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三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

「核の「ゴールド・スタンダード」」

2025年04月01日 | 
「The Hankyoreh」 2025-03-31 08:18
■核の「ゴールド・スタンダード」【コラム】
 朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年11月、韓国と米国は新しい原子力協定を結んだ。1972年に両国が「原子力の民間利用に関する政府間協定」を結んでから、43年ぶりに改定案に署名したのだ。当時、韓国政府は以前の協定では不可能だったウラン濃縮の道が開かれたと大々的に広報した。米国との事前協議という問題があったが、ウランを20%未満の水準で濃縮できるようになったためだ。米国は他国のウラン濃縮と核燃料再処理を全面禁止するいわゆる「ゴールド・スタンダード」(gold standard)を新協定では明示しなかった。
 米国は原子力協力に差を設けている。核保有国やすでに濃縮と再処理技術を保有している国に対しては既得権を認めるが、他の国に対しては極めて厳しい基準を適用する。同盟国や戦略的協力国に対しても、事前同意の形で濃縮と再処理を認めるだけだ。技術も協力関係もない国に対しては、濃縮と再処理を一切認めない「ゴールド・スタンダード」を強要する。実際、米国は2009年のアラブ首長国連邦や2013年の台湾との協定でこれを固守した。韓国のウラン濃縮の可能性を認めたのは、それだけ韓国を信頼しているという兆候と言える。
 米国が最近、韓国を核物質の利用と関連し「センシティブ国およびその他指定国家リスト」に加えたことで、波紋が広がっている。エネルギー省傘下の国立研究所に対するセキュリティを強化する過程で規定を整備したという説明から、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の相次ぐ核武装の意志表明が影響を及ぼしたという指摘まで、様々な分析が飛び交っている。一時、韓国に対してゴールド・スタンダードの適用まで留保した米国が、突然「韓国警戒令」を発令したのだから、ただ事ではない。政府はこれを解除するため、総力を傾けると約束しているが、それが実を結ぶかは不透明だ。
 韓国の原子力研究所で2000年ごろにウラン濃縮実験を行った事実が、2004年に国際原子力機関(IAEA)によって確認されたことがある。韓国が核開発を試みているのではないかという疑惑が浮上し、「韓国の核問題」という言葉まで登場した。韓国はIAEAの特別査察を受け、国連安全保障理事会に付託される危機に瀕した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は同年10月、「核の平和的利用に関する4原則」を発表するなど、波紋を鎮めるため腐心した。この波紋は、4年後の2008年、IAEAが年例報告書を通じて、韓国ではすべての核物質が平和的に利用されていると評価したことで一段落した。核に対する国際社会の信頼を回復するのは、このように至難の業だ。

ユ・ガンムン|ハンギョレ統一文化財団常任理事・論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2025-03-30 18:41
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「広島の被爆者7団体「石破首相は『核共有』掲げ、非核3原則を揺るがしてはならない」」

2024年10月20日 | 
「The Hankyoreh」 2024-10-18 11:44
■広島の被爆者7団体「石破首相は『核共有』掲げ、非核3原則を揺るがしてはならない」
【写真】12日、日本の反核団体「日本原水爆被害者団体協議会」(被団協)のノーベル平和賞受賞が決まった後、市民が原爆ドーム前で写真を撮っている/ロイター・聯合ニュース

 広島朝鮮人被爆者協会と韓国原爆被害者対策特別委員会などを含め、広島の7つの被爆者団体が17日、「日本原水爆被害者団体協議会」(被団協)のノーベル平和賞受賞を歓迎する共同声明を発表した。
 朝鮮半島出身の被爆者団体と日本の被爆者団体は声明で、「被爆者たちが『核兵器をなくせ』、『再びヒバクシャを作るな』と訴え続けてきたことについて、(ノルウェーのノーベル委員会が)『肉体的苦痛とつらい記憶を平和の取り組みに生かしたすべての被爆者をたたえたい』と授賞理由でのべられたことを、すべての被爆者とともに喜びたい」と述べた。
 さらに「廃墟から立ち上がった人々が励まし合い、助け合う輪が各地に生まれ、広島県被団協、そして全国組織の日本被団協が結成されたのは、被爆から11年たってから」だとし、「生きるのが精一杯の日々の中、手弁当で活動にまい進した先人たちのことが思い起こされる」と振り返った。
 団体らは、被爆者が社会の偏見や差別にもめげず、被爆者支援とともに核兵器廃絶運動に力を入れてきた国内外の多くの団体や個人の努力が、被団協のノーベル平和賞受賞につながったとし、ともに喜んだ。 また「日が当たらない被爆者を表に押し出して活動を支援し、世界へ広げてきた原水爆禁止運動と、数々の草の根の運動のおかげであることを忘れてはならない」と訴えた。
 特に、2017年に国連総会で採択され、4年後に発効した現在の核兵器禁止条約(TPNW)が、このような草の根の団体から始まった運動の結晶であり、今回のノーベル平和賞を受けた理由だと説明した。団体らは「(被爆者団体が受賞した)もう一つの理由は、ロシアやイスラエルが核兵器で脅しながら戦争を続け、世界が核戦争の危険を打開できずにいること」だとし、「『戦争を止めよ』『核兵器を使うな』という被爆体験に基づく訴え、人類への警鐘にする願いが込められている」と強調した。
 さらに、日本で石破茂首相が「核共有」などを主張していることに対する懸念も示した。団体らは「核保有国は核兵器禁止条約を無視し続けて、『唯一の戦争被爆国』(日本)も核抑止論に追従している」とし、「石破茂新首相は『核共有』まで口にして、非核3原則を揺るがす姿勢を見せている」と指摘した。さらに、「日本が平和外交力を強め、(核兵器禁止)条約に参加し、核保有国を(核廃棄に向けて)誘導する役割を果たさなければ、国際的な栄誉と期待を裏切ることになる」とし、「私たちは残り時間がわずかになったが、命ある限り訴え続ける」として声明を結んだ。
東京/ホン・ソクジェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-10-17 17:36


「The Hankyoreh」 2024-10-16 07:30
■ノーベル平和賞から抜け落ちた「朝鮮人被爆者」…「米国と日本は謝罪すべき」
 日本原水爆被害者団体協議会の受賞について 
 広島県朝鮮人被爆者協議会の会長が心境を明らかに

【写真】1945年8月6日、原子爆弾投下で廃墟となった広島の市街地=韓国原爆被害者協会提供//ハンギョレ新聞社

 「日本も米国も朝鮮人被爆者に一度も謝罪しなかった」。
 15日にハンギョレの電話取材を受けた広島県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジンホ)会長(78)は、今年のノーベル平和賞の受賞団体として「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)が選ばれたことについて、複雑な心境を示した。金会長は「原爆を投下した米国だけが間違っていたのではなく、植民地朝鮮から無数の朝鮮人を連れて行き、最終的に原爆被害を受けさせた日本政府も責任が大きい」として、このように述べた。
 11日にノルウェーのノーベル委員会が日本被団協を今年のノーベル平和賞の受賞団体に選定し、過去70年あまりの間、反核活動を行ってきた同団体に対して、「肉体的な苦しみや痛みを伴う記憶を、平和のための希望と参加に用いることにした生存者を賛えたい」と明らかにした。
 しかし、「苦しむ生存者」として朝鮮人被爆者は言及されなかった。日本の石破茂首相と米国のジョー・バイデン大統領のノーベル平和賞の祝賀メッセージにも、戦争当事者だった日本を除くと最多の被爆者である朝鮮人は言及されなかった。
 2010年に「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会」が出した資料によると、原爆によって被爆した朝鮮人の数は、広島で5万人、長崎で2万人と推定される。死者は約4万人と推定されるが、資料の消失のため正確な被害規模は分からない。

【写真】広島県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖会長=キム・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 このような状況は今回が初めてではない。2016年に米国のバラク・オバマ大統領(当時)は現職の米国大統領として初めて被爆地である広島を訪問し、日本被団協の関係者たちと面会したが、朝鮮半島出身の被爆者は参加できなかった。オバマ大統領は当時、広島平和記念公園の「原爆死没者慰霊碑」に献花したが、同じ方向に位置する「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」には立ち寄っていない。
 韓国人被爆者が日本人被爆者と同じ医療・生活支援を受けられるようになったのも、被爆者と日本の市民団体が数十年間の困難な闘争の末に成し遂げた成果だった。日本政府は1957年に「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」、1968年に「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律」を制定し、医療費と援護手当を被爆者に支給したが、対象を日本国内の居住者に限定し、韓国人を事実上排除した。日本が2つの法律を統合した「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」を改正し、日本国外に居住する被爆者が日本の在外公館を通じて援護手当を申請できるようになったのは、2008年になってからだった。
 しかし、その後も日本と国交が結ばれていない北朝鮮の被爆者は、援護手当の支給対象にすらなっていない。金会長は「北朝鮮でも2008年に調査を終えて、被爆者1900人あまり、生存者380人あまりを確認した」として、「これらの人たちに対する治療と補償は、国籍の問題ではなく人道的な事案」だと強調した。
 広島と長崎で朝鮮人被爆者が多かった理由は、多くの朝鮮人が軍需工場の多かった両都市に、強制動員や徴集によって来ていたためだ。二重・三重の被害を受けた朝鮮人被爆者は、日本の法廷でこれに対する被害補償を要求する訴訟を起こしたが、1965年の韓日請求権協定などをもとに、日本の裁判所は受け入れなかった。
 これらの人たちに残された時間は長くない。特に「被爆第1世代」の生存者はほとんど残っていない。韓国の国家人権委員会は2005年、存命の被爆者の規模を7500人あまりと推算したが、大韓赤十字の統計では、昨年時点では1834人しか残っていなかった。被爆者は加害国の謝罪・補償とともに「核のない未来」を要求している。
 金会長は「日本政府は、犠牲者遺族に後からでも被害を補償し、米国も同様に加害国として必要な措置を取らなければならない」として、「特に日本は核兵器禁止条約(TPNW)に加盟して、原爆被害国かつ戦争加害国として『核のない世界』の先頭に立たなければならない」と訴えた。
 一方、韓国の被爆者2世の患者の集まりである「陜川(ハプチョン)平和の家」などの陜川地域にある韓国人被爆者の諸団体は、今年のノーベル平和賞の受賞者として日本被団協が選ばれたことについて、15日にお祝いの声明を発表した。これらの団体は「現在の韓国では、政府と社会の無関心の中で苦しい生活を送っている被爆者2世・3世の悲惨な生活が続いている」として、「日本はもちろん、世界中の被爆者と市民社会とのコミュニケーションと連帯が緊密になることを希望する」と訴えた。

東京/ホン・ソクジェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-10-15 17:04
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「暮れゆく石炭発電の時代」

2024年10月14日 | 
「The Hankyoreh」 2024-10-14 08:36
■暮れゆく石炭発電の時代【寄稿】

【写真】9月29日(現地時間)、英国ノッティンガムシャー州ラットクリフ・オン・ソア発電所の全景。英国最後の石炭発電所だった同発電所は翌30日に稼動を停止し、英国の石炭発電は142年目にして幕を下ろした=ノッティンガムシャー/AP・聯合ニュース

 英国最後の石炭火力発電所が先月30日に操業を停止した。1882年にロンドンで世界初の石炭火力発電所が稼動してから142年。ウクライナ・ロシア戦争によって欧州のエネルギー需給が容易でない状況でも、英国がこうした勇気ある選択をした理由は明らかだ。英国は、世界的に急速に進んでいる再生可能エネルギー中心のエネルギー転換の流れを逃すまいとしたからだ。「ブレグジット」以後、多少よろめいてはいるが、英国は英国だ。世界の石炭使用量が今年から減少傾向に転じることが確実視される今、産業革命を主導し人類文明の最も速い成長を牽引した英国が、一番先に石炭をやめて先頭に立っているのだ。
 確かに時代が変わりつつある。化石燃料の時代が終わり、再生可能エネルギーの歴史が始まっているのだ。石器時代は石が足りなくて終わったのではない。同様に化石燃料の時代は化石燃料がなくなって終わりを迎えているわけではない。根本的な理由はとてもシンプルだ。何よりもすでに化石燃料より再生可能エネルギーの発電単価がはるかに安くなり、今後も価格下落がさらに加速するであろうことが明確になったためだ。また、中央集中型の大量生産消費方式である火力発電や原子力発電に比べ、脱中央化、連結、共有、開放など、第4次産業革命技術が指向する価値が世の中に位置するほど効率が極大化されるエネルギー源であるためだ。
 しかし、こうしたエネルギー転換の必要性にもかかわらず、世界各国は現実的な挑戦に直面している。国際情勢があまりにも不安だからだ。数年間続いているウクライナ・ロシア戦争は、欧州のエネルギー安保を激しく脅かしており、最近激化しているイスラエル・イラン戦争は中東の地政学的不安を高め、国際原油価格を乱高下させている。韓国も同様に、このような不安定な国際情勢の中で、炭素中立2050という厳しい課題と共に、当面のエネルギー安保問題を同時に解決しなければならない非常に難しい課題に直面している。
 英国の脱石炭過程で最も重要だった点は、何よりも政府の強い意志だった。英国は2008年、世界で初めて温室効果ガス削減義務を規定した気候変動法を制定して以来、非常に積極的かつ迅速に関連法と制度を設け、これを強力に施行してきた。その結果、2012年基準で約40%に迫っていた石炭火力発電の割合を、わずか10年余りで完全にゼロにするという驚くべき成果を成し遂げた。韓国はどうか? 最近韓国で起きていることに目を向けてみよう。韓国電力は湖南(全羅道)、東海岸、済州などに、送電線路不足を理由に2032年まで新規太陽光・風力の設置を制限した。グローバルトレンドを考慮すれば本当に信じられない選択だ。韓国政府が再生可能エネルギーの拡大に積極的かつ真面目に取り組んでいたなら、決してこうした流れにはならなかっただろう。
 歴史は私たちに重要な教訓を与えてくれる。特に、技術革新の流れを読めずに衰退した国の事例は、今日の私たちに示唆するところが大きい。清の没落、スペイン帝国の衰退、オスマン帝国の敗亡は、いずれも新しい技術パラダイムを受け入れられなかった結果だった。私たちはこのような歴史の教訓を振り返って、再生可能エネルギー中心に改編されている世界的なエネルギー大転換という時代の流れを決して逃してはならない。今、私たちに必要なのは、現実的でバランスの取れたエネルギー政策だ。韓国政府も英国がそうだったように、今からでも韓国の実情に合ったエネルギー転換ロードマップを原点から見直さなければならない。その核心は電気にある。どうすれば今のように安定的に電気を供給しながらも、その供給源を多角化し分散できるか。これが私たちが解決しなければならない最も重要な宿題だ。

キム・ベクミン|釜慶大学環境大気科学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-10-13 18:51
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「米国・チェコに二重請求書…韓国の原発輸出、大儲けはない」

2024年09月23日 | 
「The Hankyoreh」 2024-09-23 09:42
■米国・チェコに二重請求書…韓国の原発輸出、大儲けはない
 ウェスティングハウス、技術使用料の交渉で「バラカ原発のときとは違う」 
 「チェコ現地企業が60%参加」加われば、「赤字輸出」懸念も

