ピストンエンジンは永遠か!な?

バイクを中心に話題を紹介します

冷却フィン ②

2006年05月02日 | エンジン

お願い  明日はツーリングのため更新できませんが、明後日は帰りの時間によっては出来るかもしれません。でも人気blogランキングへクリックお願いします。

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

ゴク初期の星型エンジンが冷却に困ってエンジンそのものを回転させたという、いまでは信じられない暦史的事実があります。黎明期の兵器としての航空機は第1次大戦までは、そのものが回転する”ロータリーエンジン”が大活躍したのですが、パワーアップするにつれマッスグ飛ばないモノは次第に廃れ、今では当たり前のフィン形状が考えだされるまで先人の苦労が偲ばれます。

S31_1

空冷シリンダーの断面を図にしたものですが、冷却が行われている状況の温度分布はコンナ感じだと思います。

4サイクルエンジンでは燃焼室に近い上部の温度が高く、2サイクルエンジンではポートのある関係でもっと複雑だと思います。

熱の移動は電気や水の流れにも似ていて、高いところから低いところに移動します。

S32_1

燃焼室で発生した熱はフィンを介して大気中に放散されますが、熱の移動量は電気や水と同じく”通路”の断面積に比例して大きくなります。

つまり、⇔で示すフィンの根元の断面積ですね。ここでフィン付きシリンダーの製造方法の制約が役に立ちます。

現代のほとんどのフィン付きシリンダーは鋳造やダイキャストで製造されるので、型抜きの都合上の形状が制約になります。

”ロータリーエンジン”の時代の技術では薄く長いフィンを鋳造できなかったので、削り込みでフィンを作ったフィン形状のものを埋め込んでいたようです。

1世紀も経つと?

S33_2

ゼネラルモータース(GM)の危機が伝えられていますが、チャールズ・ケタリングの失敗と当時の首脳の覇権争いにより、1世紀近く昔の20世紀初頭にも危機がありました。

チャールズ・ケタリングは、点火方式とセルフスターターの発明により功績も大きく、ハイオクガソリンの発明にも関与しています。

ケタリングの失敗は安価な自動車用空冷エンジンの設計で、打ち抜き銅板をシリンダーの外側に接合しようとしたことによります。前述のように、フィン付きシリンダーの製造方法は鋳造では不可能であったため、当時としては銅板フィンは最善の方法と思えたのでしょう。

コストダウンのための銅板フィンですから、当然銅板は平板であったと考えられるので、図のような形状と思われます。

1世紀も経つとワタシにもケタリングの失敗が解明できます。つまりフィンの根元の断面積が足りなかったのですね。内アールのない形状では”熱の通路”が小さすぎて、如何に熱伝導の良い銅でも、フィンの面積が充分であろうとも、熱の移動量が少なすぎたのでしょう。

熱境界層?

S45

ケタリングの失敗の後にミシガン大学で解析された結果は、(シュラウドの設計が悪く?)冷却風のまわりが悪く冷えなかったとの事ですが、前述の断面積の件はあくまでも現物は見てないワタシの想像!です。

冷却での課題は熱境界層です。

熱境界層の説明によく例えられるのは熱い風呂ですね。熱い風呂に入ってもジキに余り熱く感じなくなってしまいます。単に慣れたのではないと言えるのは、かき混ぜて境界層を除くと又熱く感じる事です。

温度差のある(ココではフィンと大気)の境には双方の平均化された温度の層が形成されてしまい、ここでの目的である冷却の大きな阻害になってしまいます。

つまり、冷却風を当てる事は境界層を有効に取り除くということです。

S46_1

写真は”パンヘッド”のシリンダーヘッドですが、矢印は冷却フィン?です。

タブン潤滑したオイルによる冷却効果を狙ったのでしょうけれど、効果の程は?

