これは、アメリカの老舗メーカーの製品です。
ピストントップに窪みがあるのはリバースドームと呼ばれ、ハイコンプピストンとは逆ですが、例えばスポーツスター883から1200にボアアップするときに、フラットでも圧縮比が高くなりすぎてしまいますから、このように窪みで調整するわけです。
左側はエボビッグツイン純正のピストン。当然鋳造です。
裏側を見ると、右側の鍛造ピストンと違いが一目で分かります。
大体、こうした説明書が付いてきます。
赤線の部分は、ボーリングとホーニングの作業にはトルクプレートを必ず取り付けろと書いてありますが、車両メーカーのマニュアルにも書いてありますね。
トルクプレートの必要性は拙ブログの記事”シリンダーボア測定””シリンダーボア測定②””シリンダーボア測定③”にも書いてあるので参考にしてください。
赤丸で囲んである数字は推奨ピストンクリアランスです。一般的に鋳造より鍛造ピストンは膨張率が大きいと言われ、そのためにクリアランスは大きく設定されています。
実は今日はココまでが前置きです・・・・。
随分前のことですが、ワタシはこのピストンに一回酷い目にあったことがあります。
その犯人のピストンは残念ながら処分してしまい、実物をお目に掛けられません。
燃焼室を圧縮比調整のために拡大加工しなくて済みますから、施工時間は大したことではないので、比較的低い金額で請け負ったと思います。
サクサクっと作業を終えエンジンを掛けると、いわゆるタペットノイズのような異音がする。
ピストンクリアランスが大きめだから、暖まれば消えるだろうと思うも、消えない・・・。
お客さんには納期を約束してあるので、調子は悪くないし、さほど重大なトラブルに発展するとも思えないから、自然治癒を期待して(するはずはないと思う反面)事情を説明して納めさせてもらう。
何百キロか走った後に、やはりクレーム。
それはそうで、作業前にはしなかった異音がするわけですから。
それから苦闘が始まり、たまたまあった事故車のエンジンから、動弁系の部品を次々に移植して、それでも、どう聞いてもタペットノイズに聞こえる異音は消えない・・・・。
こうなると、事態を解決するのが最優先になりますから、新しいピストンキットを使って事故車のシリンダーをボーリング。組み付けるとウソのように異音はなし。
トラブルのピストンとシリンダーは、見た目も測っても異常はない。
いまだもって納得していない、狐につつまれたようなトラブルでした。
クレーム後の費用はお客さんに請求できないのは当然ですが、パーツメーカーに文句を言ったところで埒はあかないし、いいところで現物交換ですね。
ショップにも、こんなリスクがあることを知っておいてください。