【写真】尹錫悦大統領と夫人のキム・ゴンヒ女史が22日午前、チェコ公式訪問を終えて京畿道城南のソウル空港に帰国し、空軍1号機から降りて手を上げて挨拶している=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 チェコのドコバニ原発の受注をめぐり、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が最近チェコを訪問して「うまく解決されるだろう」と期待したのとは違い、知的財産権で紛争中の米国ウェスティングハウスと韓国水力原子力(韓水原)間の合意が遅れていることが確認された。さらに、ウェスティングハウスに支払わなければならない「対価」を考慮すると、原発輸出は政府と与党がいう「大儲け」の水準に達するのは困難だとする指摘も出ている。
 22日、最大野党「共に民主党」のキム・ハンギュ議員室側の話によると、韓水原のチェコ・ポーランド事業室の原発輸出協力チームは、知的財産権関連の合意状況への質問に「合意事項はない」と20日に回答した。ウェスティングハウスの米国本社関係者もハンギョレの電子メールでの質問に、今月初めに「大きく変わってはいない。国際仲裁と訴訟を継続する」と明らかにした。同関係者は「仲裁決定などが来年下半期より前に下されることは難しい」とも説明し、来年3月に予定されるチェコ原発の最終契約の前に有利な立場を得ようとする戦略だと読み取れる。匿名を求めたある原発業界関係者は「ウェスティングハウスが(アラブ首長国連邦の)バラカ原発のときの規模の『示談金』を要求し、韓国は技術的自立を主張し、(金額をめぐる)意見の違いが大きい状況」だと説明した。
 チェコが韓国にチェコ現地企業の原発建設の参加率60%を要求している状況で、ウェスティングハウスに示談金まで支払うことになれば、最終的には韓国への割り当て分として戻ってくるものは多くないだろうという指摘が出ている。野党側の推算で、韓国への割り当て分は合計で6兆6000億ウォン(約7100億円)の水準に過ぎないためだ。バラカ原発のときの予算186億ドルのうち11%ほどにあたる20億ドルの機材と資材の費用がウェスティングハウスに渡り(原発業界分析)、チェコ現地の企業や人材などに渡る建設費を最大60%と仮定した場合の金額だ。チェコのペトル・フィアラ首相は20日(現地時間)、チェコ現地で尹錫悦大統領と会談した直後、「韓水原はチェコ企業と70以上の協力協定書を締結し、私たちが目標とするチェコ企業の60%の参加率に到達できると考えている」と強調したことがある。この場合、チェコ原発2基の建設費4000億コルナ(約2兆5700億円)のうち、残りの29%にあたる1160億コルナ(約7400億円)が韓国への割り当て分になる。昨年の韓国の総輸出額(約845兆ウォン、約91兆4000億円)の1%にも満たない。

【写真】チェコのドコバニ原発の全景=韓国水力原子力提供//ハンギョレ新聞社

 さらに、チェコ自体の状況も韓国の「収益性」の助けにはならない。「エネルギー転換フォーラム」のソク・グァンフン専門委員は「チェコ政府が原発2基の建設費として策定した4000億コルナは、今年のチェコの全予算の17%、国防予算の3倍に該当する」として、「来年に総選挙を控えたチェコ政府にとっては、世論を考慮して最終契約で韓国に多くの収益を与える決定を下すのは難しいだろう」と説明した。
 尹大統領が国政課題に掲げた「2030年までに原発10基輸出」については、知的財産権紛争が今後も障害物になるだろうという見方も出ている。原発関連の核となる国際特許が韓水原にはなく、ウェスティングハウスに毎回巨額の技術諮問料を支払わなければならないということだ。東国大学のパク・ジョンウン教授(エネルギー・電気工学科)は、「韓国が完全な技術自立を主張するためには、原子炉圧力容器などの核となる部品に対する国際特許がなければならないが、現時点では技術改良水準」だと述べた。
 これについて野党は「(実益がある輸出であれば)技術使用料と機材・資材調達の金額などの交渉条件を明らかにせよ」と要求した。一方、与党は「共に民主党が大統領の原発セールス外交に対して『ダンピング』『急造』など言って妨害することに専念している」と反発した。「現地企業60%参加」について大統領室高官はこの日、ハンギョレに「韓国の企業の現地子会社も『現地化』に含まれており、現地化はチェコの希望とは違い、原発の安全性が確保される範囲で可能になるもの」だとして、「来年3月の最終契約のときに決定される事案であり、交渉する問題」だと述べた。

【写真】尹錫悦大統領が20日(現地時間)チェコのプルゼニ産業団地内のドサン・スコダ・パワー工場で開かれた原発全周期協力の協約式とタービン・ブレード書名式を終えた後、祝辞を述べている=プルゼニ/ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

オク・ギウォン記者、イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-23 01:29


「The Hankyoreh」 2024-09-23 06:15
■【社説】「安過ぎ批判」チェコ原発受注戦、「原発ルネサンス」妄信してはならない
 原発セールス外交に取り組む尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が22日、チェコ訪問を終えて帰国した。大統領室は、韓国水力原子力(韓水原)のドコバニ原発の受注の最終契約の見通しについて「100%断定することはできないが、(チェコにとって)韓国以外の代案はまったくない」と訪問の成果を誇った。しかし、安過ぎ受注批判に続き、大きな障害として浮上した米国ウェスティングハウスとの知識財産権をめぐる対立は、依然として解決できていない。
 尹大統領は19日(現地時間)に行われたチェコのペトル・パベル大統領との共同記者会見で、チェコの記者に知的財産権について問われ、「韓米政府は原発協力についての確固たる共感を互いに共有している」として「この問題はアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発の時のようにうまく解決できるだろう」と述べた。しかしハンギョレの報道を見ると、両社はまだ合意に至っておらず、ウェスティングハウスは来年下半期までに国際仲裁決定が下されるのは難しいとまで述べている。
 尹大統領が言及したバラカ原発の例は、2009年に韓国電力がウェスティングハウスから主要部品の供給を受けるという方式で合意を引き出したというもの。問題は、当時と今とでは状況がかなり異なるという点だ。当時はウェスティングハウスと事前に輸出協議が行われていたが、今回はそうではない。また、昨年4月の韓米首脳会談の共同声明には、原発協力について異例にも「各国の輸出規制規定と知識財産権を相互に尊重」するという文言が入っている。米国政府を背景にして、ウェスティングハウスがさらに厳しい要求を突き付けてくる可能性があるということだ。チェコが韓国にチェコ現地企業の原発建設への参加率を60%とするよう要求している状況で、ウェスティングハウスに合意金まで支払うことになれば、韓国の懐に入るものは多くないだろうと指摘されている。
 米日などの主要国の企業とは異なり、原発建設で経済性が確保できれば韓国の国家経済に役立つのは事実だ。しかし、チェコとの「100年を共に見通す原発同盟」、「『チーム・チェコリア』を結成して原発ルネサンスを共に成し遂げよう」という尹大統領の発言は行き過ぎだ。争点が解決されていない状態であるにもかかわらず、大統領が自ら過度な期待を植えつけると、駆け引きをすべき実務交渉で不利になりかねない。また、ウクライナ戦争を契機として一部の主要国が原発を改めて建設する傾向があるのは事実だが、かといって「原発ルネサンス(復興)」まで期待するのは時代錯誤だ。原発至上主義に陥り、再生可能エネルギーの拡充という世界的な潮流に取り残されてはならない。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-22 18:06


「The Hankyoreh」 2024-09-23 05:57
■尹大統領が「チェコ原発」に執着すれば韓国経済は四面楚歌
【ハンギョレS】チョン・ナムグの経済トーク 

 広がる経済悲観論 
 失業率1.9%、過去最低の「外華内貧」 
 賃金の伸びが不十分、家計消費の脆弱性 
 韓国銀行の利下げは不動産が足かせ 
 景気回復をけん引した半導体株が急落

【写真】5月、ソウル市江南区のコエックスで開かれたKBグッドジョブ優秀企業就職博覧会が参加者で賑わっている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国統計庁は9月11日、「8月雇用動向」を発表した。雇用率が前年同月対比0.2ポイント上がった69.8%、失業率は0.1ポイント下がった1.9%だという。統計庁の素っ気ない発表にいくつか強調したかったのか、雇用労働部が「参考」資料を出した。
 「15歳以上の雇用率(63.2%、+0.1p)・経済活動参加率(64.4%、0.0p)は過去最高、失業率(1.9%、-0.1p)は過去最低を記録した」。
 1.9%の失業率は「求職期間4週間」を基準に失業者を集計し始めた1999年6月以後の最低値だ。驚くべき数値だ。2011~2023年の韓国の平均失業率は3.47%、最も低かった年でも2.7%(2023年)だった。ところが1.9%とは、これよりさらに低くなることは果たして可能なのかと思うほどだ。
 米国では2021年10月のコロナパンデミックの時、相対的に規制を緩めたネブラスカ州の失業率が史上最低の1.9%を記録し話題になった。翌年2月には1.7%まで下がった。しかし、これは特別な時期に州単位で出た記録だ。米国の8月の失業率は4.2%だ。1%台の低い失業率は、タイのように労働人口のうち自営業者の割合が圧倒的に高い国など、いくつかの例外を除いては見当たらない。日本の7月の失業率も2.7%だ。
 そうであるなら1.9%の失業率は「太平歌」(テピョンガ、太平を謳歌する歌)を歌っても良いほどではないか。ところが、これに注目して大きく扱ったメディアはなかった。なぜか。数値がそうなだけで、雇用市場の好転はなかなか体感できないためだ。

◆安い短期・高齢者雇用だけが増える
 雇用率の上昇、失業率の下落は錯視ではない。実際、経済活動人口の増加幅(+11万4千人)より就業者数の増加幅(+12万3千人)の方が大きい。ところが就業増加の相当部分が政府予算を投入して作った「高齢者雇用」によるものだという点で色あせる。8月の統計を見れば、60歳以上の人口は昨年同月に比べて47万人増え、就業者数は23万1千人増えた。政府は今年の高齢者雇用事業の予算分を昨年の88万3千個より14万7千個多い103万個に増やして編成している。
 雇用率上昇の細部内訳を見れば、首をかしげるところがある。まず、男性雇用率が71.9%から71.3%へと0.6ポイント下がった。30代男性の雇用率が1.0ポイント下がり、50代も0.4ポイント下がった。60歳未満の男性雇用率は2022年7月が77.74%、2023年8月が77.67%、今年8月が77.64%と停滞状態だ。60歳以上の高齢者就業者の増加は男性が4万1千人、女性が19万1千人だ。
 短時間就業者の比重が継続的に大きくなり、週当り平均就業時間は減っている。今年8月には34.1時間で、昨年より1.5時間減った。1~8月の平均でも38.7時間から37.1時間に減少した。短時間働く高齢者の仕事から得られる所得は大きくない。高齢者貧困率が高い状況で、政府が財政を投入して高齢者の雇用を創り出すことは望ましく意味あることだが、それによる雇用率向上に比べて家計所得に及ぼす肯定的影響は制限的だ。
 実際、雇用率の数値が示す労働市場の活気に比べて賃金上昇率は高くない。雇用労働部の事業体労働力調査で今年上半期の賃金状況を見ると、勤労者1人当りの月平均賃金総額(403万2千ウォン=約43.6万円)は昨年に比べて2.4%(+9万4千ウォン=約1万円)の増加に止まった。2021年上半期の4.0%、2022年の5.8%に比べて低く、2023年(2.4%)と同水準だ。
 雇用好調にともなう家計賃金所得の増加、これに基づく消費の増加で内需が活気を帯びることを期待するが、そのような好循環は現れていない。統計庁が8月30日に発表した7月の産業活動動向を見ると、消費動向を示す小売販売額指数は昨年同月に比べて2.1%減少した。小売販売額指数は、個人と消費用商品を販売する2700社の販売額を調査したものだが、7月の指数は99.6だ。2000年を100とする指数なので、物量基準での小売販売水準が2000年にも及ばないという意味だ。
 内需沈滞が長期化しているが、韓国政府は政府財政支出を通じてこれを補完することは何が何でも拒否している。攻撃的減税で税収が貧弱になった状況で、財政支出の増加率を名目経済成長率より低く抑えている。今年の予算案はわずか2.8%増に絞っており、来年度予算案も3.2%増に抑えている。
 政府と与党は、市場金利が大きく上がり家計の元利金返済負担が大きくなっているだけに、内需回復に役立つよう韓国銀行が急いで基準金利を下げるよう圧力を加えてきた。国内消費者物価上昇率も8月に2.0%に下がり、米連邦準備制度理事会(FRB)も基準金利を0.5%下げて通貨政策の方向を転換しただけに、韓国銀行が金利を下げる条件はかなり整えられた。しかし、ソウルと首都圏の住宅価格が上昇し、これに便乗するための住宅担保融資が急膨張し、金融不均衡が大きくなっていることがネックだ。住宅価格の上昇は政府の積極的な政策融資が火付け役を果たした。

◆信頼していた半導体は株価暴落
 政府は世界の半導体の景気回復にともなう輸出増加で景気が本格好転すれば、その効果が経済全般に広がると期待している。実際、半導体の輸出は増加している。4月以降、4カ月連続で50%以上増加し、8月にも38.8%増加した。良くなったが、加速がついてはいない。その中で「半導体冬説」がすでに頭をもたげている。
 外国人投資家がサムスン電子とSKハイニックスの株式を投売りし、株価が急落している。米国の投資銀行モルガン・スタンレーは15日、人工知能(AI)による半導体好況は来年には崩れるだろうとし、ハイニックスの目標株価を26万ウォンから12万ウォンに下方修正した。モルガン・スタンレーは2021年8月にも「半導体の冬が来る」という誤った判断を示した報告書を出し、信頼性を疑われてはいるが、半導体景気に対する市場の憂慮が大きくなったことは否定しがたい。韓国の半導体生産額は国内総生産(GDP)の10%に達し、半導体輸出の割合は20%に達する。米商務省のアラン・エステベス産業安保次官は10日、韓国企業が作る高帯域幅メモリー(HBM)の中国に対する輸出統制の可能性に言及した。慎重な外交的対応が必要な部分だ。
 こうした中で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は19日、4日間の日程でチェコを公式訪問した。尹大統領はロイター通信に「韓国水力原子力のチェコ新規原発建設受注が円滑に確定するようにすることが今回のチェコ訪問の目的の一部」とし「この事業の成功が何より重要だ」と明らかにした。経済使節団としてサムスン電子のイ・ジェヨン会長、大韓商工会議所のチェ・テウォン会長(SK会長)、現代自動車のチョン・ウィソン会長、LGのク・グァンモ会長からなる4大グループのトップが同行した。この日、SKハイニックスの株価は6.14%、サムスン電子は2.02%下落した。
チョン・ナムグ経済産業部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-21 6:48


「The Hankyoreh」 2024-09-21 12:50
■尹大統領「チェコ原発受注」大言壮語したが…「知的財産権」ハードル越えられず
 韓国・チェコ首脳、協力の意志は確認 
 円満解決ではなく「協議進行」の雰囲気

