東名バス事故の考察(感想)

2017-06-20 00:00:15 | 市民A
6月10日朝、新城市の東名高速で発生した観光バスと対向車との衝突についていくつか思いついたことをランダムに書いてみる。

まず、車線を飛び出した医師のクルマ。修理中の代車であることは報道されているが、車種はマツダのデミオ。予想外のクルマだった。マツダのベーシックカーでエンジンは1300CCと1500CCがあるようだ。高速道路を毎日通勤するにはふさわしくない車種である。

デミオを代車にするということは、元々はたとえばマツダのCX-5とか大きな車に乗っていたのだろうか。ベーシックカーでも130キロ出すことは可能だが、実際には100キロぐらいでエンジン音が大きくなって、いかにも不安だし、そもそも代車のコンディションについて医師が自信を持っていたことはないだろうから、速度はほぼ制限速度の100キロ前後だったのだろう。ハンドルの遊びとか車の使用ユーザーによって異なるだろうが、60歳代のドライバーなら、数十年前の安全装置があまりなかった時代から運転しているだろうから、無茶なハンドル操作が癖になっていたとも思えない。

(個人的には、偶然かもしれないが修理の代車として今までに使った車は、ほとんど整備不良だった。同じく偶然だろうが、レンタカーで旧型デミオに乗ったことがあったが、その時は直進性が大問題だった。)

テレビで画像を確認したところ、左側からの合流地点から先がやや右に曲がるのだが、側道と走行車線の間の合流地点の点線の白色塗装が薄くなって見えにくくなっているように感じた、曲がらずに直進したのだろうか。ただ、毎日走っている道なので考えにくい。まず左側のガードレールにぶつかったところが、説明しにくい。合流地点は、最も神経を使う場所なのだから、居眠りしていたとも思えない。(合流車両とぶつかりそうになり、アクセルを踏んで先に行こうとしていた場合は、観光バス側からの撮影映像や高速道路上のNシステムで車両が特定されるだろう。)


次にバス側だが、車種は報道されていないが、いすゞのGALAという車種で、様々な安全装置が付いていて、後で思えばこの車種であったから被害が抑えられたということなのだろう。

まず、言われているボディのフレーム構造だが、これは衝突というよりも横転した時につぶれないようにという設計だそうだ。次に、運転席とフロントガラスの間に生存空間があり、エアバッグだけではなくハンドルは衝撃吸収材でできていたり、緊急補助ブレーキが作動する場合は、後続車に点滅ランプで知らせるようになっていて追突防止に配慮されている。

シートベルトは補助席まで含め全席とも腰の周りだけではなく乗用車と同じように上半身も守れるタイプになっている。

その他にもレーダーを使った衝突軽減装置(自動ブレーキ)が装備されているが、本件で作動したかどうかは不明。

運行会社が、早期に画像公開したのは、マスコミから運転手の居眠りの嫌疑をかけられたからだそうで、公開したことを警察から注意されたということまで公開している。多くの運送会社は警察やマスコミに不信を感じているのだろう。警察からすれば、事故のストーリーを書く上で、公開画像と矛盾できなくなったということが不愉快なのだろう。

そして、画像から見えることは、運転士が緊急ブレーキを左手で作動させ、わずかに左にハンドルを切って、フロントガラスではなく窓枠のフレームでクルマの衝撃を受けたのが見える。偶然か故意かはよくわからないが、バスを救って、乗用車が破壊された。

こういう緊急時の運転まではマニュアルがないのだろうが、以前、海運会社にいたときに聞いた話を思い出す。

海上衝突予防法といって、船舶同士の衝突回避にはルールがあり、向かい合わせになったときは、両船とも右に舵を切ってすれ違うことになっている。また斜めや直角になっている場合は相手を右手に見る船舶が右に舵を切り、もう一方は直進保持する。

事態がこれで済めば問題ないが、実際には、衝突時の位置関係とか複雑になる。そういう場合は、(逆に)左に切ってもいいとなっている。

右に舵を切ったら、相手も法令とは逆に同じ方に曲がることがある。2隻だけでなく3隻目が右側を並走していると、右に曲がれない場合もある。そういう事態にならないようにあらかじめ注意しなければならないが、実際、そういう時にはなんとかしなければならないわけだ。

そして、特にタンカーのように危険物搭載船には、もっと重要なことがある。無防備な側面に、相手船が突っ込むと、大惨事になる。爆発炎上と海上汚染、たぶん沈没。そのため、多くの船員は裏マニュアルを知っている。先輩船員が後輩に伝承しているのだろうが、こういうこと。

横腹に突っ込まれないように、船首(あたまの部分)で相手船の船首にぶつかれ、ということ。実際に、両船の船首がつぶれてしまうこともあるが、被害は最小限に食い止められるわけだ。船首の部分は、浮力を得るために倉庫とかに使われていて、通常は船員もいないし、貨物槽(石油タンク)もないので、派手に壊れるものの被害が少ない。

もちろん、安全航海が基本なので、「衝突の仕方」などが明文化されることはないのだが、知る人は知り、知らない人は知らないということになる。暗黙知が形式知になりえない部分とも言える。