幕末史(半藤一利著)

2012-12-04 00:00:53 | 書評
この本は、実に口語体で書かれているのである。というのも慶応大学でのセミナーで著者がしゃべったことが活字になったからなのだが、こんな言い方だ。徳川慶喜を将軍に推す勢力と徳川慶福を推す勢力が拮抗していた頃のことなどを、こうやって書く。

慶喜か慶福か、開国か攘夷か、この四つが入り乱れてしばし政局を混迷させ筋道をわからなくします。ガタガタ揉める裏で動くのはお金、そこに乗っかるのは野心的な公家さんたち。このへんから、山ほどお金を懐に入れた公家さんたちが、ああでもないこうでもないと口出ししはじめます。

要するに幕府が京都の公家対策で大金をばらまいて工作活動をした結果、京都の世論がカネで右や左に動きまわっていたということを言っているわけだ。

bakumatu


結構、幕末史というのは戦国時代と並んで、歴史上、人気のある期間であるのだが、有名な事件は多いのだが、わかりにくいのは、幕末史が始まった頃に登場人物が思い描いていたことと、まったく違うところで終結するのだが、どうして尊王攘夷とか言っていた人たちが、尊王とは言えないような方法で天皇を利用したり、外国かぶれみたいに帝国主義を始めるに至ったのか、その歴史的な必然性がはっきりわからないわけだ。

本書は幕末をペリー来航から西郷隆盛の死までの期間として、その間に起きた各種事件のつなぎの部分を詳しく書いている。で、問題の尊王攘夷をずっと唱えてきた水戸藩があっさり薩長に見切られたことについては、薩長も公家も「外国のこと」をまったく知らないまま、条約反対!と唱えていたようだ。それだからこそ、あっさりと攘夷から開国に宗旨替えできたのだ。

まあ、このあたりは、現在のTPP賛否論につながることでもある、「第二の開国」という表現もかなり正しいと言えるだろう。

で、幕末人物列伝と現在政治家列伝をシンクロさせてみると、

 大塩平八郎・・・河村たかし 一暴れして、滅亡。
 徳川斉昭・・・石原慎太郎 硬骨おやじ。攘夷論。いずれジャマポイとなる。
 岩倉具視・・・ハッシー 邪魔になったら水戸を捨てる予定。黒幕。
 井伊直弼・・・小泉純一郎 古いタイプの人間だが、強引に新自由主義(開国?)に突き進む。
 堀田正睦・・・ノダッチ 井伊直弼の小型版、歴史上は井伊直弼より前。国論まとめられず大混乱に。
 ペリー・・・・TPP
 坂本竜馬・・・不在
 西郷隆盛・・・石破茂。押しが強く、地方票が支え。
 大久保利通・・・アベッチ。凡庸こそすべて。
 伊藤博文・・・未定
 島津斉彬・・・小沢一郎 時代からはぐれた。
 勝海舟・・・鳩ポ 何度も引退する。
 徳川慶喜・・・石原伸晃 優柔不断を代表するような人格。言うことがコロコロ。
         なお、2013年度のNHK大河ドラマで慶喜を演じるのは、石原良純の方。

やはりキャストがまとまらないのは、幕末ではなく、戦国時代なのかな。小泉=北条早雲とか。まだ斎藤道三が退治された位のところかな。