【写真】尹錫悦大統領とチェコのペトル・パベル大統領が19日午後(現地時間)チェコのプラハ城で共同記者会見を開いた後、握手をしている=プラハ/ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 「原発セールス外交」のためにチェコを訪問した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は19日(現地時間)、チェコ大統領と首脳会談を行い、チェコの新規原発受注の障害として浮上した米国ウェスティングハウスとの知的財産権をめぐる対立は円満に解決されるとして自信を示した。
 尹大統領はこの日、プラハでチェコのペトル・パベル大統領と首脳会談を行った後、共同記者会見を開き、「知的財産権問題について、両国政府は原発での協力に確固たる共感を共有し、韓国政府も韓米企業間の円満な問題の解決を支援している」としたうえで、「アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発のときのように、うまく解決できるだろう」と述べた。パベル大統領も「最終契約が締結される前であり、確実なことはない」としながらも、「紛争が成功裏に解決されることが有益であり、長引かせずに合意に至ることが両者にとって有利だ。この問題が成功裏に解決されると信じており、悪いシナリオもあるが、そのような可能性は高くない」と明言した。
 両国首脳が確固たる協力の意志を確認したことになるが、当初の韓国政府の期待には至っていないのではないかという見方も出ている。チェコ訪問前の大統領室からは、ウェスティングハウスの知的財産権問題や米国の輸出統制規範の遵守問題などに関する協議は終わったも同然だという話が出ており、尹大統領も首脳会談前の外信インタビューで「チェコの原発事業については心配しなくてもいい」と述べたためだ。しかし、実際に両国首脳の共同記者会見では、このような楽観論とは異なる「協議はまだ進行中」という雰囲気が垣間見られた。
 ある野党関係者は「今日の両国大統領の話によると、まだ協議中だと理解するのが正しい」として、「調べてみたところ、ウェスティングハウスが独自技術を持つ核心の機材と資材を韓国水力原子力(韓水原)が購入する方向でまだ交渉中で、金額は全工事費の20%の水準である2兆~3兆ウォン(約2200億円~3300億円)台だと聞いた」と述べた。野党の「共に民主党」と「祖国革新党」の議員22人もこれについて19日に記者会見で、「8月にアン・ドククン産業通商資源部長官が米国を訪問したが、米国を説得できずに手ぶらで帰国した。尹錫悦政権は米国政府と原発輸出を相談することさえできない状況に置かれている」と主張した。
 「具体的な話ができないのは、まだ協議中のため」(政府高官)だという説明だが、バラカ原発のときとは本質が異なる状況とみるべきだという指摘も出ている。事前にウェスティングハウスとは輸出協議が行われ、原発輸出市場の事情が今よりよかったバラカのときとは違うということだ。昨年4月に尹錫悦大統領が米国のジョー・バイデン大統領と発表した韓米首脳の声明は、このような状況をよりいっそう不利にさせた。
 「原子力安全と未来」イ・ジョンユン代表は「バラカのときは韓水原が一種の技術使用料を支払うことで紛争が妥結したが、今回のウェスティングハウスの知的財産権の問題は、単なる1企業の資産ではなく、米国の原子力法にともなう米国の原発の技術を米国の承認なしで輸出する過程で発生したこと」だとして、「韓米首脳声明で約束した『知的財産権を尊重』するという表現が持つ重量感は、単なる企業間の紛争を越える水準の話」だと述べた。
 「エネルギー転換フォーラム」のソク・グァンフン専門委員も「バラカのときは『原子力ルネサンス』が起きると判断し、ウェスティングハウスに一部のロイヤリティーを支払うことなどで損害をこうむっても、長期的には利益になるだろうという期待があった。しかし、韓米首脳声明で核拡散の危険領域を排除することになり、事実上中東市場を放棄してしまい、唯一残された市場である東欧をめぐり、韓水原とウェスティングハウスの競争が激化した。ウェスティングハウスにさらに大きな代価を支払う必要があるかもしれない」と指摘した。
パク・ギヨン記者、プラハ/チャン・ナレ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-21 00:28 


「The Hankyoreh」 2024-09-13 08:59
■「文政権時代に中止」した新ハヌル3、4号機の建設を許可…韓国「原発復活」本格化
 原子力安全委員会が決議

【写真】慶尚北道蔚珍郡の新ハヌル原発2号機の真向かいで、新ハヌル3、4号機の用地造成作業が進められている=韓国水力原子力提供//ハンギョレ新聞社

 原子力安全委員会(原安委)が、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に建設が中止された慶尚北道蔚珍(ウルチン)の新ハヌル原子力発電所の3、4号機の建設を許可した。蔚珍に建設される9、10番目の原発となる新ハヌル3、4号機が完成すると、全国で稼動する発電用原子炉の数は30基となる。
 原安委は12日午前の会議で「新ハヌル3、4号機の建設許可」案件を決議したと明らかにした。韓国水力原子力(韓水原)が2016年に建設許可を申請してから8年たって、本格的な工事が許可されることになったのだ。韓水原によると、新ハヌル3号機は2031年、4号機は2032年から商業運転に入る計画だ。新ハヌル3、4号機は出力1400メガワットの加圧水型軽水炉(APR1400)で、現在運用中の新ハヌル1、2号機と基本設計は同じ。
 新ハヌル3、4号機の建設事業は、文在寅政権時代に「エネルギー転換ロードマップ」に則って中止された。しかし尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が2022年7月に建設事業の再開を宣言したことで、再び審査手続きがはじまった。昨年6月に政府は実施計画を承認。その後、原安委は位置、設備の技術基準、環境への影響、解体計画書、重大事故政策などを検討し、この日、建設許可決定を下した。韓国原子力安全技術院は、「原発の安全性に影響を与えるほどの地震および陥没などの地質学的災害は発見されておらず、津波などの可能性も低いため、用地の安全性は確保されている」と説明した。
 国内で新規原発建設が許可されたのは、2016年6月のセウル3、4号機(新古里5、6号機)以来8年3カ月ぶり。セウル3、4号機(来年完成予定)に続き、新ハヌル3、4号機まで完成すれば、韓国では計30基の原発が稼動することになる。政府は現在、2029年までに40年間の運用許可期間が終わる古里(コリ)、ハンビッ、ハヌル、月城(ウォルソン)の計10基の原子炉に対して、稼働延長手続きを進めている。産業通商資源部は今年6月の第11次電力需給基本計画実務案によって、3基の新規原発に加えてさらに小型モジュール原発(SMR)1基を建設する計画も明らかにしている。尹大統領が国政課題として掲げた「脱原発政策の廃棄および原子力産業エコシステムの強化」の一環だ。
 このように新規原発建設が本格化したことについて、市民団体「核から安全に暮らしたい蔚珍の人々」のイ・ギュボン代表はハンギョレに、「文在寅政権時代にロードマップに則って中止された事業なのに、政権が変わったからといってこのようにまたも推進されるのはとうてい理解できない。一つの敷地に10基の原発が密集して建設されるわけで、どうして安全だと断言できるのか分からない」と述べた。原発建設予定地から4キロほど離れた蔚珍郡竹辺里(チュクピョンニ)に住むチョン・ジョンニュルさん(53)は、「今の原発産業の腹を膨らませるために後代の魂を売る行為」だと語った。
オク・キウォン、チュ・ソンミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-12 12:19


「聯合ニュース」 2024.09.12 17:04
■前政権で中止の原発建設許可 「産業再飛躍のきっかけに」=韓国大統領室 
【ソウル聯合ニュース】韓国大統領室の成太胤(ソン・テユン)政策室長は12日の記者会見で、原子力安全委員会が新ハヌル原子力発電所3・4号機(慶尚北道蔚珍郡)の建設を許可したことについて「前政権の脱原発政策を破棄した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権のエネルギー政策方向に従い、新規原発の建設に本格的に着手した」とし、「枯死寸前だった原発生態系を復元し、原発産業が再飛躍できるきっかけを作った」と評価した。   

会見を行う成太胤・大統領室政策室長=12日、ソウル(聯合ニュース)
 また、建設再開はクリーンで安定的な電力供給による人工知能(AI)など先端産業の発展と炭素排出量低減に寄与するだろうとした上で、韓国原発産業に対する対外信頼度を向上させ、チェコでの原発受注をはじめとする原発輸出にも寄与するだろうと説明した。
 2002年から推進され、発電事業許可まで受けた新ハヌル原発3・4号機は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の脱原発政策により17年10月に建設が中止された。今回の建設許可は、尹錫悦政権発足直後の22年7月に新たなエネルギー政策方向が閣議決定されてから初めての実質的かつ象徴的な措置となる。
 原発運営会社の韓国水力原子力は今月13日から基礎掘削工事に着手し、3号機は32年、4号機は33年までに完工する計画だ。 
 一方、新ハヌル原発3・4号機が完工しても送電インフラが不足する恐れがあるとの指摘に対し、大統領室の関係者は「遠距離の送電でも電力損失の少ない『高圧直流送電』ラインを26年までに建設する予定」として「このラインができれば送電の制約が完全に解消されるだろう」と説明した。  


「The Hankyoreh」 2024-09-06 07:56
■ウェスティングハウスの抗議、尹大統領訪問間近…韓国政府のチェコ原発問題解決策は
 知的財産権を主張するウェスティングハウスと「設備供給で協力の余地」

【写真】チェコの新規原発の予定場所のドコバニ原発団地=韓国水力原子力提供//ハンギョレ新聞社

 韓国政府は、チェコへの原発輸出の障害物として浮上した米ウェスティングハウスとの知的財産権での対立を解決するために、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発を受注した際と同様に、ウェスティングハウスと「設備供給などで協力する余地」があると明らかにした。今月の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のチェコ訪問を控えて、一部の部品や設備をウェスティングハウスから購入する方式で対立を解決する案を公式に提示したということだ。
 5日、最大野党「共に民主党」のシン・ヨンデ議員が産業通商資源部(産業部)から得た答弁書によると、「ウェスティングハウス対応過程および法的紛争に関する現況資料等」に対する要請に、産業部は「現在の韓国電力・韓国水力原子力とウェスティングハウス間の知的財産権については立場の違いがあるが、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発の事例のように、設備供給などで協力する余地もある」と明らかにした。韓国水力原子力(韓水原)は7月、チェコのドコバニ地域に1000メガワット級の新規大型原発2基を建設する事業の優先交渉対象者に選ばれた。しかし、来年3月の本契約締結を控え、源泉技術を保有するウェスティングハウスが「知的財産権侵害」だとして、既存の米国の地裁に続き、最近になりチェコの反独占規制機関にも法的対応と陳情を提起し、対立が深まっている状態だ。尹大統領は今月中に4大グループのオーナーらとともにチェコを訪問する予定だ。
 この渦中に政府が対立を解決する案として、韓水原がウェスティングハウスから「設備の供給を受ける案」に言及したのだ。これに先立ち2009年、バラカ原発の輸出の際に主契約者だった韓国電力は、知的財産権侵害を問題にしたウェスティングハウスと、原子炉冷却材ポンプやタービンなどの主要な部品を供給する方式で合意に至ったことがある。原発業界では、バラカ原発プロジェクトの予算規模の186億ドル(約2兆7000億円)のうち20億ドル(約2900億円)前後の機材・資材費用がウェスティングハウスに支払われたと予想している。
 韓国がチェコに輸出する原発のモデルである「APR-1000」の知的財産権について、韓国とウェスティングハウスの意見は対立している。ウェスティングハウスは、自社技術を基盤としているためAPR-1000の知的財産権は自社にあると主張するが、韓水原は当原発の設計の重要コード、冷却材ポンプ、原発計測制御システムなどの3大核心技術をすべて国産化したとして、輸出には問題ないとする立場だ。ただし、ウェスティングハウスの知的財産権の主張について、韓水原と政府側は「問題が生じないよう交渉する」と述べるにとどめた。
 同日、国会答弁書について産業部は「両国の企業が法的紛争の代わりに様々な分野での協力を通じて、相互にウィン・ウィンとなる余地もあるという原則的な回答だった」としたうえで、「チェコの原発の細部の設備供給案は、韓水原とチェコの発注側との間の最終契約が行われた後に決める事案であり、現時点では決まっていない」と付け加えて立場を明らかにした。
 一方、チェコの反独占規制機関は、ウェスティングハウスが先月27日にAPR-1000の知的財産権が自社にあるとして提起した陳情について3日(現地時間)、公式の行政手続(調査)に着手したことを明らかにした。
オク・キウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-09-05 14:55


「中央日報日本語版」 2024.08.21 11:15
■中国原発100基超える、11基の建設を承認…相当数が黄海沿岸
 中国が過去最大となる11基の新規原発建設計画を承認し、「原発崛起」を加速化している。国営中国中央テレビによると、中国国務院常務委員会は19日に李強首相主宰で開いた会議で、新規原発11基を作る合計5件のプロジェクトを承認した。
 中国経済メディアの第一財経によると、中国3大国営原発企業がプロジェクトを進める。中国核工業グループ(CNNC)による江蘇省徐圩の1基、中国広東原発グループ(CGNPG)による広東省陸豊の1基、山東省招遠の1基、浙江省三澳の2基、国家電力投資グループ(CPI)による広西チワン族自治区白竜の1基が主要プロジェクトだ。
 合計11基の原発建設には最小2200億元(約4兆4872億円)以上が投入され、完工まで約5年かかる見通しという現地報道も出てきた。
 ブルームバーグは「今回の新規原発建設承認は年間最大規模。中国が炭素排出量を減らすために原子力発電にさらに依存して起きたこと」と伝えた。その上で「中国が2030年までにフランスと米国を抜いて世界で最も多くの原発を保有することになるだろう」と付け加えた。
 中国核エネルギー産業協会(CNEA)によると、中国では現在56基の原発が稼動中だ。米国の93基に続きフランスの56基と並ぶ世界2位の原発稼動国だ。中国では昨年まで合計38基の新規原発が建設承認を受けたり建設中だ。今回の新規原発建設計画まで合わせれば中国では合計100基を超える原発が建設されることになる。
 日本経済新聞によると、中国は2011年に日本の福島第1原発事故が発生してからしばらく新規原発を推進していなかったが、2019年から建設を再開した。2019~2021年に年間4~5基の新規原発建設を許可し、2022年と昨年にはそれぞれ10基を許可した。中国中信証券は報告書を通じ中国が今後3~5年間に毎年約10基の新規原発を承認するものと予想した。現在原発設備容量が全電力生産で占める割合は5%水準だが、2035年までに10%まで高める目標だ。
 中国当局は原発建設の意志を公開的に強調している。中国共産党中央委員会と国務院は最近発表した「経済社会発展の包括的なグリーン転換加速化に関する意見」という文書で、「沿海原発などクリーンエネルギー基地建設を加速化しなければならない」と明らかにした。
 第一財経は「中国が公式文書で原発建設に『加速化』という単語を明確に使ったのは福島原発事故後初めて」と指摘した。その上で複数の中国原発関係者の話として「今後数年間で中国は原子力発電の黄金時代を迎えるだろう。原子力発電は無炭素クリーンエネルギーであり、安定した電力供給を保障できる特性上、(中国が推進する)全面グリーン転換に代えられない役割を担うだろう」と付け加えた。
 一部では中国の原発崛起が韓国に及ぼす影響に対し懸念する。既存の原発だけでなく新規原発の相当数が黄海沿岸に建設されているためだ。


