余計な恩返し、その後

2008-05-31 00:00:35 | しょうぎ
37b7bbba.jpg「将棋紳士録」という問題の本を古本で持っている。「将棋紳士録問題」と言うのは、この本に関わった棋士、斎藤銀次郎氏が起こした事件のことによるのだが、今回はその話ではない。この本は、昭和50年頃の全国の有段者の氏名と住所が書かれている巨大住所録なのである。まさに、個人情報のかたまり。

昨年、ある引退している九段から、「昔は、あちこちの政治家に免状をもっていったものだ」という話を聞いた。国会議員、県知事で四段とか五段だろうか。確かに、紳士録を見ると、時々、政治家の名前が読み取れる。パラパラとページをめくれば以前住んでいた県の元知事も五段と書かれている。あまり気持ちのいいものではない。無料で配られたものと、実力+免状料で手に入れたものが同列ということだ。

その中に、ある人物の名があった。

X氏。四段である。

ここからは、まったく自伝的になる。

将棋を覚えたのは、10歳の時だが、実際に、パチパチと本格的に指し始めたのは、中学になってから(このあたりで遅れをとっている)。中学の将棋クラブでクラブ活動を始めたわけだ。X氏は、その時のクラブ担当教師。そして四段だった。

それで、将棋の強い先生というのは、一般に頭脳のスマートなタイプが多いのだろうが、このX氏は、逆。結構、乱暴な暴力教師。最近、当時の同級生に聞いたら、X氏に殴られた経験があると言っていた。今でいえば、大問題だが、当時は、そういう話はよくあった。

37b7bbba.jpgさいわい、私にはパンチ浴びの危機は訪れなかったが、たぶん、物理的に相手が実行困難性を感じていたか(パンチ空振りとか逆襲とか)、既に校内の教師間の対立関係に巧みにつけこんで自分の場所を見つけていたりしていたので、より安全だったのだろう。

しかし、四段ともなれば、将棋の方は生徒で敵うものはなく、だいたいが駒落ちを指していた。そして、教師にあるまじく、生徒相手に駒落ちの指し込みなど始めて、3級まで上がった級が6級まで落とされたり。

そして、得意技は「入玉」。ああ嫌だ。たいていの生徒は、飛角落ちなのに入玉されて、ボロボロになる。そして、私はといえば、入玉した王を詰ませるのが好きなのである。当時から詰将棋大好きタイプだったので、大駒のない入玉なんて、問題にしてなく、相入玉でと金の山を作って、盤面が双方のと金で一杯になるようなことをして、何時間でも指して、たいてい勝っていた。わざわざ遠くの駒陰に飛車を打って、後で王を素抜いたこともある。

そして、卒業後、しばらく将棋を指していない時期があって、その間に、ある噂(あくまでも噂)を聞いていた。

X氏、クビになる。」

それも、得意の暴力事件ではなく、破廉恥事件らしい、という噂だった。その手の常として、詳細は闇の中。

ところが、さらに何年かして、社会人になって数年、ある将棋大会の会場で、X氏を見かけることになったのだ。やや、大きな勝負だった。まさかと思ったがトーナメントを両者が勝っていくわけだ。ついに準々決勝で当たる。

問題は、X氏が私のことを覚えているかどうか。たぶん、覚えているはずだ。そして、ついに対戦の場がめぐってきた。嫌だ嫌だ。もちろん、平手戦である。しかし、どうも知らんぷりである。勝負に私情は禁物か。

戦型は、X氏が四間飛車美濃囲いで私が居飛車穴熊という、師弟らしからぬ展開に進むが、こちらが囲う間もなく、猛攻を食らい、早々と自陣の右下に侵入されてしまう。そして抵抗むなしくボロボロと、と金で駒を取られ始める。こちらは、敵陣のすき間に生飛車1枚と持駒は桂1枚と歩たくさん。不本意ながら、奇策を捻り出す。

本局初手に突いたままの7六歩をポンと▲7五歩と差し上げてしまう。放置されれば確実に一手負けだが、余裕の△7五同歩が毒饅頭で、▲7三歩と隙間に打ち込んで、△同金に▲8五桂と7三の地点を桂と歩だけで攻略。自陣に一手スキがかからないのをいいことに、飛車も切って、食いつき成功。我ながら嫌になる逆転勝利となる。勝負の世界では、師匠に勝つのを「恩返し」というらしいが、妙な時に出たものだ。


そして、それから長い長い時間を経て、「将棋紳士録」で、その名前に再開したわけだ。さらに、その横には住所が。

ある主要駅の近くにある住所のことが気になっているうちに時が過ぎ、半年ほど前になるのだが、近くに行ったついでに地図を片手に足を伸ばしてみた。すると、古色漂う木造平屋の戸建があったのだが、門戸は、不動産会社による看板によって封鎖されていた。

管理地

ちょうど、売りに出ていた。

ある予想が頭の中に浮かんできたわけだ。そして、不動産会社に電話で聞いてみたところ、実に、その予想は当たっていたわけだ。


37b7bbba.jpg5月17日出題作の解答。

▲1三香 △1二飛(逆王手) ▲2二角 △同角 ▲2三桂 まで5手詰。

まあ、冗談みたいな問題だが、作るとなると、色々悩むところがある。3三角は銀でもいいかな、とか持ち駒の角も銀にしようか、とか・・・2五銀の代わりはとか、とっかえひっかえしてやっと決める。

動く将棋盤は、こちら


37b7bbba.jpg今週の問題は、入玉図。ある意味、入玉図は、攻め方の駒が成らないとか、一段目の合駒は制限付(歩香桂不可)とか制限条件が多く、解きやすいようにも考えられる。

ヒントは、最終型を見つけること、とか・・

いつものように、最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。





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