果たして、「築地」はブランドなのか

2017-06-21 00:00:12 | 市民A
ついに中央市場が豊洲に移転することが決まった。といっても築地ブランドを守るために築地を再開発するが、詳細は未定ということになった。

問題を片付けたら次の問題が発生するという構造だ。

都民じゃないので、まるで客観的に考えるのだが、基本的に「築地」はブランドなのだろうか。

ブランドの価値というのは、基本的にブランドによる付加価値とその付加価値を維持向上させる努力が必要になる。単に市場があったから築地という名前であるだけなら、一番簡単なのは、豊洲の新市場の場所である台東区豊洲6丁目を築地とか築地市場とか改名すればいいだけだ。さいわい豊洲は6丁目までで7丁目はないので、6丁目がなくなっても誰も困らない。

古すぎる話だが、江戸幕府公認の売春タウンだった吉原が火事で焼けたあと、現在の吉原に移った時は、最初は新吉原と呼ばれていたが、いつの間に吉原となった。

つまりブランドを守るなら、移った以上はそこでベストを尽くせばいいだけだ。築地にいるだけで「築地○○」と名乗っている店舗も多いが、これらは築地にあるというだけで名称ただ乗り型ではないだろうか。もっとも築地場外の店舗は、おそらく豊洲に行くか廃業するかなのだろうが、移ったところで「築地」を出発点にしているなら、築地を名乗ればいいのだろう。むしろ差別化できるのはこれからではないだろうか。神戸の会社なのに丸亀製麺といううどんチェーンすらある時代だ。

ただ、十歩くらい譲って、観光市場というのがある。また庶民が直接買える市場という考え方もある。が、残念ながら築地にしても都民の普通の生活エリアからはかなり遠いわけで、あとは、観光市場ということになる。といっても現状の客は外国人ばかりなのだから、生魚を買って都内のホテルに持ち帰るとか、氷詰めして中国の内陸の自宅に送ったりするわけではなく、マグロの解体をみたり、海鮮丼を食べたりということ。札幌、函館、京都、金沢などはまさしく観光用の市場と、普通の中央市場があるが、築地の場合は外国人ばかりというのが制約だろう。

あとは築地を小型、あるいは特殊市場にするという考え方がある。たとえば下関には、「唐戸市場」という有名な市場があるが、一方、フグだけは唐戸の支所である「南風泊(はえどまり)」という離れた場所で取引される。

同じように築地に小市場を作って、「江戸前高級魚介」だけを扱うということは原理的には考えられるのだが、そもそも豊洲一ヶ所だって十分にできそうなものを高級魚と低級魚に分けて付加価値確保を図ることが果たして公営施設のあるべき姿なのかというところに突き当たる。そもそも市場というのは物流機能を集約させて輸送費を抑えるために発展したもので、庶民に低廉な物価を保証するためにある。

むしろ差別化するなら私設の市場として、高級で、市場使用料もある程度の額に設定し、その対価として豊洲よりも大きな満足を創出できる人たちだけのマーケットにすればいいのかもしれない。