スズキの油冷エンジンで苦労したのは、やはり熱境界層だったようで、解決した方法はオイルジェットで境界層を取り除くことでした。

で、結論は・・・。

ハワイ在住のHIDEさんのご質問は「ガラスビースで仕上げたエンジンをペイントしたら冷却性能はどうなるだろう」という事でした。

HIDEさんのエンジンは空冷2サイクルエンジンですから、条件はハーレーのと随分異なります。

自然空冷のアルミシリンダーは熱的に不安定で、スロットル開度と大気温度に大きく左右されますね。

つまり最悪の条件を想定してみると、登り坂を大きなスロットル開度の(大きな負荷で熱量が大きい)状況から、峠を越えて下り坂でスピードが乗ってスロットルを閉じた状態が続くと、(大気温度が低ければ)シリンダーは冷えてすぐに収縮を始めます。

スロットルは閉じられているので燃焼室に供給される混合気の量は少ないですから、ピストンは断熱の状態に近く、ピストンクリアランスは設定値より小さくなります。よって・・・・・・。

2サイクルエンジンはヤマハRZ以来、水冷が主流になりました。そのメリットは数知れませんが、一つには上記のような状況もクリアする可能性が高くなったこともあります。

フィンの形状や断面積を長々と説明した訳は、冷却性能はフィン面積の大きさだけではないので、フィンをペイントしたからといって、それだけで冷却性能が変化するとは限らないという事です。

勿論、確かなことは実験してみないと分かりません!

もしかしたら、フィンの表面にある程度の断熱処理をすることにより、シリンダーの熱的安定度を増す事も可能かもしれません。

予想通り、ピストン流の解析結果はヤクザなものになりましたけれど、ご容赦ください。HIDEさん実験してみて(笑)。


冷却フィン

2006年05月01日 | エンジン

人気blogランキングへ
お願い  お陰様でトップ維持!クリックお願いします。 2位以下は激しい順位入替え中!

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

S26

ハーレーダビッドソンのビッグツインエンジンも時代の流れで、シリンダーヘッドは”ナックル”の鋳鉄製の後は”パン”のアルミニウム製になりました。

内燃機関は燃焼室で発生した熱エネルギーをピストンの運動エネルギーに変換しますが、より大きくするためには熱エネルギーそのものを大きくするか、変換時の効率をアップさせる必要があります。

1936年にデビューしたハーレー初のOHVエンジンが鋳鉄製ヘッドを採用した理由は、時代背景などの他に様々考えられますが、内燃機関は30%もの熱を捨てなければならない宿命を持つために、熱伝導の良いアルミニウム製がやはり常識といえましょう。勿論重さの問題も大きいですが。

シリンダーヘッドより単純な形状のシリンダーは、やはり存在感もヘッドより有りませんけれど、クルマのシリンダーのホトンドはクランクケースと一体になって、今やボンネットを開けても姿を見せない存在です。

ハーレーではショベルヘッドエンジンが1984年まで存在していましたので、メジャーなビッグバイクでは鋳鉄のシリンダーを有していた最後だったでしょう。いえスポーツスターは1985年までシリンダーとヘッドが鋳鉄でした。

冷却フィンの形状

S23_1 Harleydavidson FLH

フィンはシリンダーと一体の鋳造ですから、形状は鋳造方法の制約により、ある程度は決まってしまいます。

つまり外観の特徴の長さと厚さです。

多くの人のモーターサイクルエンジンに対するセンチメントは郷愁的なものが多く、このショベルヘッドエンジンの有機的なデザインは魅力を放っています。

S25_2 1971年 カワサキW1SA

同じく鋳鉄シリンダーですがイギリスからの血を引くカワサキOHVは、ハーレーのソレと技術水準は同等と思われますが、こうして見ると意外とフィンは長いですね。

S21_1 DUCATI M/He

イタリアのアルミダイキャストや鋳造技術は昔から発展してるようで、記憶ではホンダスパーダ250のフレームや、ビューエルのガソリンタンクになっているフレームもイタリア製だったと思います。

しかしDUCATIも合理化で、空冷最後になると思われるこのエンジンは、ベベルのLツインに較べると寂しいものがあります。

S24_1 スズキ GSF1200

スズキの傑作油冷エンジンの末裔となったこのエンジンは、初期型に較べると趣に欠けますが、水を通す水冷と違いシリンダーは空冷ですので飾りではありません。

特徴はピッチが約5mmと他のモノの半分です。その代わりフィンの長さが短いのは技術的制約だったそうです。

S22_2 スズキ グース350

これはピッチも小さくフィンも長いですね。初期の油冷エンジンとの設計年次の違いといえばそれまでですが、10年間の技術の発展のお陰です。

この記事はハワイ在住のHIDEさんのご質問にお応えする長~い前置きです。直接の回答になるかは分かりませんが、ピストン流に考察が続きます。