「東亞日報」 August. 21, 2024 10:05
■中国「原発11基を追加建設」、2030年に最大保有国
 中国は今年、5つの新規原発プロジェクトを承認し、計11基の原発を追加で建設することにした。最近、中国はグリーンエネルギーへの転換を名分に原発建設に拍車をかけており、2030年には世界最大の原発保有国になるという見通しが出ている。
 20日、国営新華社通信によると、李强首相は前日、国務院常務委員会を開き、「江蘇徐偉第1段階」など5つの原発プロジェクトを承認した。今回の決定を受け、中国は少なくとも2200億人民元(約41兆ウォン)をかけて、原発11基を追加で建設する予定だ。これは最近、中国が承認した新規原発の中で最も多い数値だ。
 中国は先月31日、「経済・社会発展の加速化と全面的なグリーン転換に関する意見」を通じて、2030年までに太陽光・風力・原子力など非化石エネルギーの消費の割合を約25%までに増やすと発表している。原発の場合、現在56基が稼動中であり、これを通じて中国全体の電気需要の5%を賄っている。中国はすでに原発38基を承認したか、追加建設しているが、今後も毎年10基程度を追加承認するというのが地元メディアの分析だ。ブルームバーグ通信は、「中国は2030年までに、フランスと米国を抜いて世界で最も多くの原発を保有することになるだろう」と見込んだ。
 中国は2011年、日本の福島原発事故以降、新規原発の建設を中断したが、2019年に再開した。2019年に6基、2022年と2023年は10基など、新規承認の規模を増やしている。中国が原発建設を増やすのは、低炭素エネルギー政策の目標達成だけでなく、エネルギー安保の側面も考慮したものだという分析が出ている。「ウクライナ戦争」と「ガザ地区戦争」等の影響でエネルギー価格が大幅に上がったうえ、人工知能(AI)のブームで半導体電力需要が継続的に大きく増えるほかはないためだ。
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「福島汚染水放流1年…洪準杓大邱市長「野党、怪談政治で扇動」」

2024年08月25日 | 
「中央日報日本語版」 2024.08.25 11:07
■福島汚染水放流1年…洪準杓大邱市長「野党、怪談政治で扇動」
 大邱市(テグシ)の洪準杓(ホン・ジュンピョ)市長は、日本政府が福島原発汚染水を放流して1年となった24日、韓国野党に向け「どうしてもそういう政治をしなければならないのか」と批判した。
 洪市長はこの日自身のフェイスブックに、「福島核汚染水怪談扇動も1年になったがいまはその汚染水が5年、10年後にくると扇動する。怪談政治で国民を扇動し国の混乱を招いて何を狙うのか。どうしてもそういう政治をしなければならないのか」と書いた。
 彼は「狂牛病怪談で国を混乱に追いやりながら責任を取る政治家は1人もなかった。米国産牛肉を食べるなら青酸カリを飲むと言った芸能人は改名してまだ堂々と活動している」とも指摘した。
 続けて「THAAD怪談で黄色い髪のかつらをかぶってわが身を燃やし、さらには星州(ソンジュ)マクワウリもTHAADマクワウリなので食べられないと扇動した人たちはみんなどこに行ったのか」と反問した。
 韓国大統領室も野党圏に向け批判を出した。
 大統領室のチョン・へジョン報道官は23日の会見を通じ「何の科学的根拠もないあきれる怪談がフェイクの扇動と明らかになったのに、『怪談の根源地』である野党は国民への謝罪すらもなく無責任な姿を見せている。国民の恐怖感増加と国論分裂によって浪費された社会的費用は金額で換算することすらできず、怪談の被害は漁民、水産業従事者、そして国民にそのまま返ってきた」と強調した。
 続けて「狂牛病とTHAADに続き福島まで、国民を分裂させる怪談扇動をもう止めると約束し、いまからでも国民の前で謝るよう望む」と促した。
 これに対し野党「共に民主党」のカン・ユジョン院内報道官は「大統領室はいったい何を根拠に日本が放流した福島核汚染水が安全だと主張するのか。日本政府が渡した広報性資料のほかに主張を裏付ける資料があるのか」と反論した。


「The Hankyoreh」 2024-08-24 09:25
■汚染水放出1年、日本ではなく野党に「謝罪」要求した韓国大統領室
 大統領室が、日本の福島原発汚染水の海洋投棄当時に韓国政府の生ぬるい対処を批判した野党に対して国民への謝罪を要求した。放出から1年が経過したが、何の問題も発生しなかったため、「懸念と批判は怪談であり偽りの扇動だったことを認め、国民の前で謝罪しなければならない」という主張だ。専門家らは、大統領室の認識こそ「無知と非科学的な確信に満ちている」と批判した。野党は「放出された汚染水が韓国の海に到着するのは、どれだけ早くても4~5年後のことだが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は5年後や10年後に時間旅行にでも行ってきたのか」と指摘した。
 大統領室のチョン・へジョン報道官はこの日、龍山(ヨンサン)の大統領室で会見を開き、「24日は野党が福島原発の『怪談』を放出して1年になる日」だとし、「(韓国政府は)過去1年間、国内の海域や公海などから試料を採取し、4万9600件あまりの検査を行った結果、安全基準から外れた事例は1件もなかった」と述べた。汚染水放出の無害さが1年間の各種検査で立証されたという主張だ。さらに、「野党のあきれた怪談扇動がなければ使わなくて済んだはずの予算1兆6000億ウォン(約1700億円)が、この過程に投入された」として、「野党が国民の分裂ではなく、民生のための政治をしたならば、社会的弱者のために使うことのできた血税」だと強調した。試料採取や海洋放射能監視の強化、漁業者の被害の支援費用などに使われた予算を「使わなくてもよかった費用」だと切り捨てたのだ。
 野党は「居直り」だと反発した。最大野党「共に民主党」のチョ・スンネ首席報道担当はこの日の書面会見で、「いったい何を根拠に、国民と野党の懸念を怪談だと貶めるのか。日本政府は今年2月からは放射能の資料も提供しておらず、日本の環境省の資料から、放出地点のトリチウム濃度が10倍に上昇したという事実が明らかになったが、韓国政府は最初から手をこまねいていた」と指摘した。さらに、「最終報告に何の責任も負わないと宣言した国際原子力機関(IAEA)の報告書の1つだけを信じて同意した汚染水放出は、少なくとも30年間続く」として、「尹錫悦政権は(日本政府が犯した)犯罪の共犯であり幇助犯」だと述べた。
 環境団体や専門家らも同様に大統領室の態度をいっせいに批判した。緑色連合は22日の声明で「中国と香港が汚染水投棄を懸念して自国の立場を代弁している反面、韓国政府は『1年間安全基準から外れた事例は1件もなかった』と問題を単純化している」とし、「放射線に『安全な基準』というものはなく、管理用に過ぎない『基準』を超えなかったという理由で、低線量放射線や放射線累積のリスクなどを排除している」と指摘した。政府が全国民を対象にした長期の追跡調査のための健康影響調査を行わないでいることについても「責任放棄」だと批判した。
 原発問題を研究してきた日本の松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)名誉教授は「長期的被害を調べなければならないのに、韓国政府は『1年間何の問題もなかった』として汚染水に関する懸念を怪談だといって切り捨てている。チェルノブイリ原発爆発当時にも即死した人は多くなかった」と指摘した。さらに「いま重要なのは、輸入水産物に対してストロンチウム89・90を測定した結果を必ず添付するよう日本政府に要求すること」だと述べた。ストロンチウムは体内に入ると骨に蓄積されやすく、骨髄がんと白血病の原因になりうる。
 環境運動連合はこの日、汚染水海洋投棄から1年を機に実施した国民世論調査で、回答者の65%が日本産水産物の輸入全面禁止に賛成し、汚染水海洋投棄に反対するという回答も76%に達したと明らかにした。調査は世論調査業者「リサーチビュー」が15日から19日までの4日間、全国の満18歳以上の成人男女1000人を対象に実施した。
チャン・ナレ記者、ユン・ヨンジョン記者、コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-23 23:57


「中央日報日本語版」 2024.08.24 09:25
■韓国政界、福島放出1年迎え衝突…「怪談扇動を謝罪すべき」「日本と共犯」

【写真】大統領室のチョン・へジョン報道官は23日、ソウル竜山(ヨンサン)大統領室庁舎で、福島汚染水放出から1年を迎えた中、共に民主党に謝罪を要求するブリーフィングを行った。 大統領室写真記者団

 福島汚染水放出開始から1年を迎え、韓国の政界が衝突した。東京電力は昨年8月24日から福島第1原発の汚染水を希釈して放出している。
 韓国大統領室のチョン・へジョン報道官は23日のブリーフィングで「24日は野党が福島怪談を放出して1年となる日」とし「いかなる科学的根拠もないあきれるような怪談が嘘の扇動と明らかになったが、怪談の根源地である野党は国民に謝罪もせず無責任な態度を見せている」と述べた。
 チョン報道官は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は怪談を乗り越える道は客観的、科学的な検証だけだと信じた」とし「海洋放射能調査地点を92カ所から243カ所に拡大し、輸入申告されたすべての水産物に対する生産地証明書を確認してきた」と明らかにした。続いて「1年間、国内海域や公海などで試料を採取して約4万9600件の検査を進めた結果、安全基準に合わない事例は1件もなかった」と強調した。
 また「『核廃棄物』『第2の太平洋戦争』のような野党のあきれるような怪談扇動がなかったとすれば必要ない予算1兆6000億ウォン(約1730億円)がこの過程で投入された」とし「野党が科学的根拠を信頼して国民分裂でなく民生のための政治をしれいれば、社会的弱者のために投じることができた血税」と主張した。
 チョン報道官は「野党は反省どころか今でも刺激的な発言をし、依然としてあきれる怪談扇動に没頭している」とし「わが政府の検査結果にあえて背を向け、『安全性を立証する根拠を提示すべき』というオウム論評ばかりを繰り返している」と指摘した。そして「反省の開始は率直な謝罪と再発防止約束」とし「BSE(牛海綿状脳症)・THAAD(高高度防衛ミサイル)に続いて福島まで、国民を分裂させる怪談扇動はもうやめると約束して、今からでも国民の前で謝罪することを望む」と強調した。
 国民の力の裵俊英(ペ・ジュンヨン)院内首席副代表もこの日、院内本会議で「汚染水放出はわが国民の誰も望まない残念なことだった」としながらも「しかし民主党の恥知らずな扇動政治はさらに遺憾だ。いま一年が過ぎて実体が表れた」と話した。続いて「民主党は怪談で苦痛を受け、損害を受けた国民に謝罪するべきだ」と要求した。
 与党のこうした攻勢に対し、共に民主党は強く反発した。
 趙承来(チョ・スンレ)首席報道官はこの日、書面ブリーフィングで「放出された汚染水が我々の海に到着するのは早くて4、5年後から10年後のこと」とし「尹錫悦政権はその間、5年後、10年後に時間旅行にでも行って来たのか」と反問した。また「大統領室はいったい何を根拠に日本が放出した福島核汚染水が安全だと主張するのか。日本政府が渡した広報性資料のほかに主張を裏付ける資料があるのか」とし「いったい何を根拠に国民と野党の憂慮を怪談や嘘の扇動と罵倒するのか」と主張した。
 趙報道官は「日本政府は今年2月以降、放射能資料も提供しておらず、むしろ日本環境部の資料で放出地点のトリチウム濃度が10倍に高まったという事実が表れた」とし「被害予想国家として放出状況をより徹底的に監視するべきだった韓国政府は最初から手放しにしていた。トリチウムと放射能を移していく食物連鎖も追跡せず、国民の健康に及ぼす影響に対する長期間の追跡調査もなかった」と指摘した。
 趙報道官は「国民の健康と安全を担保する措置は何もせずに安全だという広報ばかりに熱を上げた政府が、広報費1兆6000億ウォンを野党に転嫁するのはあきれる」とし「日本政府は全世界の人類に費用が安いという理由で犯罪を犯し、尹錫悦政権はこの犯罪の共犯であり幇助犯」と強調した。そして「尹錫悦政権は決して(責任から)自由でないことを厳重に警告する」とした。


「The Hankyoreh」 2024-08-24 08:25
■【社説】汚染水放出1年、「怪談」主張する大統領室は日本の代弁者か

【写真】大統領室のチョン・ヘジョン報道官が23日、ソウル龍山の大統領室庁舎で、懸案についてブリーフィングしている/聯合ニュース

 日本の福島第一原発からの放射能汚染水の海洋放出から丸1年を翌日に控えた23日、大統領室は「何の科学的根拠もない荒唐無稽な怪談が偽りの扇動であることが明らかになっているにもかかわらず、怪談の根源地である野党は国民に対して謝罪すらしない」と野党を非難した。膨大な量の放射能汚染水を隣国の国民の懸念を無視して海に流している肝心の日本については、一言もなかった。一体どこの国の大統領室なのか。
 福島第一原発の汚染水は放出直前までに134万トンがたまっており、さらに毎日100トンあまりが生成されている。日本はこのうち5万4600トンをこの1年間に放出した。今後も毎年数万トンが、少なくとも30年以上にわたって放出される。汚染水にはセシウム137などの人体に致命的な影響を及ぼす放射性物質が微量ではあるが含まれており、トリチウム(三重水素)はいわゆる多核種除去設備(ALPS)でもろ過されないため海水で希釈して放出される。このような大量で長期にわたる汚染水の放出は人類が一度も経験したことのないものであり、長期的に生態系と人間の健康にどのような影響を及ぼすかは誰も予断できない。たった1年たっただけで「ほら、何事もないじゃないか」とでも言わんばかりだ。これが国民の安全を最優先に考えるべき大統領の言うことなのか。
 日本は自国内で汚染水を保管・処理できる様々な方策があったにもかかわらず、金も手もかかるというだけの理由で海への大量投棄をはじめた。正常な政府なら、当然にも自国が引き受けるべき危険を外部に押し付けた日本の態度に断固反対すべきだった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は逆に「汚染水のせいで韓国の海が汚染されるという根拠のない扇動」などと言い、先頭に立って日本を擁護してきた。今も日本の責任には言及すらせず、むしろ懸念を示す国民を追い詰めている。日本政府にとって尹大統領はどれほどありがたいことか。
 大統領室は「この1年間、国内海域、公海などで試料を採取し、4万9600件あまりの検査をおこなった結果、安全基準を外れた例はただの1件もない」とし、「使わなくて済んだはずの予算1兆6000億ウォンが投入された」と述べた。しかし、汚染水が太平洋を回って韓国の海域に流入するまでには4~10年かかる、というのが政府のシミュレーションの結果だった。このように性急に判断を下すべきではない。莫大な予算を使うことになったのは懸念している国民のせいなのか、日本の放出のせいなのか。なぜ日本には何も言えず、国民のせいにばかりするのか。
 「日本の環境省の資料によると、放出地点近くの魚類のトリチウム濃度は放出2カ月後に10倍になっている」(ペク・トミョン元ソウル大学保健大学院長)と指摘されてもいる。日本政府は今年2月以降、放射能に関する資料も提供していない。尹錫悦政権には、せめて一度は日本ではなく国民を代弁してもらいたい。
(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-23 18:03


「聯合ニュース」 2024.08.23 14:37
■汚染水海洋放出から1年 野党の「怪談」は偽り=韓国大統領室
【ソウル聯合ニュース】韓国大統領室は23日、日本が東京電力福島第1原発の処理済み汚染水の海洋放出を開始してから1年を迎えたが科学的な問題はなかったと強調し、最大野党「共に民主党」をはじめとする野党が主張した科学的根拠のない「怪談」は偽りだったことが明らかになったと批判した。

【写真】会見を行う大統領室のチョン・ヘジョン報道官=23日、ソウル(聯合ニュース)

