武士の献立(2013年 映画)

2017-06-06 00:00:44 | 映画・演劇・Video
加賀は日本を代表する郷土料理を生んだ藩である。映画の話ではないが、世界三大料理とは中国、フランス、タイを指すそうで、いずれも王国であり裕福だった。フランス料理の元になるロシア料理も同様。インドも料理はうまい。

日本料理は多様性では負けないが、多くは加工度が低いのが特徴で、韓国では「日本が料理のまねをした」と批判すら行う。事実誤認だが。

料理が上手いというのは、経済的に余裕があることと、封建制が確立していることが必須だ。英国のように民主主義の国では料理はまずい。なにしろ主婦が料理を作るのでは、次々に一の膳、二の膳、三の膳というように順番に出てくることはない。専門のコックがいるからキング(大名)に御馳走を届ける必要があり、そのために料理が発達する。

そして加賀料理という絢爛豪華で時に金箔まで使われるという独特の味が生まれた。

bushikon


その加賀藩の料理番のことを「包丁侍」と揶揄して読んでいた時代のこと。西田敏行演じる老包丁侍ができの悪い跡継ぎ息子(高良健吾)の妻に料理上手の出戻り娘(上戸彩)を選んだ。

どうも高良健吾が出演する役は、ブチ切れることが多く、本作でも藩主(前田家)暗殺計画に加わろうとするのだが、上戸彩が二本差しを隠したため、襲撃に遅刻(しかも木刀持参)したため、発覚を免れる。(共謀罪上はどうなるのだろう。襲撃に遅刻して何もできずにすごすごと逃げ帰る場合)

しかし、そういうごたごたについて幕府は加賀藩の弱体化(あるいは取り潰し)を考えるが、幕府からの使者などを含む大宴会を開くことで幕府の嫌疑は晴れる。

その大宴会の素材をさがしに夫妻は奥能登地方を散策するのだが、そこがまたいい。

能登は加賀藩にとっては奥座敷のようなもので、開発されないままの素朴な海陸が存在していた。海岸のシーンは、なんとも美しい。(奥能登いきたし)

そして、西田敏行と高良健吾はその後、加賀藩の公式料理だけではなく町人のレシピまで集約した加賀料理全集を書き上げる。それがあるからこそ加賀料理が輝いているのかもしれない。

原作がないのに、古い資料を探して脚本を書いた方々に感謝。


同じように、安定していた藩には、それなりに大なり小なりのストーリーがあるのだろう。発掘してみたらどうだろう。古文書解読班、郷土史研究班、歴史小説作成班とか。問題は、郷土史研究班の頑固さかな。誰も顧みたことがないような小ストーリーの発掘がいいのかもしれない。