ウナ丼の危機(2)

2008-07-25 00:00:44 | あじ
うなぎ屋に無造作におかれた雑誌「うなぎ百撰」。ページをめくると、特集として、「うなぎシンポジウム開催」という6ページの記事があった。去る6月2日、東京鰻蒲焼商組合主催により、初の「うなぎシンポジウム」が開催されたそうだ。参加は、うなぎ店主、生産者、問屋(流通)、輸入団体。そして消費者代表ということだ。話題は、うなぎ相場、産地偽装、シラス資源保護、といった範囲である。まだマルハニチロ子会社による産地偽装は表面化する前だが、6月初めの段階で、かなり匂っていたようだ。



まず、産地問題に関係があるのだが、既に東アジア全体が一つのエリアになっているそうだ。シラスの減少は、地域全体に影響するし、特に、日本、台湾、中国はすべて連動性があるそうだ。日本国内で誤った報道がなされているのは、台湾が日本向けのシラスの輸出を禁止した件だが、発端は台湾側が輸出量を拡大しようと日本に要望したのに対し、日本がゼロ回答したための報復措置だったそうで、香港経由では輸入可能だったそうだ。(なぜ、日本がシラスの輸入拡大を拒んだのかはよくわからない。)


まず、生産量が減少している原因としては、シラス問題がある。うなぎの養殖には天然のシラスが必要で、そのシラスは川に上がってきたものを網ですくっている。では、シラスはどこからくるのかというのは、まだ特定できていないのだが、元々川にいる鰻が、産卵のためにマリアナ海溝のようなところまで泳ぎ産卵しているということらしい。

現象として、シラスが減り、うなぎの養殖池が減り、うなぎが減るという大元の原因は、川などで天然ウナギを捕獲し、高級店で「天然ウナギあります」といったことにあるわけで、このシンポジウムでは、全員一致で、「天然ウナギの捕獲禁止」を訴えている。

そして、産地偽装問題だが、この6月の段階では、仙台で、台湾産を焼津産と偽装する事件が発覚していたそうだ。実際には、日本は輸入品が8割だそうで、従来は、中国産はスーパー筋が加工用に優先的に使っていたものの、物価高騰で加工費が上昇し、スーパーが価格転嫁困難と買い付け量を落としたため、活鰻市場へ流れたのではないか、と分析していた。

また、鰻屋をデパートなどに出店している場合、デパート全体のイメージが悪くなるので、国産が好ましいが中国産なら中国産と表示してほしい、と言われているそうだ。

また、問屋の方でも、特別に申し出があれば、どの池からいつ出荷したか(トレーザビリティ)証明することは可能、ということだそうだ。つまり、すでに今年は、産地偽装に対して、業界中が厳戒態勢をとっているのにも拘らず、うかうかと中国産を一色ウナギと偽装したため、発覚したのだろう。

そして、今、実は一部の筋では、台湾ウナギが人気殺到らしい。検査体制は日本以上で、味もむらがない。反面、いまだに「台湾ウナギ」という表示はみたことがないそうで、おそらくは・・・。逆に「台湾うなぎ」というブランドを確立すべきではないか、と提言されている。

さらに、今後の東アジアの需要動向だが、すでに台湾は日本と同じ程度に食べているそうだ。中国の方だが、都会にはかならずうなぎ屋があるそうだが、今後、増えるのかどうかは、不明とのこと。要するに、既に食べようとすれば食べられる食品なのだから、今後、需要が増えるかどうか、なんともいえないわけだ。

そして、このシンポジウムだが、最後に「全国鰻蒲焼商組合連合会」という組織を発足させて閉会になったようだ。値上げカルテルみたいな予感も漂うが、もともとうな丼(うな重)ほど、店によって値段が異なるものも少ない。なかなか、前に進まないのではないだろうか。

理事長は、「一人一人が石垣となり、熊本城のように頑丈に、姫路城のようにスマートに難題に対処してまいりましょう」と発言したようだが、「お城ファン」の一人としては、実戦に使われた数少ない城郭の熊本城を例に出すのはどうか、と思ってしまう。好戦的な組織なのだろうか。