 大統領室のチョン・ヘジョン報道官はこの日の記者会見で「科学的根拠のない荒唐無稽な怪談が偽りの扇動であることが明らかになったにもかかわらず、怪談の出どころである野党は国民に謝罪すらせず無責任な行動を見せている」と指摘した。
 また、政府は海水に含まれる放射性物質の調査地点を92か所から243か所に拡大し、輸入申告された全ての水産物について生産地証明書を確認したと説明。この1年間に国内の海域や公海などで試料を採取し、約4万9600件の検査を行ったが、安全基準を上回ったことはなかったと強調した。
 さらに、調査に投入された予算1兆6000億ウォン(約1740億円)は野党が科学的根拠を信頼していれば社会的弱者のために使うことができた血税だとして、謝罪と再発防止を求めた。
 一方、大型スーパー3社の水産物の売上高は例年の水準を上回り、日本産水産物の輸入も昨年より増えるなど水産物の消費が増加したと説明し、政府は今後も国民の安全を最優先に科学的根拠に基づいた徹底的な検証を行うと約束した。
 大統領室の関係者は「科学的かつ客観的な根拠と検証を通じて対応すれば、今後も不必要な費用や行政力の無駄遣いが減るのではないかと考えてこのような会見を行った」と説明した。


「The Hankyoreh」 2024-08-23 13:34
■福島原発の核燃料デブリ取り出し…着手できず作業中止
 取り出し装置の設置に不具合発見

【写真】日本の福島第一原発の爆発事故から20日余りが経った2011年3月30日、ドローンで撮影した福島原発の様子/EPA・聯合ニュース

 2011年3月に東日本大震災で爆発事故があった福島第一原発で、溶けた核燃料の残骸を取り出す作業が13年半で初めて試みられる予定だったが、装置設置の問題で中止された。「核燃料の残骸取り出し」は、24日で1年を迎える汚染水の海洋放出を終了させるための前提条件である福島第一原発の廃炉のためにも最も重要な作業だ。
 東京電力は22日午前、福島第一原発2号機の原子炉で溶けた核燃料の残骸(デブリ)を試験的に取り出す作業を始めようとしたが、取り出し装置に不具合が発見され、直ちに中止したと発表した。この日作業は再開せず、その後の日程は決まっていない。
 人が近づくと1時間以内に死亡しうる高線量の放射線が出る核燃料デブリの取り出しは、福島第一原発の廃炉過程で最も重要で最も難しい作業だ。東京電力はこの日の事故後、13年半ぶりに2号機の原子炉を覆う格納庫の内部に通じる直径60センチの配管の中にパイプ状の装置を入れて、約3グラムの核燃料デブリを取り出す計画だった。このため、東京電力は長さ約22メートルの伸縮型のパイプ装置を新たに開発し、パイプの先に爪形の装置も取り付けた。デブリからは人が近づくと1時間以内に死ぬほどの高線量の放射線が漏れるため、遠隔で操作する装置を新たに開発しなければならなかった。NHKは「5本ある押し込みパイプの順番が間違っていることに作業員が気づき、午前9時前に作業を中断した」と伝えた。

【写真】福島第一原発から溶け出した核燃料デブリを取り出すための装置。この装置は三菱重工業が開発し5月に公開された/AP・聯合ニュース

 東京電力は、順調に作業が進められたとしても核燃料の試験搬出だけで少なくとも1週間から2週間はかかると予想した。今回、原子炉からデブリを取り出すことに成功すれば、茨城県にある日本原子力研究開発機構に移され、核燃料の残骸の性質や状態など半年ほど詳しい分析が行われる予定だ。
 福島第一原発の1~3号機の原子炉の床に残っている核燃料デブリは計880トンに達する。2011年3月の東日本大震災の際、巨大な津波が発生して福島原発を襲い、冷却装置が麻痺し、1~3号機の原子炉の核燃料棒が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶けた核燃料は周辺の構造物を溶かして塊(デブリ)になったまま原子炉の底に残っている。
 原子炉から核燃料供給装置を取り出して除去する作業は、世界で前例がない。旧ソ連時代の1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の場合、核燃料が溶けて大量の残骸が残っていたが、取り出さずにコンクリートで構造物を覆う方式を選択した。
 このような理由から、核燃料デブリを取り出す作業は遅れている。2号機は当初2021年に始める予定だったが、3年も遅れた。しかも1、3号機は内部調査もまともに行われず、処理時期はもちろんどのようにデブリを取り出すべきかの方法すら決まっていない状態だ。デブリの取り出しが遅れれば、日本政府の2041~2051年の原発廃炉計画も遅れるのは避けられない。NHKは「福島第一原発では、核燃料デブリが原子炉の外まで広がっているほか、デブリの総量はチェルノブイリ原発やスリーマイル島原発の5倍から7倍近くに上るとみられ、取り出しの難しさが指摘されている」と指摘した。
 汚染水は毎日約90トンほど新たに出ているため、廃炉が完了しなければ放出がいつ終わるか分からない状況だ。福島原発汚染水の1回目の放出は昨年8月24日に始まり、これまで約5万5千トンの汚染水が海に流れた状態。今月7日から8回目の放出が始まった。
東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2024-08-22 20:52


「The Hankyoreh」 2024-08-23 06:54
■核汚染水投棄から1年「中国・太平洋諸国とともに日本を提訴すべき」
 22日、「汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」の国会討論会

【写真】22日午後、ソウル汝矣島の国会本庁階段前で「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」のメンバーたちと国会議員らが日本の放射性物質汚染水の海洋投棄から1年を迎え記者会見を行っている=共同行動提供//ハンギョレ新聞社

 日本政府が福島原子力発電所(原発)の放射性物質汚染水の海洋投棄を始めて1年になる24日を控え、「周辺国と協力して国際提訴をするなど対応すべき」という声があがった。核汚染水の海洋投棄は朝鮮半島だけの問題ではないため、太平洋島しょ国などと協力して問題を提起しなければならないという主張だ。
 22日、韓国国内の市民・環境団体で構成された「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」(共同行動)と「民主社会のための弁護士の会」(民弁)などは22日午前、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会議員会館で討論会を開き、日本の核汚染水投棄に対する法律的争点と今後の課題について話し合った。
 討論者を務めたキム・ヨンヒ弁護士(脱核法律家の会「ひまわり」)は「投入された物質とその影響間の因果関係を証明する決定的証拠がなくても、廃棄物投棄による環境保護のために適切な事前措置を講じなければならない」というロンドン条約の「事前主義原則」をに触れ、「福島原発汚染水に対しても適用されるべきだ」と強調した。
 さらに、「日本の核汚染水の放出問題は、韓国だけの問題ではなく、地球に住むすべての人たちの問題だ」とし、「韓国政府単独で国際海洋法裁判所に提訴すれば、韓国の直接的な被害を立証しなければならないが、中国政府や太平洋島しょ国の一部の国と共同で提訴すれば、『公海上の海洋汚染』に対する問題提起ができる」と説明した。日本の核汚染水の海洋投棄が、地球に住むすべて人々の海洋環境を損ねるためだという説明だ。キム弁護士は「現政権で難しくても、政権が変わればこれも考えられる方法になる。事前に準備をしなければならない」と付け加えた。

【写真】昨年8月24日、日本の福島県大熊にある福島第一原子力発電所で空中撮影した写真。放射性物質が含まれた水の入ったタンクが並んでいる/EPA・聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はこの問題について解決の意志がないため、野党が乗り出して国民保護に向けた立法に努力を傾けなければならないという声もあがった。同じく討論者を務めた「共同行動」のクォン・ジョンタク共同運営委員長は「新たに国会が始まっただけに、中国、香港、ロシアのように日本産水産物の輸入を全面禁止する措置をしたり、学校給食に放射性物質汚染の可能性のある食材を使用できないようにするなど、関連法案を作る野党の努力が切に求められる。法制定前でも、地方自治体レベルで条例を作るなどの方法で、速やかに進めてほしい」と語った。
 核汚染水による被害問題は、十分な時間をかけて長期間にわたり確認すべきとの指摘もあった。韓国と日本の原発問題を長い間研究してきた日本の松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)名誉教授は「汚染水投棄問題は長期的被害を調べなければならないのに、韓国政府は『1年間何の問題もなかった』とし、汚染水に関する懸念を怪談だといって切り捨てている」とし、「この事案の原因をちゃんと理解していない。チェルノブイリ原発爆発当時にも即死した人は多くなかった」と指摘した。
 さらに張教授は「いま重要なのは、輸入水産物に対してストロンチウム89・90を測定した結果を必ず添付するよう日本政府に要求すること」だとし、「これまでは測定に一週間かかるとか、水産物の鮮度に影響を及ぼすという口実で日本政府が避けてきたが、最近は短い期間(2~3日)で測定できる方法が見つかったという報道が日本国内で出た」と語った。ストロンチウムはカルシウムと似た性質で、体内に入ると骨に簡単に蓄積され、骨髄がんと白血病の原因になりうる。
 チュ・ジェジュン共同運営委員長は「昨年10月には(核汚染水浄化設備の)ALPSの配管を清掃していた労働者が事故に遭っており、12月には2号機の廃炉作業をしていた作業者が被ばくするなど、核汚染水の放出以降、日本では事故が相次いでいる。日本のマスコミも『安全ではない」と問題提起をしているにもかかわらず、韓国政府は『安全だ』と主張し、日本政府がやるべきことを代わりにやっている」と批判した。
 一方、国務調整室は21日に資料を出し「昨年8月24日から今年8月19日まで4万9633件の放射能検査を実施した結果、韓国の海域と水産物、船舶のバラスト水のいずれも安全基準から外れた事例はなかった」と発表した。日本の東京電力はこれまで5万5000トンの汚染水を海に流しており、7日から8回目の放出を行っている。
ユン・ヨンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-22 18:39


「The Hankyoreh」 2024-08-22 18:17
■【現場】「汚染水その後の30年」を嘆く福島の漁業者、その海には避暑客らが
 福島第一原発の汚染水海洋放出から1年…25日まで8回目の放出

【写真】18日、福島県南相馬市では、市が運営する北泉海水浴場で避暑客が遅い避暑を楽しんでいる=ホン・ソクチェ記者//ハンギョレ新聞社

 「日本政府と東京電力はこの1年間、処理水(汚染水)の放出で今は人々の体に異常がないと言うが、10年、20年、30年後にどんな影響があるのか誰も断言できない」
 18日、福島県の漁村の新地町で会った漁師の小野春雄さん(72)は、日本政府が昨年8月24日に始めた福島第一原発の汚染水放出についてこのように嘆いた。父親と祖父が漁師で、自身も15歳から海で仕事を始めた。3人の息子も家業を引き継いだ。孫たちも福島県に住んでいる。しかし、2011年の福島第一原発の放射性物質漏れ事故で、小野さんの人生は大きな変化を迎えた。
 事故後、福島の漁業は大打撃を受け、中断された。日本政府は2020年にすべての魚種に対する出荷制限を解除し、福島沿岸の漁業者たちも期待に胸を膨らませたが、昨年には汚染水放出という事態に見舞われた。日本政府は放射能汚染水を多核種除去設備(ALPS)を通して、水と似た性質を持つ「トリチウム」を除く放射性物質を基準値以下に除去した後、海水で薄めて海に流すため被害はないとし、福島の漁業者の反対を押し切って汚染水の放出を強行した。
 日本では、福島産の水産物を買わないのは、デマによる被害を意味する「風評被害」と主張されている。しかし、小野さんは「汚染水を数十年間(海に)放出するのに、トリチウムなどによる海の被害を本当に予測できるのか」と語った。
 「これ以上海を汚すな!市民会議」の活動家、片岡輝美さんはハンギョレとの電話インタビューで、「子どもたちにこの近くで獲れたどの魚を食べさせたらいいのか、心配は尽きない」と話した。また、「漁業者の中には、自分たちが怒れば怒るほど水産物が売れなくなるという矛盾した状況で、声をあげづらいという人も多いようだ」と語った。

【図】福島第一原発の汚染水放出の現況//ハンギョレ新聞社

 元東京海洋大学教授の濱田武士さん(水産学)ら専門家8人は、著書『どうするALPS処理水?科学と社会の両面からの提言』で、現地の漁業者たちは処理水の放出を認める場合は「海を売った」、反対する場合は「国益を損ねる」と批判されるとし、(日本政府が)政治的責任を漁業者に転嫁していると批判した。
 一方、新地町から南に25キロメートル離れた福島県南相馬市では、市の運営する北泉海水浴場で避暑客が海水浴を楽しんでいた。わずか25キロメートルの距離の福島第一原発では7日から「8回目の汚染水放出」が行われているが、避暑客は海水浴に余念がなかった。ここを訪れたある避暑客は「水質が良くて2人の子どもと泳いできた。放射線は全くない」と日本政府の発表を完全に信頼しているようだった。
 東京電力は昨年8月24日以降、すでに7回にわたり汚染水の放出を行った。1回の放出に約17日かかり、一日約460立方メートルずつ、計7800立方メートルの汚染水が排出される。これまで計5万4734立方メートルの汚染水が海に流れた。7日に再び8回目の放出が始まり、25日に終了する予定だ。
 汚染水は2011年の東日本大震災の福島第一原発爆発事故後、原発に雨水などが流れ込み、放射性物質と接触したことで発生している。東京電力は事故後、汚染水を水タンクに保管してきたが、福島第一原発の廃炉作業のため、これ以上水タンクを増やすことはできないとし、2021年4月に汚染水の海洋放出を決めた。東京電力は19日現在、タンクに保管されている汚染水は131万立方メートルで、タンクの収容限界の96%を占めていると発表した。
 日本政府はALPSでトリチウムを除く放射性物質のほとんどを基準値以下に除去するため、汚染水ではなく「処理水」だと主張する。放出前に汚染水を海水に混ぜて薄めた後、福島沿岸へと続く1キロメートルの海底トンネルを通じて流している。

【写真】昨年8月24日、福島県の福島第一原発で、海水で薄めた放射性物質汚染水が海底トンネルに流れていく様子を関係者たちが見ている。日本は同日午後1時3分頃から福島原発敷地内の水タンクに保管されていた汚染水を福島沖合へと続く海底トンネルを通じて放出し始めた=福島/共同通信・聯合ニュース

 日本政府は汚染水が海の環境と人体に及ぼす悪影響が極めて微々たるものだと主張している。安全性を示すとしてALPSで濾過されたいわゆる「処理水」の中でヒラメなどを育て、これをソーシャルメディアのX(旧ツイッター)などで3~4日おきに公開している。
 東京電力はこの1年間の汚染水の排出過程で出たトリチウムの総排出量は8兆6千億ベクレル(2023年4.5兆ベクレル、2024年8月現在4.1兆ベクレル)になるとみている。韓国の古里(コリ)原発から出るトリチウム(1年に49兆ベクレル)より低い数値だと主張する。日本は汚染水の放出前からこのような論理を掲げているが、事故で水素爆発が起きた福島第一原発と正常稼動中の他の原発をトリチウムの排出量だけで比較するのは無理があるという批判が多い。
 少なくとも数十年間続く福島原発の汚染水の放出が、いつ終わるのかも分からない。日本は2051年までに福島原発を廃炉することを目標に掲げ、廃炉が完了すれば、これ以上汚染水も発生しないと期待している。
 だが、日本は廃炉のために最も重要な作業である「燃料デブリ」(核燃料が溶けて周辺構造物と絡まった塊)の取り出しにはまだ手をつけられずにいる。福島原発1~3号機の原子炉の床に残っている計880トンに達する燃料デブリは、人が近づくと1時間以内に死ぬほどの高線量の放射線を放出する。そのため、人の代わりにロボットが入って作業をしなければならないが、ロボットアームの性能に立て続けに問題が生じている。
 東京電力は22日、パイプを遠隔操作する方式で試験的に3グラム以下の燃料デブリを取り出すことにした。事故後13年も経ってから始まったこの試みが成功したとしても、880トンにもなる燃料デブリをいつ全部取り出せるかは不明だ。燃料デブリを除去できなければ、1日80トン程の放射性物質汚染水が発生し続ける。
 日本は国際原子力機関(IAEA)を前面に立てて国際世論戦を繰り広げているが、直接影響を受ける周辺国の多くは納得していない。中国は先月30日にも呉江浩駐日大使を通じて「日本が汚染水の海洋放出を一方的に進め、核汚染の危険を全世界に拡散させている」とし、「中国はこれに断固反対する」という立場を示した。
 ロシアも、日本政府は日本産水産物の安全性を立証する情報を開示すべきだと主張する。中国は昨年8月24日に日本が汚染水の海洋排出を始めたことを受け、日本産水産物の輸入禁止措置を取り、ロシアも昨年10月、同じ措置を取った。

