シビリアン・コントロールは?

2008-07-14 09:00:00 | 市民A
1ヶ月前だが、6月10日に、魚釣島周辺で始まった日台間のこぜりあいは、若干の不安感を感じる状況である。

その後の報道の一部(SANKEI)から。


尖閣諸島事故:「開戦も排除しない」 議会答弁で台湾首相
【台北・庄司哲也】沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島(台湾名・釣魚台)付近の日本領海で10日、台湾の遊漁船が日本の巡視船と接触し沈没した事故をめぐり、台湾の劉兆玄・行政院長(首相)は13日、日台間の領有権争いに関する議会答弁で「最後の手段として開戦も排除しない」と発言した。

立法院(国会)は12日、尖閣諸島周辺への軍艦派遣の要請書を国防部(国防省)に提出した。台湾で対日抗議の声が高まっており、馬英九総統も尖閣諸島の領有権問題で強い姿勢を示さざるを得ない。


その後、保釣船(釣り船ではない。保=防衛、釣=尖閣諸島)やら、海洋調査船やら台湾側の挑発が続いている。

まあ、国境紛争で実効支配されている側は、とりあえず、問題の所在を明らかにして国際問題化する、というのが常道なので、まともに取り合ってはいけないのだろう。(逆のパターンが竹島問題)

しかし、今回の騒ぎの最初のできごと、つまり「遊漁船の沈没」に戻って考えると、かなり日本側にも問題のある対応だったのではないか、と考えられる。


領海警備中の巡視船こしき(鹿児島海上保安部所属)と台湾遊漁船の連合号(乗組員3人、乗客13人)が接触、連合号は約1時間後に沈没した。救命いかだに乗り移った16人全員をこしきが救助、うち船長が顔などに擦り傷を負った。(中日新聞)


何しろ、相手は「釣り船」である。民間人。同様の事件では、1983年9月1日、大韓航空機がサハリン上空で撃墜(269名死亡、内日本人28名)された事件がある。当時の韓国や日本の戦力でソ連に宣戦布告するわけにはいかなかっただろうが、ソ連は国際世論を敵にまわした。

さらに第一次大戦に米国が参戦したきっかけが、ドイツ軍による客船ルシタニア号撃沈(死者1,198名、内米国人128名)であった。民間人が犠牲になった場合、開戦世論が高まるか、あるいは開戦世論が高まっている場合、起爆剤になる。

遊漁船はプラスティックだったのか木造船だったかわからないが、鋼鉄製の護衛艦と体当たりしたら、バラバラになるのは自明のこと。飛行機ではなく、沈没まで1時間あったため、犠牲者がなかったものの、あたりどころが悪ければ、一瞬にして海中に没っしてしまう。

そこで考えなければならないのは、当事者が防衛省ではなく国土交通省の外庁である海上保安庁ということである。世界の戦争を見ると、その開戦というのは結構偶発的な事件から起こっている。国境の一発の銃弾とかだ(もちろん第二次大戦のドイツのように、一気に大軍を動かした例もある)。



そして、現代の日本を考えると、一応、シビリアンコントロールになっているとされる防衛省の正規軍は、領空侵犯とかミサイル防衛網とかハイテク系になっているわけだ。もちろん、巨大陸軍を終結させて日本本土に上陸させようというのなら陸上自衛隊が出動するわけだが、現実的には、国境の島とかで戦闘スタートになる可能性が高いわけだ。日米安保がある以上、日本全土制覇は無理だから、とりあえず一島だけからはじめて・・とか。

そうなると、海上保安庁が対処することになるのだが、では、防衛省と同じようにコントロールできるか、ということになる。現場の暴走とか深追いとか、政府中枢からの的確な意思疎通が現場に流れているか。ここにかかっているのだが、・・・。

例えば、米国には同様の組織で沿岸警備隊がある。しかし、この組織は平時は軍から独立しているが、戦争が始まると軍に組み込まれることになっている。指揮権の一本化である。しかも、考えてみれば、米国本土に海軍を送って、正面攻撃しようと本気になった国は、久しく現れていない。一方、日本近海は「海のバルカン半島」といった領土問題危険地帯でもあるわけだ。日本近海の領海、接続水域、排他的経済水域を眺めれば、太平洋側のロシア、韓国、中国、台湾あたりは、日本を太平洋への出入口に居座る「銭湯の番台」みたいに思っているだろう。「奪えなくても、島ごと爆破して消してしまおう」とか???

さらに、正規軍でない組織というのは、えてして好戦的なのである。前述の対韓航空機撃墜事件でも、ソ連空軍ではなく、ソ連防空軍の迎撃戦闘機が攻撃を実行している。

国家公務員削減の波をかぶらないように、『デモンストレーション行為』として体当たりした、とは思いたくないのだが、それでは海の関東軍だ・・