無償譲渡かもしれないガス田

2008-06-20 00:00:30 | 市民A
日中両国政府が、南シナ海のガス田共同開発で合意に達し、発表された。日本側が主張している中間線の僅かに外側から大規模埋蔵量を既に吸い上げている白樺ガス田については、日本側の出資を認め、中間線の両サイドにまたがって新たに共同開発エリアを設置しようということである。メディア(朝日)の発表を引用すると、

合意は、(1)白樺を開発する中国企業に日本法人が出資する(2)翌檜(あすなろ)(同・龍井)ガス田の南側の日中中間線をまたぐ海域に共同開発区域を設け、合意した地点で共同開発を行う。東シナ海の排他的経済水域(EEZ)の境界問題は棚上げする。白樺への日本側の出資比率や権益の配分などについては今後詰める。

両国の外交当局は今回の合意を受けて、正式な条約の締結に向けた交渉を始める。双方の世論などが反発する事態もあり得るため、両国が条約を批准して共同開発が実際に動き出すまでにはなお曲折も予想される。翌檜のほか、中間線付近にある「楠(くすのき)」(同・断橋)、「樫(かし)」(同・天外天)の各ガス田の取り扱いは継続協議となった。

09f0df96.jpg微妙の上に微妙な交渉とは思うが、イメージ評価は別として、実際、どういうことになるのかということだが、まず、白樺ガス田について言えば、出資比率が問題になる。既に中国側企業が操業して、生産したガスは中国へ海底パイプラインで送られているのだから、現実的に追加費用が必要ということではない。1%以上49%以内の数字が設定されるだろうが、そこに何か意味があるのかどうか不明である。

しかも、出資金に対するリターンと言えば、利益の分配ということになるが、不明確である。利益とは(売価-コスト)という式になるのだが、例えば中国の石油製品の場合は、あるプライスバンドを国が決めているのだが、今までは、国内原油については原油高騰分を参入せず採掘原価とし、輸入原油についてのみWTIリンクとして加重平均して決定している。同様のことをガス田に当てはめれば、東シナ海のガス価格は採掘原価となってしまい、別の輸入基地に輸入されるLNG(液化天然ガス)のみのアップを認めることになるのではないだろうか。

そうなれば、白樺ガス田や新規ガス田の収益は「ゼロ」ということになる。日本企業がいくら投資しても、日本の国益は、参加企業からの法人税ということなのだから、利益がなければ「ガスが採掘原価で中国本土に送られるだけ」ということになる。

ということは、現実的に中国大陸に送られるガスの数量を、中国側と日本側にシェアし、さらに日本側の取り分には国際取引価格を適用しなければ事業になりえないことになる。しかし、そこまで話が進めば、ガスの所有権問題から、再び領有権問題に議論が戻ってくることが予想されるわけである。


ただし、日中間の大きな政治問題である「ガス田開発」について、日中という世界のエネルギ大国が一気に開発してしまえば、短期間で枯渇ガス田化してしまうのだろうから、政治問題自体が自然消滅するのかもしれない。



もっとも、ガス田から、日本側(九州とか)にパイプラインを敷き、高い価格で日本人ユーザー(つまり国民)に売り、開発利益の40%を法人税として国庫に入れることができないのかと言えば、今度は国内で別の”通せんぼ団体”の問題がおきるのだろう。「サハリン1プロジェクト」でエクソンモービルが日本向けパイプラインをあきらめたのも同じ理由とされる。

が、最近、燃料高で休漁に追い込まれつつあるという状況もあり、国内漁業全滅ということになれば、日本向け海底パイプラインの構想も選択肢になるのかもしれないが・・


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