【写真】日本の福島原発から50キロメートルほど離れた漁村の新地町で、並んでいる漁船の隣で住民が釣りをしている=ホン・ソクチェ記者//ハンギョレ新聞社

 日本の汚染水管理のミスも批判を呼んでいる。9日、福島原発2号機内部の使用済み核燃料プールから放射性物質を含む汚染水25トンが流れた。東京電力は、汚染水が排水口を通じて建物の地下に流れ込んだものと推定されるとし、外部への流出はなかったと発表したが、管理の甘さに対する批判は免れない。
 今年2月には福島沿岸に放出されている汚染水浄化装置から5.5トンが漏れる事故があった。閉まっているはずのバルブが誤って開き、配管に残った汚染水と洗浄用水が混ざって排気口から流れ出たという。昨年10月にも配管を掃除していた職員2人が汚染水を浴びて治療を受けたことがある。
 2011年の福島原発事故の責任を問うため、事故当時の東京電力の経営陣を告訴した「福島原発告訴団」の原告団長、武藤類子さんは、ハンギョレに「東京電力は汚染水の放出後、海の放射性物質は大きく増えていないと主張するが、放出によってどんな影響が発生するかは誰も分からない」とし、「APLSの処理過程で汚染水が漏れたことまであるのに、汚染水の放出を直ちに中止してほしい」と語った。
 「これ以上海を汚すな!市民会議」など、日本の市民団体は汚染水の放出開始から1年となる今月24日、汚染水放出中止に向けた国際連帯行事「グローバル行動2024」を開くことにした。
福島/ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-2109:24


「The Hankyoreh」 2024-08-15 07:48
■福島第一原発の汚染水25トンが水漏れ…位置も原因も不明
 2月の5.5トン流出に続き、またもや発生 
 東京電力「原因把握中」

【写真】福島第一原発敷地のタンクに保管中の放射性物質汚染水/聯合ニュース

 福島第一原発2号機の建屋内の使用済み核燃料を冷却するプールの水位を確認する施設から、放射性物質を含む汚染水25トンが漏れ出した事実が後になって分かった。
 14日付のNHKの報道によると、9日、福島第一原発2号機の原子炉建屋5階にある使用済み核燃料冷却プールの水位を確認するタンクで、水位が異常に低くなったことを職員が発見し調査する過程で、水漏れが確認された。漏れ出した汚染水の量は約25トンと推定される。
 東京電力は、汚染水が排水口を通じて建屋の地下に流れた込んだものとみられ、外部への流出はなかったと述べた。核燃料の冷却にも問題はないと説明した。東京電力は今週、調査用ロボットを使って水漏れが起きた正確な場所と原因を把握する予定だ。
 福島第一原発内の相次ぐ事故で不安が高まっている。今年2月には福島の海に放出中の汚染水の浄化装置から5.5トンが漏れ出す事故があった。閉っていなければならないバルブが誤って開き、配管に残った汚染水と洗浄用水が混ざって排水口から流れたという。昨年10月にも配管を掃除していた職員2人が汚染水を浴びて治療を受けている。

東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2024-08-14 10:47
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「韓国の原爆被害者団体「受け継がれる被爆被害に背を向ける政府…韓米合同演習に反対」」

2024年08月22日 | 
「The Hankyoreh」 2024-08-21 08:22
韓国の原爆被害者団体「受け継がれる被爆被害に背を向ける政府…韓米合同演習に反対」

【写真】韓国の原爆被害者団体が韓米連合軍事演習「乙支フリーダムシールド」に反対し記者会見を行っている=チェ・サンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の原爆弾被害者団体が19~29日に開かれる韓米合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド(自由の盾)」に反対を表明した。朝鮮半島の緊張状態を高め、核戦争の口実を提供する恐れがあるという懸念からだ。
 市民団体「慶南キョレハナ(民族は一つ)」は20日、慶南道庁プレスセンターで、「この地に核兵器と日本(自衛隊)は絶対に入らせてはならない」というタイトルの記者会見を開いた。同会見に原子爆弾被害者たちも出席し、「乙支フリーダムシールド」の中断を求めた。
 韓国原爆被害者子孫会のイ・テジェ会長は「日本と米国政府は原爆被害者に対する謝罪・補償と共生に向けて努力しなければならない。また、韓国政府は『韓国人原爆被害者支援のための特別法』を改正し、被爆後遺症を引き継いで苦しんでいる原爆被害者の子孫を慰め、支援すべきだ」とし、「韓国に原爆被害者がいるという事実さえ知らない人も多い。韓国政府がこの問題に無関心なのは非常に残念だ」と語った。
 原爆被害者の憩いの場である「陜川(ハプチョン)平和の家」のイ・ナムジェ院長は「被爆後遺症は現在、直接被爆者の曾孫にまで現れている。遺伝体の変形で後遺症が引き継がれるからだ。精神疾患や皮膚疾患、がんなどが多く、乳児死亡率も高い」とし、「地球上に二度と核戦争が起きてはならない。われわれのような核戦争の被害者が再び生まれてはならない」と話した。
 韓国原爆2世患友会の会員ムン・ジョンジュさんは「広島で被爆した父は両目を失明した。それから10年後に生まれた私の兄は、生まれた時から目が見えないなど障害を持っている。また、私と妹も幼い時からあらゆる病気に苦しんでいる」とし、「私たちの家庭を破壊した日本と米国政府の謝罪を必ず受けなければならない。なのに、むしろ米国と日本の軍隊を引き入れようとする韓国政府を理解できない」と語った。
 1945年8月6日に広島、8月9日に長崎で原爆が投下された時、合わせて約28万人が被爆したが、当時韓国人も約7万人が被爆し、4万人が命を失った。解放後、生存者3万人のうち2万3千人が帰国したが、命を取り留めた人も様々な後遺症に苦しんだ。
 その上、解放後に生まれた彼らの子孫たちは原爆にさらされなかったにもかかわらず、親から被爆後遺症を受け継ぎ、苦しんでいる。しかし、被爆後遺症の継承が立証されていないという理由で「韓国人原爆被害者支援のための特別法」は直接被爆者だけを被害者として認めている。
チェ・サンウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-08-20 16:45


「The Hankyoreh」 2024-08-20 06:31
■【独自】韓国国防長官候補、4年前にも「核なしに未来はない」…独自の核武装論
 「核武装、あらゆる手段は開かれている」発言で波紋 
 NPT加盟国の独自の核武装は不可能であるうえに 
 尹政権の「韓米同盟基盤」基調とも反する

【写真】韓国国防部長官候補のキム・ヨンヒョン氏が16日午前、ソウル龍山区の陸軍会館に設けられた人事聴聞会の準備事務室に出勤し、取材陣の質問に答えている/聯合ニュース

 韓国の国防部長官候補のキム・ヨンヒョン氏が、4年前のあるセミナーで「核武装なしにわれわれの生存と未来はない」と主張したことが確認された。韓国は核兵器不拡散条約(NPT)加盟国であるため独自の核武装は不可能だが、そのような状況を無視した主張だ。そればかりか、韓米同盟を基盤にした拡大抑止という尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の基調にも反するという指摘が出ている。
 ハンギョレが18日に祖国革新党のチョ・グク議員室を通じて確保した、2020年6月の「6・25戦争(朝鮮戦争)70年 回顧と反省」と題する政策セミナーの映像によると、キム候補は「日本は核武装に取り組むだろう。北朝鮮と日本まで核武装をすれば(韓国は)周辺国から核で包囲される」とし、このように述べた。明確な根拠もなく「日本の核武装」を断定し、独自の核武装論を展開したのだ。キム候補は16日の出勤途中の取材でも、独自の核武装の可能性に関する記者団の質問に対し「すべての手段と方法は開かれている」と答え、こうした考えが依然として変わっていないことを示した。当時のセミナーは、シン・ウォンシク国防部長官兼大統領室国家安保室長が与党「国民の力」の議員だったときに主催したもの。
 キム候補はセミナーで、独自の核武装が国際的な経済制裁につながるという指摘に対して、「米国は同じ理念の国が核武装する場合は経済制裁を非常に軽くしたり、あるいは全くしていない」とし、英国やフランス、インド、パキスタン、イスラエルがそのような事例だと説明した。しかし、英国とフランスはNPTが作られる前に核を開発したため、参考すべき事例ではない。またインド、パキスタン、イスラエルは実質的な核保有国であるがNPTに加盟しておらず、韓国とは事情が異なる。キム候補はこのような背景を切り離し、まるで韓国独自の核武装が可能であるかのように事実関係を歪曲したのだ。
 キム候補は2021年1月6日付の中央日報のコラムでも「最悪の状況に備えた戦術核の再配置や自衛権的な核武装という切り札を念頭に置く必要がある」とし、同様の主張を展開した。韓国経済の2020年2月5日のコラムでは、「NPTの第10条1項には『国家の利益を危うくしていると認める場合には(条約から)脱退する権利を有する』と明記されている」と述べた。
 これに対してチョ・グク議員は「韓国が独自の核武装を主張するだけでも、北東アジアでの安全保障上の不安は全く新しい次元の問題となる」とし、「日本や台湾の核武装を触発させ、中国・ロシア・北朝鮮との核競争で安全保障の不安が高まるだけだ。このような無能で危険な人物は、国防長官としてふさわしくない」と述べた。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1154211.html
韓国語原文入力:2024-08-19 07:53
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「ザポロジエ原発火災を巡って非難応酬…「ウクライナの核テロ」「ロシアの自作劇」」

2024年08月14日 | 
「中央日報日本語版」 2024.08.13 06:54
■ザポロジエ原発火災を巡って非難応酬…「ウクライナの核テロ」「ロシアの自作劇」

【写真】ウクライナ軍人[ウクライナ国防総省のSNS キャプチャー]

 ロシア本土を急襲したウクライナ軍がクルスク原発に向かって進撃している中で、ロシアが占領中のウクライナ・ザポロジエ原発で火災が発生した。
 11日(現地時間)、ロイター通信などはザポロジエ原発で火災が発生し、冷却塔の一つが損傷したと伝えた。ロシア当局者は火災による原発の安全への影響はなかったと明らかにした。今回の火災で放射能の漏出はなかった。ザポロジエ原発6基は戦争勃発直後の2022年9月に稼働が中断している。
 両国は互いに相手のことを強く非難をしている。ロシア国営原発企業ロスアトムは声明を通じて「11日午後8時20分と32分ごろ、ザポリージャ(ザポロジエ)原発の2個の冷却塔のうちの一つがウクライナの攻撃型ドローンの直撃を受けて火災が発生した」とし、今回の火災をウクライナの「核テロ」と主張した。
 反面、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍がザポロジエ原発に火を付けたとして「ロシアは必要な場合、ザポロジエ原発を破壊してウクライナに核の災害をもたらすことができるという事実を暗示してウクライナを圧迫しようとしている」と非難した。
 特に今回の火災は、ウクライナがロシア本土で6日間にわたり地上戦を継続する中で発生した。ロシア国防省はこの日、「国境からそれぞれ25キロメートル、30キロメートル離れたトルピノとオブシュチ・コロデズでウクライナ軍機動隊の突破の試みを遮断した」と明らかにした。事実上、ウクライナ軍がロシア本土内の最大30キロ地点まで進入した事実を認めたのだ。
 ウクライナ軍もクルスク州の複数の町を占領したと主張している。国境から約3キロ離れた町グエボでではウクライナ軍が官公庁からロシア国旗を除去する写真が公開された。ガーディアンなど外信はウクライナ軍が大規模原発のあるクルスク州のクルチャトフに向け進軍中だと伝えた。現在戦闘が起きているオブシュチ・コロデズからクルチャトフ原発までは50キロメートル以内だ。
 BBCによると、ウクライナ軍の侵攻から敗退中のロシア軍はクルチャトフ原発近くに新たな防衛ラインを構築している。国際原子力機関(IAEA)は両国に対して「最大の自制力を発揮すべき」と促した。
 ロシア側の民間人被害も相次いでいる。クルスク州のアレクセイ・スミルノフ知事代行は12人が亡くなって121人がけがをしたと明らかにした。スミルノフ氏は現在まで12万1000人が避難したと付け加えた。
 ロシアのプーチン大統領は12日、「ロシア領土から敵を追い出すのが国防省の主な任務」と話したとBBCが伝えた。報道によると、プーチン大統領はこの日会議を招集してこのように話した。また「ウクライナの奇襲攻撃は交渉でもう少し有利な立場を確保しようとするためのもの」と付け加えた。BBCは、スミルノフ氏がこの日「ウクライナはロシア領土内の12キロまで進入し、28個の町が敵の統制に置かれるなど状況が厳しい」と明らかにしたと伝えた。
 こうした中、一部の専門家はウクライナ軍が善戦を続けるのは容易ではないと展望した。英国王立防衛安全保障研究所のマイケル・クラーク特別研究員は10日、英紙タイムズの寄稿文で「今回の作戦は仁川(インチョン)上陸作戦と肩を並べるほど危険な作戦だが、仁川上陸作戦とは違って戦争の局面を反転させることはできないだろう」と見通した。


「中央日報日本語版」 2024.08.12 16:39
■ロシアが占領するザポロジエ原発で火災…ウクライナはロシア領内に30キロ進軍
 ウクライナとロシアの戦争が原発の安全性問題に広がっている。ロシア本土を急襲したウクライナがロシアのクルスク原発に向かって進撃中の中、ロシアが占領するウクライナのザポロジエ原発では火災が発生した。国際原子力機関(IAEA)は両国に核施設を危険に陥れかねない軍事行動を最大限自制するよう促した。

