先日、神戸で芝居を觀て以來、芝居を觀たいといふ思ひが強くなつてゐる。
劇評を書くつもりで觀に行つたなかで、さういふこととはまつたく關係なく引きつけられてしまつたのが、表題の『セールスマンの死』である。作者は、御存じアーサーミラー。
アマゾンの内容紹介を引くと、「かつて敏腕セールスマンで鳴らしたウイリー・ローマンも、得意先が引退し、成績が上がらない。帰宅して妻から聞かされるのは、家のローンに保険、車の修理費。前途洋々だった息子も定職につかずこの先どうしたものか。夢に破れて、すべてに行き詰まった男が選んだ道とは…家族・仕事・老いなど現代人が直面する問題に斬新な手法で鋭く迫り、アメリカ演劇に新たな時代を確立、不動の地位を築いたピュリッツァー賞受賞作。 」とある。
私の觀たのは、昴によるもの。確か平成4年(1992年)だつたと思ふ。父親ウィーリー・ローマンは久米明、母親リンダは新村禮子、息子ビフは田中正彦である。何よりリンダの新村禮子が素晴しかつた。雨が降つてくるなか、傘を差しながらしゃがみこむ新村の視線が忘れられない。葬儀の夜、最後の場面である。ああいふ芝居を觀てしまふと、演劇といふものの持つてゐる力を信じざるを得ない。その後、平成8年(1996年)にも觀たが、同じやうな感動があつた。久米明も、新村禮子ももはや舞臺に立つことは叶はないのかもしれない。が、もう一度觀たい作品であり、今は生徒に一度觀せたい芝居でもある。
昴には、次の役者がゐれば、御檢討願ひたい。
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