笹倉鉄平展

2011-08-29 00:00:42 | 美術館・博物館・工芸品
teppei3東急線沿線の某高級住宅地にある百貨店で笹倉鉄平展が開かれていた。

三十年ほど前に開発された場所で、当時から年収3000万円以上の方々を中心に分譲されていた。「限りなくブルー」というような題名の小説を限りなく売った小説家先生とか、盲目のピアニストの御実家の産婦人科医とかあったような気がする。

で、百貨店のギャラリーには、かなりの数の鉄平作品が並んでいるが、その大部分には、題の他に6ケタから7ケタの数字が小さく書き込まれている。そう、それは即金価格なのである。だから、展覧会というよりも展示販売会といったところである。

teppei2一枚の作品に、「売却済」シールが何枚もついている場合があるが、それは、この作品群がいわゆる版画類であるからだ。といってもそうは見えないところが現代的なのだろう。

ヨーロッパ各地の風景を題材にし、写実的であるとともに美しい精神に特化している。あくまでも描かれる街は美しく、街の裏側に潜む人間の怨念とかは省略される。

で、こういう純粋スタイルの画風に到達するというのも、ちょっとすごいなと思わないでもない。

teppei1ただ、美しい絵が好まれて買われているかというと、実際にはちょっと違うなという感じがしていて、「売約済」シールが集まっているのは、どちらかというと、心象的な題材を取り上げたものが多いように思う。心の不安や、未来の社会へのぼんやりとした不確実性というのが周辺住民(=高額所有者)の心にも芽生えているのだろうか。