◇欧州最大の原発団地ザポロジエに火の手
 ロイター通信とBBC、キーウ・インディペンデントなどは11日、ロシアが占領する欧州最大の原発団地であるウクライナのザポロジエ原発で火災が発生し、冷却塔のうち1基が損傷したと伝えた。ただ冷却塔で起きた火災は原発安全に影響を及ぼしておらず爆発などの可能性はないという。
 今回の火災で放射能漏れはなかった。ザポロジエ原発6基はウクライナ戦争勃発直後の2022年9月に冷温停止状態に転換され稼動が中断された。
 両国は火災の責任は相手方にあるとしている。ロシア国営原発企業ロスアトムは声明を通じ「11日午後8時20分と32分ごろザポロジエ原発の2基の冷却塔のうち1基がウクライナの攻撃型ドローンに直撃され内部で火災が発生した」とし、今回の火災原因はウクライナが犯した「核テロ」と主張した。
 これに対しウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍がザポロジエ原発に火を付けたとし、「ロシアは必要な場合、ザポロジエ原発を破壊しウクライナに大規模核災害を与えられるという事実を暗示してウクライナを圧迫しようとするもの」と非難した。ザポロジエ原発があるエネルホダル近くのウクライナ当局者はロシア軍が冷却塔の中でバイク用タイヤを燃やして火災を起こしたと主張した。
 今回の火災はウクライナがロシア領内に進入し6日にわたり地上戦を継続する中で発生した。ロシア国防省はこの日、「国境からそれぞれ25キロメートル、30キロメートル離れたトルピノとオブシュチ・コロデズでウクライナ軍機動隊の突破の試みを遮断した」と明らかにした。事実上ウクライナ軍がロシア領内に最大30キロメートル地点まで進入した事実を認めたのだ。
 ウクライナ軍もクルスクの複数の村を占領したと主張している。ロシア領内に約3キロメートル入ったグエボではウクライナ軍が官公庁からロシア国旗を除去する様子が写真で公開された。スウェルドリコボとポロズの官公庁も占領したという。
 ガーディアンなど外信はウクライナ軍が大規模原発のあるクルスク州のクルチャトフに向け進軍中だと伝えた。現在戦闘が起きているオブシュチ・コロデズからクルチャトフ原発までは50キロメートル以内だ。
 BBCによると、ウクライナ軍の侵攻から敗退中のロシア軍はクルチャトフ原発近くに新たな防衛ラインを構築するなど原発防衛に万全を期している。国際原子力機関(IAEA)はクルチャトフ原発周辺で戦闘が拡大しているとしながら両国に「最大の自制力を発揮すべき」と促した。
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「韓国市民団体「広島・長崎への原爆投下は国際法違反…米国の責任を問う」」

2024年06月05日 | 
「The Hankyoreh」 2024-06-05 08:35
■韓国市民団体「広島・長崎への原爆投下は国際法違反…米国の責任を問う」
 [インタビュー]原爆国際民衆法廷を準備するイ・ギヨルさん、オ・ヘランさん 

【写真】7~8日に広島で開かれる「米国の核兵器投下の責任を問う原爆国際民衆法廷・第2回国際討論会」を準備する韓国原爆被害者協会のイ・ギヨル監査(左)と「平和と統一をひらく人たち」のオ・ヘラン執行委員長(右)//ハンギョレ新聞社

 「私たち被爆者が本当に望むことは、米国が1945年に広島・長崎に核を投下したことを謝罪し、それを出発点に全世界の核が鉄くずになる日を迎えることです」(韓国原爆被害者協会のイ・ギヨル監査)。
 「米国の原爆投下が1945年の当時の国際法でも違法だということを『原爆国際民衆法廷』で明らかにすることが、原爆をなくす過程で重要なきっかけになると思います」(「平和と統一をひらく人たち」のオ・ヘラン執行委員長)
 先月29日、ソウル市西大門区忠正路(ソデムング・チュンジョンノ)3街にある平和運動市民団体「平和と統一をひらく人たち」本部で会ったイ・ギヨルさんとオ・ヘランさんの誓いだ。二人は7~8日、広島で開かれる「米国の核兵器投下の責任を問う原爆国際民衆法廷・第2回国際討論会」にともに参加する。今回の国際討論会は、2026年にニューヨークで開かれる原爆国際民衆法廷へと向かう重要な一歩だ。韓国、日本、米国、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなどの学者が参加する今回の国際討論会では、広島・長崎への原爆投下の違法性を精密に調べる予定だからだ。その後の2年間で補完点を点検した後、ニューヨークで米国の違法性を最終的に宣告する予定だ。
 イさんは原爆国際民衆法廷に米国を告訴した原告であり、オさんは韓国原爆被害者協会から裁判進行の依頼を受けた「平和と統一をひらく人たち」を代表し、民衆法廷の準備を総括している。

 米国の核兵器投下の違法性を問う
 2026年の「原爆国際民衆法廷」に先立ち 
 7~8日に広島で国際討論会参加
 一家7人が被爆したイ・ギヨル監査
 民衆法廷に米国を告訴した原告
「核の違法性の国際認識が高まれば」 

民衆法廷の準備を総括するオ・ヘラン執行委員長
「有罪判決後、民事訴訟提起を計画」
 イさんが原爆国際民衆法廷に米国を告訴するのは、約7万~10万人に達する「朝鮮人被爆者の恨(ハン)」を代弁した行動だ。被害者はほとんどが徴用などによって広島と長崎に連れていかれた人たちだ。このうち現時点で生存している人はわずか1800人ほど。生存者もほとんどが生涯を通じて被爆の後遺症に苦しめられた。
 「1945年3月、広島で5人きょうだいの末っ子として生まれました。鉄道労働者として広島に行った父をはじめ、母を含む一家7人が同年8月6日に全員被爆しました」
 イさんの家族は解放(日本の敗戦)後、11月に釜山(プサン)に帰国したが、待っていたのは貧困と被爆の後遺症との長い戦いだった。
 「両親は後遺症でたいへん苦労しました。特に母は毒薬に使われる植物のヤマゴボウなどを使った民間治療法で治療しました。ところでそれは間違っていて、1970年代半ばに68歳の年齢で亡くなりました」。
 当時日本は1957年に「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」を制定し、日本人被爆者の治療は支援したが、日本在住者に限定しており、韓国に戻った被爆者は除外された。
 「私も4歳の時から、夜にふとんに横になると、鼻腔が痛くて眠れませんでした。マスクを使ってやっと眠りにつくことができました。その後も、お尻を毎日消毒する必要があるほど皮膚病がひどく、鼻と首に出たこぶの除去などのために手術を7回もしなければなりませんでした」
 韓国の被爆者たちは、韓国政府の無関心のなか、このような苦痛を乗り越えるため苦しみながら闘い抜いた。日本政府などを相手取り28回も訴訟を起こし、25回勝訴した。そのような困難な過程を経て、被爆の後遺症の治療において日本人との差別をなくした。
 しかし、さらに大きな問題は米国だった。原爆投下の当事者である米国はその間、なんの謝罪もせず、誰も処罰を受けなかった。これに対し、1967年に「韓国原爆被害者協会」を設立した被爆者たちは、米国大使館の前で謝罪を求めるデモを行ったりもした。しかし、陣営対立の時期に米国に矢を向けることは敏感な問題だった。「米国が広島・長崎に原爆を投下したおかげで解放が早まった」という一部の世論も障害になった。
 このような状況で、韓国原爆被害者協会のシム・ジンテ陜川(ハプチョン)支部長(81)が2015年5月に国連で行なった核兵器不拡散条約(NPT)検討会議での演説は、重要なきっかけになった。当時シムさんは「いまや被爆者が立ち上がり、二度と核兵器を使えないようにする運動を行わなければならない」として、「まず最初に米国に自己責任を認めさせるようにする」と明らかにした。
 その演説が原爆国際民衆法廷の出発点となった。シム・ジンテさんは現在、イさんとともに民衆法廷の原告として参加している。その後は、韓国原爆被害者協会が民衆法廷の進行を「平和と統一をひらく人たち」に依頼してきた。
 「平和と統一をひらく人たち」は民衆法廷は「容易ではない闘い」だと考える。まず、米国の国内法には原爆投下を処罰する規定がない。国際法で闘うべきだが、NPTの設立などの核関連の国際法にも米国の影響力が強い。同盟国である米国の過ちを問うという点で、韓国の保守陣営の反発も強まる可能性がある。オ・ヘランさんは「『平和と統一をひらく人たち』内で、『困難かもしれないが、それでもお年を召した被爆者の方々がやるというのであれば、私たちが支えないわけにはいかない』となり、『やろう』という結論に至った」と述べた。

【写真】第2回国際討論会のポスター=「平和と統一をひらく人たち」提供//ハンギョレ新聞社

 原爆国際民衆法廷では、この問題を「人道法」などに基づいて解決していく計画だ。昨年6月7日、慶尚南道陜川で開かれた第1回国際討論会では「広島・長崎への原爆投下が戦時に適用される国際人道法の『基本原則』である区別の原則(民間人への攻撃の禁止)、不必要な苦痛の禁止、そして『法律に具体的に明示されなくても、国家は公共の良心の要求により民間人保護などの既存の人道的慣習に拘束される』というマルテンス条項などに反する違法」だとする結論を引き出した。今年はこれをもう少し精緻化し、1945年以降の国際人道法の発展などを考察し、「現在時点での原爆使用はさらに大きな犯罪」だという点を明確にする計画だ。
 「2026年にニューヨーク民衆法廷で有罪判決を受けてからなんらかのきっかけが来れば、米国を相手に民事訴訟を提起する計画です。しかし、国際法律家たちはその訴訟には約30年は要すると言います。長い闘いになると思います」(オ・ヘランさん)
 「民衆法廷を通じて米国の謝罪を勝ち取り、核使用の違法性に対する国際的認識が高まり、最終的には北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権も核使用をあきらめると宣言する日が来ることを望みます」(イ・ギヨルさん)
 道のりは遠いが、その道の走り遂げるという二人の意志は決して弱くなかった。

文・写真:キム・ボグン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-06-03 19:16
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韓国、原発4基追加建設案…無炭素70%に拡大

2024年06月01日 | 
「韓国経済新聞/中央日報日本語版」 2024.06.01 10:35
■韓国、原発4基追加建設案…無炭素70%に拡大
 韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が文在寅(ムン・ジェイン)前政権の「脱原発」政策を破棄する方向に進む中、原発4基を新たに建設する青写真が出てきた。また新再生可能エネルギー(新エネルギー+再生可能エネルギー)も拡大するという。
 電力需給基本計画総括委員会は31日、第11次電力需給基本計画(以下、電基本)草案を発表した。電基本は電気事業法に基づき安定した中長期電力需給のために政府が2年ごとに樹立する行政計画。この日、大学教授など専門家で構成された諮問機構が草案を出し、今後、産業通商資源部が関係部処協議で修正案を用意する予定だ。その後、公聴会などを経て最終案を確定する。
 今回の電基本草案には2038年までに原発4基を建設する案が盛り込まれた。大型原発3基、小型モジュール原発(SMR)1基だ。2015年の第7次電基本に原発2基(新ハンウル3・4号機)建設計画が反映されて以来9年ぶりに新規原発建設の可能性が高まった。SMRは原発より安全性などが高いため次世代原発と評価される。SMR導入計画が電基本に含まれたのは今回が初めて。
 原発の新規建設案が出たのは、急増する電力需要に現在の発電設備では対応できないという判断のためだ。電基本では2038年の最大電力需要が129.3GWと、昨年の最大値98.3GWより30%以上増えると見込んでいる。竜仁(ヨンイン)半導体国家産業団地が建設され、人工知能(AI)拡散でデータセンター数が増えるという予想に基づいた判断だ。
 複数の発電源のうち原発を選択したのは、世界的な炭素削減の流れの中、環境にやさしく値段が安いうえ電力供給が安定的だからだ。委員会は太陽光・風力など新再生可能エネルギーも2038年までに115.5GWに拡大する計画だ。第10次電基本最終案の99.8GWより拡大した。2030年基準で太陽光は44.8GWから53.8GWに、風力は16.4GWから18.3GWに増える。
 これを受け、昨年40%に達しなかった無炭素エネルギー比率は2030年に52.9%、2038年には70.2%に高まる見通しだ。ソウル大エネルギーシステム工学部のホ・ウンニョン教授は「特定エネルギー源を無理に排除するのではなく、原発と新再生可能エネルギーを共に増やすというのは、経済主体の予測可能性を害しないという点で望ましい」と述べた。


「聯合ニュース」 2024.05.31 11:00
■2038年までに新原発3基稼動 35年からSMR本格運用=韓国計画
【ソウル聯合ニュース】韓国政府は31日、2024~38年の電力需給の見通しと発電源拡充計画などを盛り込んだ「第11次電力需給基本計画」の実務案を発表した。同計画によると、政府は新設する原発3基を2038年までに稼動させ、35年からは次世代型原発「小型モジュール炉(SMR)」の本格的な運用を始める。電力需給基本計画に原発の新設計画が盛り込まれたのは、新ハヌル原発3、4号機の建設が盛り込まれた2015年以来。

【写真】南東部の慶尚北道蔚珍郡にある新ハヌル原発3、4号機の建設予定地(韓国水力原子力提供)=(聯合ニュース)

 現在、韓国では26基の原発が稼働中で、第10次計画までに含まれた4基の新設が完了すれば2038年には計30基になる。
 すでに確定している30基のほか、政府は38年までに追加で必要な10.6ギガワット(GW)のうち4.4GWを原発3基を新設することで賄う方針だ。
 大型原発の場合、用地確保から完工までに約13年11カ月かかるとみられ、すぐに取り掛かっても稼働は37年以降になる。
 今回の電力需給基本計画には初めてSMRが主要発電設備として反映された。政府は35~36年に必要な2.2GWの3分の1程度の0.7GWをSMRで賄う計画だ。
 米国やロシアなど原発設計技術を保有した国はSMRモデルを持っているか開発を進めており、韓国もSMRの研究開発を加速させている。
 電力需給基本計画は環境への影響評価や公聴会、国会常任委員会への報告などを経て、今年に最終的に決定する。
 ただ、大型原発とSMRの稼働までは課題が山積する。新規原発の建設は用地を選定する際の住民の反発から放射性廃棄物の処理まで社会的な合意が必要となる。国会への報告で「脱原発」を支持する野党の反対も政府が乗り越えなければならない課題となる。


「韓国経済新聞/中央日報日本語版」 2024.05.25 12:44
■韓国原発、欧州橋頭堡を確保しろ…30兆ウォンのチェコ原発受注戦に総力

【写真】斗山グループは13日(現地時間)、チェコ・プラハのジョフィン宮殿で「斗山パートナーシップデー」を開催し、チェコ原発を受注した場合の現地企業との協力を強調した。特に原発の核心部品タービンはチェコの国民企業、斗山シュコダパワーで生産する計画だ。 [写真 斗山エナビリティ]

