ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

生徒たちの「気づき」

2021-12-16 07:03:25 | 音楽あれこれ
どーも、ワシです。先日、大昔の少女たちから「今月のレッスンは●●でやるのでよろしく!」と連絡があり、早速上京してきました。当ブログを初めて読む方には何のことやらわからんと思うので説明しますね。

2006年から都内のある場所でワシは高齢者の方々に「うた」を教えていました。いわゆる声楽じゃありませんよ、「うた」です。正確に言えば「歌い方」を教えていました。でも相手が高齢者だからといって童謡や唱歌を教えたんじゃありません。さすがに演歌は教えられない(コブシの回し方がわからん)ので、教えるのは流行歌や歌謡曲、フォークソングなどでした。

ただし、一般のカラオケ教室と違うのはまず楽譜に書いてある通りに歌うこと。なぜこれを最初にやるのかというと、耳で何となく曲を覚えて歌えたとしても、ほとんどの人がリズムや音程を意識していないので何百曲何千曲やったところで一向に上達しないんです。

若い人なら感覚的に理解してできてしまうんですが、高齢者の場合はそうはいかない。本当に基礎的な音楽能力が衰えているから。だからいくら感情を込めて歌えたとしてもそうした基礎力がないのでそれ以上の上達は見込めません。一見歌唱力があるような人もそこを見落としているので結局は歌手の「歌まね」で終わってしまうんです。

感情表現なんて歌い込んでくれば放っておいてもするようになります。だからまずは楽譜通りに歌うことができるかどうかが重要なんです。これをクリアした上で、感情表現に取り組むほうがはるかに効率が良い。何しろ高齢者には時間がないんです!

だからと言って高齢者の皆さんに楽譜の読み方を教えるわけじゃありません。いや、実際、読み方は教えてません。だから彼女らは楽譜が読めません。でも楽譜通りに歌えるようになります。ノウハウがあるんです。この方法でやればたとえ90歳でもSMAPの曲なんかでも「正しく」歌えるようになるんですよ。ノウハウは秘密ですけどね〜。

まあ、そんなこんなで大昔の少女たちはワシに歌い方を習ってきたわけです。で、最初の話に戻ります。今月のレッスン場所は何度かみんなで行ったことのあるカラオケのあるスナック。なぜそこなのか。話によると、そのスナックは今月一杯で閉店するのだそう。閉店する前に行きましょうよ!ということで決まったとか。

でも、営業時間内に行くので当然他の客も来る。なので、実質的にはレッスンはできません。そこで、過去にワシが教えた曲をひとりずつ復習してみることにしました。

そうこうするうちに他の客が来店。案の定、その人たちもカラオケを歌い始めました。しばらくしたその時です。ワシの生徒たちが一様に顔をしかめ始めました。

「あれっ、どうしました?」
「先生の気持ちがわかったのよ」
「なになに、どういうこと?」
「ほら、昔私たちが先生に習い始めの頃、私たちの歌を聴いて先生はつらいって言ってたよね?」
「あー、確かに前は音程とリズムが強烈に酷かったからねぇ」
「ああ、それそれ」
「気が狂うかと思ったよ」
「な、何もそこまで言わなくても…」
「すみません、すみません…(でも本心です)」

つまり、こういうことだったんです。他の客が歌っていたのは以前教室で教えたことのある歌でした。生徒さんたちは楽譜通りの「正しい」歌い方を叩き込まれているのでリズムや音程が違うのがすぐに理解できたんでしょうね。確かにその客の歌い方は感情たっぷりで歌い慣れている感じでした。でも、どこまで行っても自己流は自己流にすぎません。気持ちの悪い「タメ」をあちこちで使ったり、もう好き放題。生徒さんたちはそれを聴いてつらくなってきたようです。

「あっ、わかったの?」
「ええ、とっても気持ち悪いです」
「でしょ? みなさんも以前はああだったんですよ」
「やだぁ、恥ずかしい!」

こんなのは些細なことかもしれません。でも、実はその「気づき」が重要なんです。そのことがわかっただけでも彼女たちはまだまだ成長する余地があるから。それに気づかないと周囲に迷惑をかけるだけの自己満足歌い手に留まってしまいます。

意外に思えるかもしれませんが、声楽の先生でもあまりこのことを指摘しないらしい。指摘するとしても感情表現のことぐらいとか。それじゃあ生徒も上達しないわなあ。何事も基礎を疎かにしたらアカンのです!
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