映画・ラフマニノフは何?

2008-06-04 00:00:51 | 映画・演劇・Video
53bade67.jpgラフマニノフ(1873-1943)ファンには見逃せないはずの映画が東京だけで公開されている。実は、伝記まで読んだファンである。公開から1ヶ月、どうも不評らしい。突如上演中止になりそうな気配もあり、慌てて映画館へ。

そして、不評というのがよくわかった。かなり中途半端な映画だった。

伝記ではラフマニノフの前半生であるロシア時代の活躍が詳しく、1918年に革命から逃れ、米国に亡命した後の記述は少なかったのだが、本映画は主に米国亡命以降の彼の後半生を、ロシア時代の思い出(特に女性関係)とリンクさせるのだが、結構、ややこしい。ライラックの花が、「なぞかけ」になっているようだが、なぞが明確には解けないままになる。さらに、エンドロールの前に出る「この映画は史実と違うところがあります」という断り書きに思わず失笑するのだが、エンドロールは冒頭に入れてほしかった。映画を観ながら、「本当は、違うのに・・・」と思ったこと多数だ。

さらに、困ったことに、ロシア人監督は、ラフマニノフが嫌いみたいだ。思い切って、嫌な男に仕上げている。ピアノの恩師を裏切り、大豪チャイコフスキーをコケにし(あり得ない)、妻を裏切り、亡命後は全米コンサートツアーを嫌だ嫌だとごねて、ディナーの約束はすっぽかす。

かといって、ソヴィエト共産党はコケにし、ハリウッドの俗物性がラフマニノフの才能をだめにしたように描き、そして、異例の短さで96分で終わる。

さらに悪いことに、観客の多くが期待している名曲の数々が、ほんの少ししか登場しない。ラフマニノフ通の意見を二分するピアノ交響曲の2番と3番の「どっちが好きか」という問題は、知らないようだ。ピアノ協奏曲は2番しか流れない。

思うに、実在のラフマニノフの伝記の一部を利用して、独自の芸術を創ろうとしたのだろうか。1947年にラスヴェガスで亡くなった彼の人生は、まだ化石にするには早過ぎる、「遠山の金さん」や「水戸黄門」位、時が経ってからがよかったのではないだろうか。

ところで、この映画の主役、エフゲニー・ツィガノフだが、本物のラフマニノフにそっくりである。そして、顔だけであるが、とあるロシア人に似ている。先ごろ、天皇から上皇に退いた人物、「プッツィー」にである。ただし、プッツィーは体が小さいので、ピアノは弾かずに柔道を習い、KGBに入った。メドヴェージェフはさらに体が小さいので、大統領になれた。どちらも、まだ亡命していない。


さて、映画から離れて、実際のラフマニノフだが、ピアノと作曲という二足の草鞋である。同じタイプは、リストとかバルトークだろうか。一般に、彼の音楽は、「古臭い」「チャイコフスキーもどき」「センチメンタリズム」とか言われていたそうだが、今思えば、多くは当たっていない。クラシック界に作曲家と名の付く人物は多いが、ラフマニノフ系の作曲家は知らない。さらに、ピアニストによって、彼の曲はかなり異なったイメージに仕上がり、かなり好き嫌いに影響するように思っている。個人的にはアシュケナージが特に好きだ。

本エントリを書くにあたって調べていたら、彼自身の音源が残っているそうだ。さらに、レコード化には完璧主義であって、本人の承認なしに音源を公開したとして、レコード会社の移籍までしている。ちょっと探して見ようかと思うが、中途半端にな終わりそうな気もする。

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