 3月、韓国とチェコ原発建設事業をめぐり競合するフランスのマクロン大統領が突然チェコを訪問した。事業者選定を控えて大統領が自らセールスに入ったのだ。これが伝えられると、韓国水力原子力(韓水原)を筆頭とする韓国の原発輸出チーム「チームコリア」も慌ただしくなった。チームコリアの一員、斗山(ドゥサン)グループの朴廷原(パク・ジョンウォン)会長も動き出した。朴会長はチェコに向けて出国し、13日(現地時間)、プラハのジョフィン宮殿で「斗山パートナーシップデー」を進行した。
 チェコ政府の関係者と現地企業およそ100社が参加した席で、朴会長は韓国が受注すれば原発の核心部品タービンを155年の伝統を誇るチェコの国民企業、斗山シュコダパワーで生産すると約束した。同社のタービン関連の現地協力会社は約30社にのぼる。原発建設を韓国に任せれば開発の利益がチェコの企業・国民に生じるという点を強調したのだ。
 27日には別のチームコリアの一員、大宇建設のペク・ジョンワン社長がチェコを訪問し、受注営業戦のバトンを受け継ぐ。ペク社長は現地で「韓国・チェコ原発建設フォーラム」を主管し、現地建設会社などを相手に韓国原発の安全・優秀性を伝える予定だ。ペク社長も現地で建設機資材を調達するなどチェコ企業との協力を約束する計画だ。
 チェコの「ドコバニ原発建設工事」優先交渉対象者選定が約1カ月後に迫り、民間企業を中心に受注総力戦が行われている。2009年のアラブ首長国連邦(UAE)バラカ原発輸出以来15年ぶりとなる韓国型原発の輸出挑戦だ。この事業はチェコのドコバニ・テムルリン地域に原発計4基を新しく建設するもので、国内原発業界が推定する事業費は30兆ウォン(約3兆4400億円)だ。後続事業などを考慮すると、実際の事業規模はこれよりはるかに大きいと業界は見込んでいる。
 技術力と経済性の面では韓国が上回るという評価だ。現地メディアは特に価格面で韓国がフランスを圧倒すると伝えた。しかしフランスは安保同盟や金融支援などで韓国より有利だ。チームコリアが終盤まで総力戦をするのもそのためだ。
 チョン・ドンウク中央大エネルギーシステム工学部教授は「原発の安全性は似た水準であり、受注の可能性は半々」とし「チェコ原発の受注に成功すれば韓国型原発の欧州進出の橋頭堡になるだろう」と述べた。原発業界のある関係者は「原発の輸出は事実上、国家と国家の契約であるため、国家的レベルで接近してこそ受注の可能性を高めることができる」と強調した。

◆韓国原発、価格・納期で競争力…「大統領の外交支援が必要」
 チェコは当初、首都プラハ南部ドコバニに1200MW(メガワット)以下の原発1基を追加で建設することにし、韓水原、フランス電力(EDF)、米ウェスチングハウスから入札を受けた。しかし経済性を考慮すると1基より4基が有利だと判断し、チェコは昨年2月、ドコバニ2基、テムリン2基の計4基の原発を追加で建設することに計画を修正した後、今年4月に再度入札を受けた。
 この過程でウェスチングハウスが法的拘束力のある入札書を提示できず排除され、チェコ原発の受注戦は韓水原とフランス電力の対決に圧縮された。4月末に修正入札をした韓水原は韓国型原子炉「APR1400」を基盤にチェコ側の要求で容量を低めた「APR1000」の供給を提案した。APR1000は昨年3月、欧州事業者協会から「設計認証(EUR Certificate)」を取得し、原発設計の安全性と経済性に対する客観的な立証を受けた。
 
◆「事業費、韓国30兆ウォン、フランス70兆ウォン」
 7月ごろの事業者選定を控え、現地では韓国が原発受注で有利という評価が出ている。何よりも価格競争でフランスを大きく上回るからだ。チェコメディア「経済ジャーナル(Ekonomicky Denik)」は16日(現地時間)、情報筋を引用し「韓水原がダンピングに近い価格で拒否できない提案をした」とし、韓国が受注する可能性が高いという見方を示した。国内原発業界では総事業費として30兆ウォン台を提示したが、フランスは70兆ウォン台を提示したという話も出ている。
 実際、韓国型原発の「価格性能比」は世界最高水準だ。世界原子力協会(WNA)によると、2021年基準で韓国型原発の建設単価は1kWあたり3571ドルと、フランス(7931ドル)の半分にもならない。慶煕大のチョン・ボムジン原子力工学科教授は「韓国型原発は原子炉・タービンのような主要機器や部品のサプライチェーンが安定化されていて、建設現場管理能力が非常に優れている」とし「さらに国内外で多数の原発を建設して建設効率性まで高め、単価を低めることができた」と説明した。
 韓国のもう一つの強みはいわゆる「オン・タイム・オン・バジェット(決められた予算で予定通り竣工)」だ。フランスは世界2位の原発稼働国(56基)だが、納期遵守競争力は客観的に韓国が優れている。韓国はアラブ首長国連邦(UAE)バラカ原発を日程に合わせて建設したのに対し、フランスがフィンランドに建設したオルキルオト3号機は予定より14年遅く竣工した。フランス電力が建設中の英国ヒンクリーポイントC原発も竣工時点が当初の2023年から2028年に延びた。安徳根(アン・ドクグン)産業通商資源部長官は最近、記者らに対し「フランスは事業費が増え、工事期間が延びるが、我々はUAEで期間内に終わらせた経験がある」とし、チェコ原発の受注に自信を表した。
 とはいえ油断はできない。フランスは欧州の盟主として欧州原発市場を守るためにチェコ原発の受注に国力をオールインしている。3月には欧州連合(EU)内の原発拡大陣営12カ国と共同声明を出して「近隣原発同盟」を強調したが、チェコもここに参加した。マクロン大統領もチェコを訪問して受注戦を支援した。フランスはチェコから近いうえ陸路で移動でき、政治的な面では韓国より有利という評価だ。特にチェコは数十兆ウォン台の開発事業のためEUから資金を調達しなければならないが、この部分でもフランスが力を発揮することができる。
 こうした地理的・政治的論理は原発受注において少なからず影響を及ぼす。2022年のポーランド1段階原発受注で韓国が米国に劣勢だったのもこうした背景のためだ。ポーランドはロシアがウクライナのザポロジエ原発を攻撃するのを見て、原発パートナーに米国を選択した。経済性の面では韓国が圧倒していたが、韓国は潜在的なロシア攻撃を防げないと判断したのだ。当時、ポーランドのモラウィエツキ首相はX(旧ツイッター)で「ハリス米副大統領、グランホルム米エネルギー長官とも対話した」とし「ポーランドと米国の強力な同盟は我々の計画の成功を保証する」とコメントした。政治的な判断が事業者選定に決定的な影響を及ぼしたのだ。
 このように原発の輸出は技術や経済性よりも両国政府間の取引という例が多いため、国内の民間企業も緊張している。斗山エネビリティのイ・スンジェ常務は「13日、チェコ現地で33のメディアと懇談会を開いたが、韓国が有利と見るメディアが少なくなかった」とし「しかし結果は予測しがたく、最後まで受注に総力を尽くす」と述べた。政府としてもチェコ原発の受注は国内原発生態系の復元のために重要だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は2030年までに原発10基を輸出する計画だが、チェコ原発が今後の状況の分岐点となる見通しだ。
 このため昨年9月に韓悳洙(ハン・ドクス)首相が、先月には安徳根長官がチェコを訪問した。UAEバラカ原発の受注も最後まで国家レベルで総力を尽くした影響が大きかった。2009年12月、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は原発輸出をめぐる談判のためUAEを訪問した。当時、仏有力日刊紙フィガロは「韓国は韓国電力の建物に戦時状況室(war room)を設置し、李大統領が自ら受注戦を指揮した」と報道した。チョン・ボムジン教授は「チェコ原発の受注に関連し、韓水原や民間企業、産業部ができることはすべてしたと考える」とし「韓国が勝負どころで勝機をつかめるよう大統領の外交的支援が必要な時」と話した。
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「中国はなぜ海に浮かぶ原発を作ろうとするのか」

2024年05月04日 | 
「The Hankyoreh」 2024-05-04 09:30
■中国はなぜ海に浮かぶ原発を作ろうとするのか
 米国のインド太平洋軍司令官「軍事的統制を強化する意図」 
 海洋汚染などの環境的な問題点も指摘

【写真】「海上原子力発電所」アカデミック・ロモノソフがロシアのサンクトペテルブルク港の造船所から出港している/AP・聯合ニュース

 中国が南シナ海の紛争地域の海に浮かべる海上原子力発電所の建設を推進し、物議を醸している。米軍当局者は、中国が実際に海上原発を作るには数年以上かかる見通しだとしながらも、実際に完成した場合、環境汚染と軍事安全保障の二つの側面で危険要因になるものだとして懸念を示した。 中国は南シナ海海域の軍事施設に電力を供給するために、海上に浮かべて発電する原子炉を2010年から研究・開発している。ワシントン・ポストが2日(現地時間)、米軍当局者の話を引用して報じた。退任を控えている米軍のジョン・アキリーノ・インド太平洋司令官はワシントン・ポストに「中国の海上原発の構想は、地域のすべての国にとって潜在的な影響を及ぼす」とし、「中国メディアは、中国政府がこれらの海上原発を利用し、南シナ海に対する軍事的統制を強化する意図だとはっきりと報じている」と述べた。このような懸念は米国務省でも共有されている。匿名の国務省当局者は「中国の海上原発の設置が近づくほど、彼らはより早くそれを米国の安全保障の利益のみならず地域の安定を害することに使うだろう」と述べた。
 このような状況は、中国が台湾、日本、フィリピン近海を含む南シナ海でますます軍事力を誇示し、軍事的な緊張が高まるなかで起きている。最近、フィリピンの西側の海では、中国の海岸警備隊が、セカンド・トーマス礁付近のフィリピン軍派遣隊への補給を始めたフィリピンの艦艇を阻止するなど、直接の衝突を辞さずにいる。
 中国も海上原発の軍事的な意味を隠さずにいる。中国の官営メディア「環球時報」は2016年、「政府が南シナ海に原子炉20基を設置し、商業的開発や石油探査、海水淡水化などを支援する計画」だと報じつつ、軍事利用の可能性に期待感を示した。環球時報は「海上原発が設置されれば、南シナ海の島と環礁は、本質的に原子力推進航空母艦となる」として、「これらは、遠くから来る米国の空母艦隊よりも軍事的にさらに有利だ」と報じた。
 このような動きは、地政学的な対立要素とみなされるだけでなく、放射能汚染などの環境的側面から懸念する見方も相次いでいる。新米国安全保障センター(CNAS)のトーマス・シュガート研究員は「中国の海上原発の設置は、中国が南シナ海に建設した人工島に対する支配をよりいっそう強化するもの」だと指摘した。
 さらに、海上の原発は、陸上の原発に比べ多種多様な事故の危険が高く、環境的にも強い台風や津波のような自然災害に脆弱であり、海中から敵対勢力がひそかに攻撃してきた場合、防ぐことが難しいという点などが問題として提起されている。陸上の原発の原子炉は、通常は150センチメートルを超える厚さの鉄筋コンクリートの構造物で保護されているが、海上の原子炉にこのような重い保護構造物を設置するのは難しいという短所もある。「憂慮する科学者同盟」(UCS)のエドウィン・ライマン氏は「海上原子炉は、陸上に作る原子炉のように頑丈で強固にすることはできない」として、「事故が起きた場合、海洋汚染がすぐに広範囲に広がることが避けられない」と述べた。
 一方、一部の専門家らは過度な懸念だと述べた。戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング氏は「10年間いやというほど聞いたが、今もなお原子炉は造られていない」として、「海上に原発を作るという構想は、太陽光発電や風力発電、ディーゼル発電より現実性に劣る」と述べた。ポーリング氏は「中国が行うことには、実際以上に私たちの警戒心を呼び起こすものが多い」と付け加えた。
 現時点で海上原発を運用する国はロシアだけだ。ロシアは2019年12月、アカデミック・ロモノソフという名称の海上原発を稼動させた。無動力のバージ船に複層構造の発電所を設置した構造で、加圧水型の軽水炉2基と蒸気タービン2機が組み込まれているという。
パク・ピョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/asiapacific/1139223.html韓国語原文入力:2024-05-03 23:46
訳M.S


 米国のインド太平洋軍司令官「軍事的統制を強化する意図」 
 海洋汚染などの環境的な問題点も指摘

【写真】「海上原子力発電所」アカデミック・ロモノソフがロシアのサンクトペテルブルク港の造船所から出港している/AP・聯合ニュース

 中国が南シナ海の紛争地域の海に浮かべる海上原子力発電所の建設を推進し、物議を醸している。米軍当局者は、中国が実際に海上原発を作るには数年以上かかる見通しだとしながらも、実際に完成した場合、環境汚染と軍事安全保障の二つの側面で危険要因になるものだとして懸念を示した。
 中国は南シナ海海域の軍事施設に電力を供給するために、海上に浮かべて発電する原子炉を2010年から研究・開発している。ワシントン・ポストが2日(現地時間)、米軍当局者の話を引用して報じた。退任を控えている米軍のジョン・アキリーノ・インド太平洋司令官はワシントン・ポストに「中国の海上原発の構想は、地域のすべての国にとって潜在的な影響を及ぼす」とし、「中国メディアは、中国政府がこれらの海上原発を利用し、南シナ海に対する軍事的統制を強化する意図だとはっきりと報じている」と述べた。このような懸念は米国務省でも共有されている。匿名の国務省当局者は「中国の海上原発の設置が近づくほど、彼らはより早くそれを米国の安全保障の利益のみならず地域の安定を害することに使うだろう」と述べた。
 このような状況は、中国が台湾、日本、フィリピン近海を含む南シナ海でますます軍事力を誇示し、軍事的な緊張が高まるなかで起きている。最近、フィリピンの西側の海では、中国の海岸警備隊が、セカンド・トーマス礁付近のフィリピン軍派遣隊への補給を始めたフィリピンの艦艇を阻止するなど、直接の衝突を辞さずにいる。
 中国も海上原発の軍事的な意味を隠さずにいる。中国の官営メディア「環球時報」は2016年、「政府が南シナ海に原子炉20基を設置し、商業的開発や石油探査、海水淡水化などを支援する計画」だと報じつつ、軍事利用の可能性に期待感を示した。環球時報は「海上原発が設置されれば、南シナ海の島と環礁は、本質的に原子力推進航空母艦となる」として、「これらは、遠くから来る米国の空母艦隊よりも軍事的にさらに有利だ」と報じた。
 このような動きは、地政学的な対立要素とみなされるだけでなく、放射能汚染などの環境的側面から懸念する見方も相次いでいる。新米国安全保障センター(CNAS)のトーマス・シュガート研究員は「中国の海上原発の設置は、中国が南シナ海に建設した人工島に対する支配をよりいっそう強化するもの」だと指摘した。
 さらに、海上の原発は、陸上の原発に比べ多種多様な事故の危険が高く、環境的にも強い台風や津波のような自然災害に脆弱であり、海中から敵対勢力がひそかに攻撃してきた場合、防ぐことが難しいという点などが問題として提起されている。陸上の原発の原子炉は、通常は150センチメートルを超える厚さの鉄筋コンクリートの構造物で保護されているが、海上の原子炉にこのような重い保護構造物を設置するのは難しいという短所もある。「憂慮する科学者同盟」(UCS)のエドウィン・ライマン氏は「海上原子炉は、陸上に作る原子炉のように頑丈で強固にすることはできない」として、「事故が起きた場合、海洋汚染がすぐに広範囲に広がることが避けられない」と述べた。
 一方、一部の専門家らは過度な懸念だと述べた。戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング氏は「10年間いやというほど聞いたが、今もなお原子炉は造られていない」として、「海上に原発を作るという構想は、太陽光発電や風力発電、ディーゼル発電より現実性に劣る」と述べた。ポーリング氏は「中国が行うことには、実際以上に私たちの警戒心を呼び起こすものが多い」と付け加えた。
 現時点で海上原発を運用する国はロシアだけだ。ロシアは2019年12月、アカデミック・ロモノソフという名称の海上原発を稼動させた。無動力のバージ船に複層構造の発電所を設置した構造で、加圧水型の軽水炉2基と蒸気タービン2機が組み込まれているという。

パク・ピョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-05-03 23:46
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