健康食品メーカーの研究所

2017-06-29 00:00:18 | 市民A
先月から、ヤクルトの各種製品を試していたのは、同社の中央研究所を見学させていただくためだった。同社のCSR活動の一つとしての機会を得ることになったからだった。

場所は都内の中央高速インターの近くで、周囲は水田などがあり田植え直後といったところで、地理的には秘密的だが、特に建物に到着するまでに秘密は何もないし、白色を基調とした何棟も大きな建物が並んでいる。

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企業グループが扱っているのは、ヤクルトを中心とした食品、抗がん剤を中心とした医薬品、化粧品ということだそうだ。

ユーザー(市場)の方からみると、どれくらいの人がヤクルトを飲用しているか、見えにくいのだが、思っていたよりも多くの本数だった。日本国内では毎日890万本。中国では580万本、インドネシアは500万本、韓国360万本、メキシコ360万本など海外37ヵ国総合計で、3500万本だそうだ。その多くを担うのがヤクルトレディで国内で35,600人。海外でも米国と欧州にはいないそうだが他の国は日本と同じような体制でヤクルトレディが45,800人いるそうだ。合計80,000人。

今、世界の多くの会社は、1.企業理念、2.事業戦略、3.中期経営計画、4.事業部門ごとの個別戦術、のように企業活動を行っているのだが、同社は企業理念の基として、0.シロタイズムというのがあるそうだ。1930年に創業者代田稔博士の発見した乳酸菌シロタ株を原点として「予防医学・健腸長寿・誰もが手に入れられる価格」の3点がシロタイズムだそうだ。

イズムというのは長寿企業にとって「風土」となりかねないやっかいなものなのだが、このイズムは「かなり具体的」であることが風化を免れている原因なのだろう。「美しい日本」とか「自由と民主主義」というようなものではない。特に3点目の誰もが手に入れられる価格ということが、あの小さな容器の意味だったのだろうと感じた。理論的には、乳酸菌と乳飲料の混合液がヤクルトなのだから、乳飲料分を増量して高く売ることだってできるわけだ(高いと売れないかもしれないが)。

それで、当日の見学者は二班にわかれ、建物内の「代田記念館」と「研究棟」を交替で見学することになる。なにしろ建物の内側はどこも純白の壁で、それだけで緊張する。なにしろ自分は黴菌だらけなのだから、歩くだけで汚染物質を撒き散らしているような気がする(メンタルヘルス的にいうと、白色と木目の組み合わせがストレスにはいいのだが)。

代田記念館は文字通り代田稔博士(創業者)の個人史から始まり、会社の前史、そして戦後、現代と徐々に拡大を続けている社業の紹介になっている。個人史をながめていて気付いたのは東北大学に在籍した期間が、私の祖父の同大在籍とかぶっていること。かたやヤクルト3500万本、かたや教師道転々の末、獣医学部新設で話題の大学を退官し数学の本を残した。

それで、シロタ株というのは乳酸菌の中でも胃酸や胆汁でも死滅しないで腸内まで届く株だそうで、主に小腸で有効だそうだ。一方、同社でも扱っている乳酸菌には大腸で有効なビフィジス菌もあれば胃のピロリ菌を抑制するものもあるそうだ。

そして研究棟に行くのだが、もちろん研究室内には入らないので、よくわからないのだが、菌自体の研究と菌と人体の関係の研究があるように思った。菌と人体の研究というのは早い話が腸の中を見るわけにはいかないので、便を分析することのようだ。高速で分析できる仕組みが出来上がっているようだ。

この研究棟の感じと代田記念館の情報をつなげて考えると、もしかしたら代田博士は、自分の大腸の菌を毎日顕微鏡で観察しながら丈夫な乳酸菌を探していたのではないかと考え至ったのだが真偽は不明だ(いまさら聞けないし)。

そして、今、同社が推進している事業が、ヤクルトレディによる高齢者の安否確認と防犯協力だそうだ。多くの自治体と契約しているそうだ。いかにも事業の相似性があり範囲の経済が有効のように思えるのだが、安否見逃しの場合の責任は巨大なような気がする。少し事業リスクを感じるところだ。

それと、ヤクルトの味。創業以来、原料は変わっても味は変わっていないそうだ。私にとっては少し甘味がキツイ。全然違う味でも一向にかまわないのだが、日本酒も同じだが、甘い方が好まれる時代に回帰しつつあると思うので、これでいいのだろう。ミルミルは含有されるニンジンジュースの味が個人的には気になってしまう。カレーライスのニンジンなら食べないでもすむのだが、・・