三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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戦争法と経済的徴兵制

2018年11月01日 | 『会報』
■経済的徴兵制とは
 志願兵制である米国で、貧困層の若者が大学進学や医療保険を手に入れるためなど、「経済的理由でやむなく軍の仕事を選ばざるを得ない状況」をあらわす言葉として日本でも知られるようになってきたのが、経済的徴兵制である。
 経済的徴兵制が機能する仕組みはこうだ。
 まず、戦死、PTSDや隊内のいじめ等過酷な 軍隊ゆえの「労働」条件がある。給与水準が高くないこともあり、わざわざ軍隊に就職するメリットは少ない。いきおい、軍は求人難に陥ることとなり、打開策として、わずかな経済的利益を「アメ」に貧困や社会的劣位に置かれた層をターゲットにするのである。
 志願兵制にもかかわらず、あたかも貧困層に対しては「徴兵制」が実施されているような状況が生じるのは、このためである。
 実際、日本においても自衛官の出身地と貧富とは相関関係が見られ、例えば2007年度における高校新卒者の陸自二士入隊率上位15道県のうち13道県が県民所得下位15位内である。

■軍隊という「職場」
 米国では、退役軍人自殺防止法が2015年に可決した。これは、PTSD等により退役軍人の自殺者が一日平均22人、年8000人以上という状況への対策法 だという。戦死者もさることながら、なんとか無事生き延びても過酷な状況に晒されているのである。
 一方、自衛隊においても、在職中の自殺者が、2001年からのインド洋派遣参加者で27人、2003~09年のイラク派遣参加者で29人 にも上ることが明らかになっている。
 また、平時においても、いじめによる自殺者を出した1999年の護衛艦さわぎり事件(2008年福岡高裁で国の賠償を命じる判決が出され国側が上告を断念し確定)をきっかけに、自衛隊内でのいじめや自殺の多さが明るみになってきた。また、苛烈な訓練によって死亡するリスクや、若年定年制(2・3曹で53才)ゆえに退職後の不安もつきまとう。
 軍隊という「職場」は、まさに国営劣悪企業たる様相を呈しているのである。

■戦争法で高まる戦死のリスク
 海外派兵が実施される以前は、戦死の可能性は皆無に近く、その意味においては「安全・安心」であった。
 しかし、1991年のペルシャ湾派兵を皮切りに、92年にPKO協力法、99年に周辺事態法、21世紀に入ってからは「特措法」でインド洋やイラクに派兵、2015年には戦争法を成立させて集団的自衛権行使をも可能とした。
 派兵の対象・地域は拡大・恒常化し、後方から前線へと危険性も一層高まり、駆け付け警護任務が初めて付与された南スーダンPKOでは自衛隊が駐屯する首都ジュバで大規模戦闘が行われ、宿営地からわずか200mのビルが戦車で攻撃される などした。これまで戦死者こそ出ていないものの、常時緊張を強いられた自衛官のPTSDや自殺が多発する事態となっている。

■戦争法と経済的徴兵制に対決する運動
 戦争法制定後、戦死等のリスクが高い自衛隊の志願者は減少傾向となり、防衛省・自衛隊は、奨学生の拡充や高校へのリクルート活動強化、「インターンシップ」などの対策案を打ち出している。
 また、教育基本法の改悪によって始まった愛国心教育(教科化された道徳等)や、9条改憲による自衛隊明記などによって、入隊への心理的障壁の軽減も狙っている。
 日本政府と日本軍が国内・国外で人びとを殺害し資源を奪ってきた歴史をくりかえさせない日本の民衆運動のありかたが、いま、憲法1~8条を前提とした憲法9条をふくむ護憲運動のなかでも問われている。
                                   小田伸也
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