせの文化があるから、落語のオチとか大喜利が成り立つんですね。
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ありがとうございます (guitarbird)
2007-09-04 12:42:25
ふたたびguitarbirdです
詳しい解説、ありがとうございます。
ちなみに弟に聞いたのですが、イタリアでは16が縁起が悪い数字だそうです。
それから、私は9がいちばん好きな数字なのですが、
どこかの宿で9号室がなかったのを見て(4号室もなかったです)、
ちょっとがっかりしたことがあります・・・
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イタリアの16は (fagus06)
2007-09-05 08:18:40
知りませんでした。どんな理由なんですかね、気になります、調べてみよう。
今の日本人は、私も含めて、9も4も気にしません。バカバカしい、古い、と言えばそれで済みますが、私はそういう日本人の音感というか、連想力が面白いと思います。
好きな数字か~、私には特にないですね。
ギタバさんに合わせて兄弟ネタで言えば、中学時代のバスケ部で、兄から譲り受けたユニフォームの23番かな。大人になって、マイケル・ジョーダンが23番だったのも嬉しかったなあ。
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