地図から消えていた島の「ウサギ」

2014-03-04 00:00:32 | 市民A
「閉鎖都市」という言葉がある。軍事上の都合で地図に書かれない都市のことであり、その多くは核兵器開発に関係がある。多くは旧ソ連関係であるが、アメリカにもあった。そして日本にも地図に書かれていない島があった・・

所用で、日比谷から銀座方面に向かって歩くことがあり、都心を東西に貫く晴海通りの下にある長いトンネルを歩く。このトンネルのことを知っている人は少ないだろうが、日比谷公園から東銀座までつながっている。知る人ぞ知る。まさに地図になかった島への入口のような場所だ。村上春樹氏に見つけられると大変だ(知っているだろうが)。


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そのトンネルには商店はない。ただのトンネルなのだが、トンネルの長い壁面を利用したギャラリーがある。ウサギの写真が続いていた。どうもウサギの島の写真らしい。ただ、説明を流し読むと、「ウサギの繁殖」系の記載の他に、「地図から消された」とか「毒ガス」といった不気味な文字列を読むことができる。忘れない様に画像キャッチをして、帰宅後調べると大変な話だった。

毒ガス工場の島。実際の島名は大久野島。

場所は広島県の中央付近。呉と三原の間にある忠海(ただのうみ)という駅の近くから船に乗る。沖合にある周囲4キロの小島だが、れっきとして住民はいる。日露戦争の時に日本が攻撃された時のため瀬戸内海にも要塞をつくっていたのだが、そういう島だった(海軍基地呉よりも東側なのだから、ここに要塞作っても仕方ないような気がするが)。その後、毒ガス工場となり、生産したガスは主に中国大陸に運んで行ったようだ。その後は知らない。

そして、戦後。ヒ素だらけのこの島に住みついたのは、なんとウサギ。このウサギがどこから来たのかはいまだに謎だそうだ。戦争中に実験用に連れてこられた生き残りなのか、戦後、外から連れてきたものか。いずれにしても体にやさしくない島でそうたくさん草が生えているわけでもないのにウサギだらけになった。

そして、今、観光化が始まるということらしい。毒ガスの博物館もあるそうだ。ウサギの写真はいくらでも撮影できるのだろうか。

そして、よく考えると仮寓を構えている倉敷市からは2時間半ほどで島に渡れることに気付く。瀬戸内海なので、そう寒いこともないだろう。

しかし、一つ問題があるわけだ。自分の話だが、生後1歳ごろの話だが、ウサギに指をかまれて指先が落ちかけたことがあるそうだ。今でも大きな傷があり、年に何回か鋭い痛みに襲われることがある。要するにウサギが怖いわけだ。

怖いものが二つ。ウサギの前歯と毒ガスの亡霊。トンネルから出発して地図になかった島に行こうとする自分が怖い。