にしんそば(元祖店ではないが)

2017-06-16 00:00:49 | あじ
にしんそばは京都を代表する食べ物だが、平安時代からの食べ物ではない。明治時代からのようだ。それでも元祖の松葉で初めて供されたのは135年前である。京都の歴史の十分の一の長さだ。

この松葉というのは、四条にある南座(劇場)にあるそうで、芝居の幕間とかに食べたのだろうか。今回は四条方面には行かなかったので、京都駅の近くにある「近鉄みやこみち」という飲食店街の中に二店舗ある蕎麦店のうち一店。


注文して、待つことしばしで、登場。

nishin


基本的ににしんそばは身欠き鰊の甘露煮を蕎麦の上に乗せ、あとは九条ネギの刻みである。汁は薄口の醤油に昆布だしが用いられる。

この店のにしんそばに対し、元祖の松葉の方は、ネット上で見る限り、もっと汁が透明に近く、しかしネギは使われていない。値段は100円高い。

思うに、身欠き鰊はかなり味が濃い。うす口醤油の汁ではアクセントがないからちょうどいい選択だったのだろうか。しかし、関西ではきつねうどんのきつねだって薄口である。どうもにしんそばは関西風ではないような味と思うが、本当に京都で生まれたのかは個人的には信じ切ってはいない。

ところで、鰊だが、生だと骨が多い。骨は細く、また緻密なので喉にかかりやすい。一夜干しにして塩焼きにすると独特の味がたまらないが、小骨は硬くなり、場合によってのどに刺さるとけがをする。一方、身欠き鰊は骨まで長時間煮るので、もはや敵ではない。

南座で身欠き鰊が蕎麦のトッピングに選ばれたのは、役者や観客が骨を喉に刺して舞台を台無しにすることがないようにという配慮だったのだろう。


ところで、鰊の英語は herring (へリング)という。これに骨(bone)を合体させたherringbone はヘリンボンといってスーツなどの生地の織り方で、最高級の服地である。日本語ではにしん織とはいわず杉綾織と呼ばれる。(にしん織が転用して西陣織になった、ということはないから)